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データセンター市場でのバトルが始まった

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先週、AppleとQualcommが特許論争で和解したというニュースは、Intelのスマートフォン向けの5Gモデム撤退に及び、さらにスマホ市場からデータセンター市場への大きな動きへと発展している。加えて、これまで静かだったトヨタ自動車が電動化に力を入れ始めた。

4月16日、中国の華為科技(ファーウェイ)がAppleに5Gモデムを外販しても良いと発言したのとほぼ同時に、AppleとQualcommの和解が発表された。4月17日と18日の日本経済新聞が中国と米国の記事を報じた。AppleがQualcommの5Gモデムを採用することが確実になった訳だが、それとほぼ同時にIntelはスマホ用の5G モデムの開発から撤退することを発表した。元々Intelは4G(LTE)の基地局向けモデムを扱っていたため、Appleはスマホ向けに5Gモデム開発を依頼していた。しかし、スマホ向けに開発することにIntelはあまり乗り気ではなかった。

Intelは、ここ1〜2年ずっとデータカンパニーになると宣言しており、今回の撤退もスマホ市場に行くのではなく、データセンターにもっと集中することを改めて宣言したと言える。Intelはデータセンター向けのXeonというハイエンドCPUだけでなく、専用のハードウエア回路を作りたい顧客向けにはFPGAで提供し、さらにAI専用のチップも提供できるように万全の構えでいる。プロセッサとメモリ(DRAM)とのやり取りだけではなく、同社がパーシステントメモリ(IBMはストレージクラスメモリと呼ぶ)と呼ぶ3D-Xpointメモリを、DRAMとSSDとの間に位置づけしており、ストレージまでのメモリ階層構成をしっかり確保している。

このデータセンター市場にQualcommも参入すると発表した。ただし、データセンターでも推論用のAIチップの開発が盛んになってきており、Qualcommが参入するのも推論チップだ。AI推論チップは、基本的にニューラルネットワークのモデルを計算するのに都合よくできており、MAC(積和演算)とメモリをセットにしたアーキテクチャを取る。ArmやIntelのCPUとは全く異なるアーキテクチャだ。QualcommのモデムやアプリケーションプロセッサなどのチップはArmアーキテクチャでできており、今後Qualcommがデータセンター向けにArmアーキテクチャを使うのかどうか、興味深い。

データセンター向けのプロセッサあるいはSoCをArmアーキテクチャで構成するという試みはこれまでもある。富士通のスーパーコンピュータ「京」の次世代機は、ArmのCPUマルチコアを集積したSoCをプロセッサにする。22日の日経によれば、合計15万個以上のCPUコアがスパコンに搭載される計画だとしている。AIアーキテクチャ対応に関してはこの記事は触れていないが、東京工業大学の松岡聡教授が開発を指揮しているスパコン「TSUBAME」には、AI専用のチップもスパコンに搭載されている。

17日の日経には、トヨタが中国の上海国際自動車ショーで、SUVのEV(電動)化を発表したと伝えている。トヨタは、ハイブリッド車などを含め、全方位でEV化を進めると述べ、マイクロバス「コースター」の燃料電池車の中国への導入も検討しているという。

トヨタは、ソフトバンクグループ、デンソーと一緒に、ウーバーに追加出資することを検討していると19日の日経が報じた。ウーバーの自動運転開発部門の分社化を視野に、同部門に10億ドルを出資する見通しだという。

EVに関しては、三井物産がEVバス向けにバッテリを貸し出すビジネスを始めた、と17日の日経が伝えた。EVでのバッテリ使用では充放電が厳しいため、消耗が激しい。そこでEVで劣化したバッテリを太陽光の蓄電池として再利用するビジネスも始めた。太陽電池の蓄電用とならまだ十分に使えるとしている。すでに米国のEVバスメーカーのProterra社と提携、同社製バスに載せる電池を定額料金でバス運行会社に貸し出すサービスを始めた。ただし、走行距離や時間が一定量を上回ると追加料金を徴収する。

自動運転に向けて、Lidarや超音波センサ、レーダーなどのセンサからの信号を妨害するような攻撃に対しても防御すべき、という懸念も出始めた。22日の日刊工業新聞は、妨害超音波や電波、光などがセンサからの信号で妨害されると正しい位置や距離を測れなくなることを記事に掲載した。こういったセキュリティに対する警告の段階だが、今後の検討課題であると報じている。

(2019/04/22)

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