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5Gの周波数割り当てに通信4社が認可された

国内で5G(第5世代の携帯通信規格)の電波割り当てが決まった。日本での5G通信は、3.7GHz帯と4.5GHz帯、そして準ミリ波の28GHzが使用周波数帯だが、NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てられた。基地局の設置など5Gへの投資額は2024年度までに1兆6000億円、4Gからの転用投資も含めると3兆円になる、と11日の日本経済新聞は報じている。

図1 総務省が通信業者に割り当てた周波数帯 出典:総務省

図1 総務省が通信業者に割り当てた周波数帯 出典:総務省

各社それぞれの割り当ては、図1に示すようになった。これは、各社の投資計画、基地局の予定開設数、5G基盤展開率、MVNOに対する接続計画など8項目の充実度合いから割り当てを決めている。3.7GHz帯では、KDDIグループが2バンド、その他が1バンドずつ割り当てられ、4.5GHz帯はNTTドコモのみ、となった。28GHz帯は申請4社が1バンドずつ割り当てられた。この中の、基板展開率とは、全国を10km四方の4500区画に分けてその50%以上に5年以内に基地局を置くこととした時の、そのカバー率を表す。ドコモは97%、KDDIは93.2%、ソフトバンクは64%、楽天モバイルは56.1%をカバーする計画だ。

5G通信の最大の特長は3つある。一つはダウンリンク20Gbps、アップリンク10Gbpsとデータレートが高速であること、二つ目は応答のレイテンシが1ms以内、つまりリアルタイム応答が可能なこと、そして3つ目は携帯電話だけではなくあらゆる機器をつなげられること、つまりIoTも主役になること、である。

ただ、これまでの世界の5G実験を見ている限り、20Gbpsや10Gbpsに達した例はなく、現実に60GHzのようなミリ波を使う実験以外では、このデータレートは得られていない。このため5Gの定義はあいまいで、10Gbpsと1ms以下というスペックは今のところ目標値と言ってよさそうだ。先行する韓国のKTの提供する5G通信では、4Gの方がむしろ速いといった声もあり、10Gbpsには到底届いていない。米国のVerizonにしても5Gのデータレートは公開していない。周波数帯がサブ6GHz程度では10Gbpsの実現は原理的に難しい。できるだけ10Gbpsに近づける努力を行い、進化させていくことになる。5G通信技術は、2020年から始まり2020年代に渡って実現していく技術であり、目標のデータレートに達するのは2025年以降になろう。

だから、韓国と米国、さらには中国が先行し、日本が遅れている、という見方があるが、実質的には何の意味もない。5Gはこれから進化していく技術であり、日本はむしろガラパゴスにならないように、勝手に先行せず、欧州3GPPの標準規格委員会と歩調をそろえて進んでいくことが望ましい。NTTドコモは、ガラパゴスにならないように慎重な姿勢を示している。

今回の電波割り当てによって、東京オリンピック/パラリンピックに合わせて2020年春に5Gサービスが始まるとしているが、このイベントには5G基地局とWi-Fiをセットにして、スタジアムの観衆が、一斉に画像をネットに上げても基地局が大丈夫なように対応していくことになる。

5Gで大きく変わるのは、おそらく通信業者の役割だろう。これまでAppleやGoogle、Facebook、Amazonなどが、通信業者によって設置されたセルラーネットワークを利用してインターネットサービスを享受してきただけに、通信業者は、自分たちは土管屋ではない、という意識が強い。少なくとも5Gではインターネットサービスも含めたビジネスを進めていくだろう。NTTドコモやKDDIはさまざまな業者とコラボレーションをしており、インターネットサービスを見つけようとしている。

(2019/04/15)
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