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5G通信への準備が着々と進む

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2020年東京オリンピック/パラリンピックを控え、通信容量増大に対応する5G通信に向けた記事が多くなってきた。5G通信の最大の特長はデータレートの10Gbpsだけではなく、レイテンシの1ms、携帯電話だけではないさまざまなモノとの接続、である。これまでの通信方式と大きく違いIoTやクルマ、AIとも関係する。

11月22日の日本経済新聞は、京都経済特集を組み、5G前夜と題して、京都企業の電子部品・半導体を紹介している。特に5G基地局および幹線コア局(バックホール)における通信機器とサーバー、スイッチなどでの用途を狙っている。LSIセラミックパッケージのトップメーカーの京セラは、通信機器に使われるセラミック部品で微細な配線や薄膜の多層技術を使った配線基板もサーバーなどに使われると見ている。島津製作所は光通信部品を増産する計画だという。
 
半導体のロームは、SiCパワー半導体(ショットキーダイオードとMOSFET)を使い、基地局のサーバーや通信機器の電源に使うという。SiC関連の受注が増えているという藤原忠信社長のコメントを載せている。日本電産はモータを使った冷却ファンやヒートシンクで基地局の機器を支える。SAWフィルタが強い村田製作所は、3.5GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯といった5Gの当初の周波数帯に使うための新しいフィルタを開発するとしている。5Gとのつながりでコネクテッドカーでも京セラや京都大学発ベンチャーのGLMと協力し存在感を示す。

NECはNTTドコモと共同で、高速移動での5G通信がその品質を維持できるかどうかの実験を始めた、と21日の日経産業新聞が報じた。つくば市の国土技術政策総合研究所で、最高120km/時で高速走行中での自動車と基地局間でのデータ伝送では、停止中と同じ通信性能が得られたとしている。記事内では、基地局間のハンドオーバーについて触れていないため、一つの基地局内での高速移動なのか不明である。

三菱電機は、準ミリ波である28GHz帯の5G通信を使って27Gbpsという極めて高いデータレートを実現した、と22日のニュースリリースで述べている。通信距離は10mだが、100mでも25Gbpsを得ている。これは16×16アンテナのMIMOを使い、16ビームを移動端末に向かって空間的に指向させることで500MHz帯域の通信信号を多重化するというもの。ビルに仮想的な基地局を置き、クルマのルーフに移動端末のモデルを置き、基地局とクルマとの距離を変えた。

5Gの基地局では、モバイル端末やIoTからの通信データを直接やり取りするエッジの基地局と、エッジ基地局から幹線コア基地局(バックホール)へ光ファイバでつなぐ。このコア局は多数のエッジ基地局からのデータを受け取り束ね、所望の通信先に送り出す/受け取る、というスイッチ作業を担う。スイッチ作業にはどの局を経由してどの端末に送るべきかを計算するためサーバーに匹敵するような演算能力が必要になる。5G通信では、モバイル端末と基地局とのレイテンシ(遅延)が1msになるように決められているため、エッジ基地局とコア局の間を250µs以下にする必要がある。10Gbpsと40Gbpsの新しいPON規格も登場、5Gへの基地局対応の順調に進んでいる。

(2018/11/26)

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