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中国の通信機メーカー、華為への打撃が強まる

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ここ1週間で華為科技(ファーウェイ)を巡るニュースが、様子見から華為の圧倒的な不利に変わってきた。最終的な決め手は、Armによる華為へのライセンス供与停止の決定だ。華為の半導体設計子会社HiSiliconがArmのCPUコアを使えなくなるため、モデムチップやアプリケーションプロセッサ、Bluetooth、Wi-Fiなども設計できなくなる。

今や世界のスマートフォンやコンピュータなどの電子機器製品は、グローバルな共同設計から部品調達に至るまで、世界中の企業と取引するようになっている。世界と手をつなぎ最高の製品を作ろうとしてきた。こういったグローバルな取引が一部のリーダーによって大きく崩れようとしている。中国の通信機器メーカー、華為は無線基地局に使う通信機器やスマホで世界市場に進出してきた。そのカギを握るのは半導体チップだ。IntelやQualcommなどの半導体チップを使って、通信機器を設計製造してきた。

IntelのCPUプロセッサはコア基地局のサーバやデータセンターなどに使われてきた。Qualcommのモデムチップも最初は使っていたが、スマホ市場向けには、HiSiliconが開発するアプリケーションプロセッサに切り替えていた。これが難しくなりそうだ。HiSiliconのモデムやアプリケーションプロセッサチップKirinシリーズにはArmのコアを使ってきたからだ。米国商務省は、米国製の部品やソフトウエアが製品価格の25%を超すと、それらを輸出禁止にする、としている。米国製品が25%以上を占めると華為へ輸出できなくなる。

ArmのCPUコアは基本的に英国のケンブリッジで設計されてきたが、米国のカリフォルニア州サンノゼとテキサス州オースチンにも開発拠点があり、もはやCPUコアの設計産物はケンブリッジだけで開発しているとは言えなくなってきた。しかも、Armは数年前、物理IP設計メーカーだった米国のArtisanを買収し、スタンダードセルやメモリコンパイラを手に入れた。これらのIPは米国由来の製品であるから、華為へは提供できなくなる。

IntelやQualcomm、Broadcomはすでに華為への輸出を停止しているが、米商務省の基準に触れないようなTSMCや日本のパナソニックの部品、東芝、ソニー、韓国SK Hynixなどの電子部品や半導体チップは停止しないようだ(5月24日の日本経済新聞)。ただし、パナソニックは、該当する製品の取引を停止すると23日の日経が報じた。製品の詳細は明らかではないものの、「米国産の部品や技術などを使う製品が一部あった」と日経が報じていることから、通信モジュールなどに米国製の半導体を使っているために、通信モジュールの出荷を停止したのではないだろうか。

今回の一連の取引停止措置では、米国の大企業はまだしも、ベンチャー企業にとっては打撃が大きい。例えば、iPhone Xに使われた顔認証システムが華為のスマホにも導入される予定だったが、顔認証に使う面発光レーザーのメーカー、米Lumentum社は華為への輸出を禁止されたことで、2019年第2四半期の売り上げ見通しを12%下方修正した、と22日の日経が報じた。面発光レーザーから発射される数十本の赤外線レーザービームが人間の顔の3次元形状(顔の奥行きも含めた形)を描くために使われており、スマホの顔認証システムには欠かせない部品だ。

半導体チップではなく、華為とまともに競合するスマホビジネスでは、日本の通信オペレータは華為製のスマホの発売を立て続けに延期した。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が華為の最新機種「P30」の発売延期や予約停止を発表した。格安スマホ大手「UQモバイル」を展開するKDDI系のUQコミュニケーションズも発売の延期を公表した。日本の通信オペレータが華為の新製品スマホの発売を延期したのは、グーグルが華為へアンドロイドOSの供給を制限する可能性があると示唆したからだ。日本のオペレータは様子を見るため延期した。

21日の日経は、華為はアンドロイドに代わるOSを自社開発していると伝えている。元々アンドロイドはLinux OSをカーネルに持ち、周辺に演算や通信機能などを取り付けたソフトウエアであり、OSとミドルウエアを搭載したものであるから、自社開発が困難な訳ではない。

(2019/05/27)

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