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5G時代の応用が続出したMWC、半導体開発の指針に

先週の2月25日から4日間、スペインのバルセロナでMobile World Congress(MWC)が開催されたせいか、先週は5G(第5世代の通信)関係のニュースが続出した。有機ELを使った折りたためるスマートフォンだけがニュースではなさそうだ。1G(アナログ方式)から4G(高速デジタル方式)までの携帯電話のテクノロジーや応用とは違い、5Gゆえの応用が出てきたことが報じられた。

5Gは、ダウンリンク20Gbps、アップリンク10Gbpsという超高速のデータレートだけがセールスポイントではない。1ms以下というレイテンシ(遅れ)や、携帯電話以外のモノとも多数接続されることも5Gの特長だ。また自動運転や工場内応用などへの無線通信の広がりも5Gならでは、の応用でもある。

ドイツの通信オペレータであるDeutsche TelekomはLED照明の大手Osramと協業して、工場内で、原材料を運ぶAGV(Automatically Guided Vehicle:自動運搬車)が互いに通信しながら効率よく動きまわると共に、工場内の状況を把握するというサービスを展開する、と2月27日の日本経済新聞などが報じた。この応用は5Gのレイテンシの短さ、すなわちリアルタイム性が確保できていることから成り立つわけで、Deutsche Telekomは、工場内に限らず、都市やスタジアム、コンサート、大学、行政機関など人が集まる場所で威力を発揮すると見ている。同社とOsramはまず、LTEではじめ、次に5Gへスムーズに移行する計画である。

Deutsche Telekomは、国内企業同士だけではなく、米国のMobiledgeXおよびNiantecともパートナーシップを結び、次世代のゲームを開発する。コードネーム「Neon」と呼ぶこのプロジェクトは数名のプレイヤー同士で楽しむゲームで、AR(拡張現実)をフル活用する。MobiledgeXが必要なプログラミングインターフェースを作り、「Pokemon GO」の開発者Niantecがアプリケーションを開発する。

また、韓国のKT (Korea Telecom) は、造船大手の現代重工業と組み、船の修繕を現場の作業者と遠隔地にいる熟練者がARを使って、どの部品をどのように作業すべきか、現場の作業者に指示するというデモを示した。

韓国は5Gで米国、中国、日本と共に5G先進国の一つだが、2019年3月末にはスマートフォン向けに5Gのサービスを開始する、と28日の日経が報じた。KTとSK Telecom、LG Uplusの韓国の通信大手3社は、スマホを提供するSamsungと5Gサービスを始める最終調整に入ったという。韓流のコンテンツをホログラム映像で流すとか、VRを使ったコンテンツも用意するという。

Appleは自社のイベントApple開発者会議以外のイベントには、MWCを含め出展したことがこれまでに一度もなかった。今回も同様だが、スマホやタブレットのApple対抗馬として、GoogleとQualcommがAndroid、モデムチップでそれぞれ共闘してきたが、5GでもAppleと対峙するという記事を28日の日経が掲載した。

Appleはアプリケーションプロセッサの自社開発をはじめ、グラフィックスプロセッサIP、パワーマネジメントも自社開発し始めており、半導体の自社開発を推進している。モデムチップをこれまでQualcomm製品を使っていたが2018年からIntel製のモデムチップに代えている。ただし、5GはOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiple Access) やNTTの提案するNOMA(Non-orthogonal multiple access)など、周波数の利用効率を上げる方法が使われる。Appleは今Intelからモデムチップの購入を止めるとしても、その開発に3~4年かかるため、当面はIntelと組まざるを得ない。ただし、利用効率の高い通信モデムは、2030年ごろまで進化すると見られている5G通信技術を見据えると、Appleがモデムチップも自社開発する夢を捨てていないはずだ。

またMWCでの応用から、5G応用向けに必要な半導体チップの見通しが出てきた。通信用RFやモデム(ベースバンド)、フィルタなどの通信用チップは全ての応用に使われると共に、当面は1ms以下のレイテンシを利用する応用が多いため、工場内のAGV用にはセンサやマイコン、さらにパワーマネジメント、バッテリマネジメントなどのパワー半導体が求められる。さらにARやVRではグラフィックスチップ、データ解析用のAIチップ、ディスプレイドライバなども必要。そしてどのような応用にも必要なパワーマネージメントチップは応用ごとに使われるため、これもカスタマイズが必要な少量多品種の典型的なチップとなる。

(2019/03/04)
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