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CES 2019で賑わいの中心は5GとAI

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毎年恒例、新年早々の1月7日から4日間、CESが米国のラスベガスで開催され、先週はそのニュースが駆け巡った。IntelやQualcomm、AMD、NvidiaなどのプロセッサメーカーもCESに参加しており、半導体とCESとは深い関係になりつつある。今回は5GとAIが目玉だったようだ。

CESの主催団体であるCTA(Consumer Technology Association)は、CES 2019には、4500社の出展と18万人の参加があり、290万平方フィートという展示スペースを埋めた、と発表した(参考資料1)。イノベ−ションが世界の問題を解決し、世界中の人々の生活を豊かにする、とCTAのCEOであるGary Shapiro氏は述べ、それを成功させるためにテクノロジーを包含する、と上級バイスプレジデントのKaren Chupka氏は語っている。総合化学会社のProcter & Gamble社や、建設・農業機械などのJohn Deere社、軍事・防衛のRaytheon社などがCESに出展したのはまさにその証拠だ、としている。CES 2019では5GからAIまであらゆるテクノロジーが移動手段(自動車や空輸機)の未来を決めると見ている。

5Gのエコシステムには、輸送の基幹システムやVR(仮想現実)、スポーツテクノロジー、デジタルヘルスに至るすべてが一緒にやってくるだろうとして、米国最大手の通信業者であるVerizonのCEO、Hans Vestberg氏は、これまでの無線技術で実現できるもの以上のことを5Gは約束している、と基調講演で述べた。

データこそ世界最大の自然の資源であることをAIが証明するだろう、と基調講演で述べたのは、IBMのCEOであるJinni Rometty氏だ。データがスマートシティからへルスケア、移動技術、ロボットまでの革新を可能にする、という。未来の移動技術ではすでに、Bell Helicopter社の空飛ぶタクシーや、Harley-Davidsonの大型電動バイクなどが示されたという。

11日の日本経済新聞は、CES 2019の主役は5Gだと捉え、Samsungは2019年を5G元年だと宣言したとしている。米国の医療ベンチャーのMedivisがAR(拡張現実)を利用する外科手術を提案している。脳手術では、実際の脳とグラフィックスとを重ね合わせながら行うといったシーンである。5Gではリアルタイム(レイテンシが1ms以下)でAR画像を作図するため、ARやVRをゲーム以外でも応用できるようになる。同様に、遠隔操作ロボットのデモを示したベンチャーも紹介している。これも5Gにより、画像がリアルタイムで送られてくるから可能になるデモである。国内でも建機のコマツがPoC(実証実験)などでデモした事例だが、5G時代になると無人の掘削機でオフィスのある都市圏から工事できるようになる。

従来通りのテレビでは、ソニーやLGの8Kやフレキシブルに折り曲げられる有機ELテレビをデモした、と9日の日経産業新聞が報じた。8Kテレビは85型と98型をソニーが発表したが、欧米を対象として年内に発売するとしている。Samsungは音声認識AIを搭載したテレビを発表している。パナソニックはHarley-Davidsonのバイクに通信機を装着、社内のインパネをLCDモニターで構成した例を展示したという。

GoogleはAIスピーカーに採用している音声認識AI「Google Assistant」をスマートフォンやAIスピーカー以外にも広げるため、開発キット「Google Assistant Connect」を発表した、と10日の日経が報じた。この開発ツールを使えば、家電機器をAIスピーカーと簡単に連動させることができるという。

5G時代に登場する自動運転車を日刊工業新聞は採り上げている(1月11日)。中国のBytonが年末までにレベル3に対応した電気自動車の量産を始めるとし、ドイツのDaimlerは、レベル4の開発に数年間で5億ユーロを投資すると発表したと報じている。米国のGeneral Motorsは19年に自動運転タクシーを実用化する見通しだと伝えている。

チップメーカーの動向について、日経、日刊工とも大きく伝えていないが、Intelが10nmプロセスのCPU「Ice Lake」を19年末までに量産すると9日の日経が伝えた。AMDもTSMCの7nmプロセスを使った、GPU Radeon VIIとCPUの第3世代のRyzenを発表した。ただし、TSMCの7nmとIntelの10nmは、ほぼ同じ寸法とも言われており、10nm以下ではどの寸法を示しているのか、もはや明確ではなくなっている。

また、米中貿易戦争の影響だと思われるが、中国企業の出展が昨年より約2割減少した、と9日の日経が伝えた。CES開催前のイベント「中国の夜」では、当初予定されていたアリババや華為の幹部も、華為にチップを提供しているIntelやQualcommも登壇しなかったという。


参考資料
1. CES 2019 Proves AI and 5G Will Transform the Future (2019/01/11)

(2019/01/15)

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