中国経済不調が日本、アジア各地での業績に反映される
中国経済の不調は、消費者向け商品が低迷、その商品向けに製造する産業機械の先行きも怪しい。先週から今日までに報告された日本経済新聞と日刊工業新聞から、上記のような事実が浮かび上がってくる。日本からの輸出だけではない。アジアから中国への輸出も激減している。
元々、米中貿易摩擦で言われていたことは、華為(ファーウェイ)やZTEなどの通信機器の米国への輸出を禁止しても、その機器に搭載されたIntelやQualcomm、Xilinxなどの半導体チップの対中輸出ができなくなるため、米国半導体も痛手を受ける、ということだ。多国籍企業が世界経済に浸透している今、アメリカが孤立主義を主張しても、経済は相互依存のため、低迷するのである。同様に中国に輸出している日本やアジアの企業の業績も痛手を受けている。
もっとも、米中摩擦が本格化する前の2018年はじめから中国経済は変調している、という見方もある。最近になり、中国経済の変調がはっきりしてきた。2月25日の日刊工業新聞がレポートしたように、2018年後半から新車の販売台数やスマートフォンの出荷台数、パソコンの出荷台数などの消費を示す商品の減速がはっきりしている。中国全体の2018年の新車販売は前年比2.8%減の2800万台と28年ぶりの前年割れだとしている。IDCによると、世界のスマホ市場が2018年に前年比4.1%減だったのに対して、中国国内のスマホ市場は同11.1%減とその落ち込みは大きかった(参考資料1)。中国の華為やOppo、Vivo、小米などのスマホメーカーは中国市場で伸ばせなかったために、外国への輸出によって業績を伸ばしている。
中国の消費者向け商品が低迷しているため、中国向けの部品を供給している企業の業績も落ちたり、下方修正したりしている。25日の日刊工業は、パナソニックのプラグインハイブリッド車向けの車載電池が低迷し、シャープの液晶パネルやセンサも低迷し下方修正したという。財務省の1月における貿易統計(速報値)では、中国向けの輸出額は2カ月連続の減少となる前年同期比17.4%減となった。特に電子機器が38.9%減、変動帯製造装置が同24.8%減と大きく落とした。
消費者向けの商品だけではない。工作機械業界でも、中国での受注が半減していると22日の日刊工業は報じている。日立製作所も建設機械と自動車部門(オートモーティブシステム)が落ち込んでおり、三菱電機もFA関連の産業機器の需要が減少しているという。
中国向け輸出の低迷は日本だけではない。アジア各地の中国向け輸出が減少している。21日の日経によると、台湾では輸出の4割を占める中国向けが1月に前年同月比で7.5%減と3カ月連続マイナスだという。韓国の中国向け輸出は18年11月から19年1月まで3カ月連続で減少し、1月は19%減と大きかった。シンガポールでも1月の対中輸出は25%も落ち込んだとしている。タイでも同様で同7.3%減と2カ月連続でマイナスになったという。
台湾では、1月の米国向け輸出が同21.1%と大幅に伸び、Pegatronなどの台湾企業が中国での生産から台湾での生産に切り替えたことが奏功した。台湾はかなりしたたかで、主要19社の1月の売上額は同1.3%増で、鴻海精密は3.3%増収、Compalは17.2%増で、iPhoneの販売不振を華為などの中国スマホメーカー向けなどで潤った。前述したように、中国の華為や小米、Oppoなどは中国向けではなく、インドやアフリカなどの外国向けに伸ばしたからだ。
長期的には中国は成長市場であるとする見方は強く、日産自動車や浜松ホトニクスなどの日系各社は見ている。
参考資料
1. SPIマーケットセミナー「世界半導体市場、2019年を津田編集長と議論しよう」のテキスト (2019/02/13)