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WSTSの2019年の見通しから悲観論を展開する新聞報道

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先週、WSTSが2018年と2019年の世界半導体市場見通しについて発表した。それを巡って、2019年の見通しを6月に発表したときは4.4%増としていたが、今回は2.6%増と下方修正したと11月28日に報じ、29日の日本経済新聞は「半導体サイクル、試練、メモリー4%成長、一転マイナス」という悲観的な記事を掲載した。一方、パワー半導体は世界的にようやく立ち上がりそうだ。

これまでWSTSの日本支部では、5月と11月に世界中から半導体メーカーの代表者が集まって1〜2年後の見通しを議論し予測を発表してきた。この2年間はメモリの単価だけが値上がりし、生産量、ビット需要がそれほど伸びなかったのにもかかわらず、売り上げが異例ともいえるほど好調だった。メモリにフォーカスしてきたSamsungの営業利益率は何と70%に達しようというほどのレベルの高さだった。通常は良くて30%程度だったからメモリバブルといっても言い過ぎではなかろう。生産量や投資を増やさなくてもDRAMは単価が底値の2.5倍も上がったため、その分利益が極めて大きくなりすぎた。まさにメモリバブルを享受してきた。

とはいってもいつまでも単価の値上がりを期待していては、今後の展開が危なくなる。現にSamsungの敵ともいえるほどライバル意識の強いSK Hynixは投資を増やし生産量を増やしSamsungに追いつき追い越せという姿勢を示すと、Samsungもようやく生産量を拡大し始めた。この結果、10月になってDRAMの単価はようやく下がり始めた。これまで、DRAM価格値上がり⇒搭載するスマホもパソコンも価格値上げ⇒スマホもパソコンも出荷量が伸びず横ばいという事態に陥っていた。

NANDフラッシュは今年の初めから単価が下がり始め、直近では年初の3割減になった。しかし、まだ底値の2倍まで上昇したことから考えると、まだ不況というほどには至らない。しかもフラッシュはHDDからSSDへの置き換えに使われるだけではなく、フラッシュストレージという形で、NVMe高速インターフェースへの採用により、もっと高速性が高まっている。NANDフラッシュを生かし高速ストレージへと進展することは間違いなかろう。

メモリはそれほど大きく崩れないであろう。NANDフラッシュは上述したような新しい高速インターフェース利用へと需要を拡大しながら、DRAMにはこれまでのスマホとパソコンの用途から、AI(機械学習とディープラーニング)応用という新分野が生まれてきたからだ。ディープラーニングのニューラルネットワークでは、学習するという演算を一時的に記憶するDRAMが不可欠であり、DRAMで足りなければHBM2という3次元メモリを利用する手もある。学習⇒記録保存⇒データを次のニューロンへ入力⇒学習、という繰り返しを行う。それも早く演算したければDRAMを大量に使うことになる。AIはこれからの応用分野であり、DRAM需要はこれまで以上に増えることになる。

先週、SEMIはパワー半導体の市場予測を発表し、2022年には2018年比で18.2%増の月産ウェーハ枚数650万枚になるとした。日刊工業新聞が28日にこれを報じ、パワー半導体のラインも10程度増えるとしている。WSTSの19年の成長製品の一つにディスクリート半導体(この7〜8割がパワー半導体)があり、セミコンポータルでも指摘した(参考資料1)。パワー半導体はこれまで市場調査会社は常に甘い予測を発表し、毎年それを下方修正するという歴史を繰り返してきた。しかし、自動車のエレクトロニクス化が進み、簡単な機械的な動力をモータで置き換える技術が使われ続けてきた。クルマにおけるエレクトロニクス化、半導体化は未だにとどまるところを知らない。

27日には、デンソーがドイツのInfineon Technologiesに0.2%程度出資した、と日経が報じた。これもパワー半導体が強いInfineonに対して、デンソーは供給体制を確保する意味で、Infineonとの関係は深くなる。Infineonはトヨタの広瀬工場から毎年のように優れた品質管理体制を表彰されてきている。デンソーはこれから立ち上がるパワー半導体の安定供給を期待してInfineonに出資したのであろう。パワー半導体はEV用のインバータだけではなく、DC-DCコンバータなどの電源やバッテリマネジメントなどにも使われ、EVでなくても小型モータ制御に使われ、車載での用途を広げている。

参考資料
1. 2018年の世界半導体は16%成長へ、WSTSが予測 (2018/11/29)

(2018/12/03)

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