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米中貿易冷戦が動き出す、半導体産業への影響はいかに

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先週、米国のペンス副大統領が中国政策に関する演説を行い、11月2日の日本経済新聞は演説の概要を掲載した。また、日経産業新聞は、ArmのシガースCEO、Micronのバーティア幹部、IDTのウォーターズCEOとのインタビュー記事をそれぞれ11月2日、5日、1日に掲載した。昨今の半導体市況を確認している。

ペンス副大統領の演説は、米中貿易戦争の本格的な幕開けを示しており、単なる貿易赤字だけではなく、中国のWTO違反への失望をはじめ、「中国製造2025」計画にも触れ、技術を米国から盗んでいることを訴求している。さらに中国の軍事費拡大にも触れ、キリスト教徒、仏教徒、イスラム教徒への迫害を非難している。アフリカやアジアへのインフラ融資と対象国の巨額の負債と引き換えに、例えばスリランカに建設した港を引き渡すように圧力をかけたことにも触れている。この演説が激しい内容だったために、米中の冷戦が勃発するのではないかと予測するアナリストも米国にいる。

中国に新たに建設されたDRAM半導体工場JHICCへ製品(半導体製造装置や材料)の輸出規制を米国は発表しており、その影響は日本にも及びそうだ。Applied MaterialsやLam Researchなどの製造装置が直接影響を受けるのに対して、ワッセナール協定のように日本政府へ圧力をかけることで東京エレクトロンにも影響が出てくることは必至だろう。TELは、64層3D-NANDフラッシュの歩留まり向上による製造装置の導入が延期されたことを見越して、2019年3月期の連結純利益見通しを当初の2700億円から2370億円に減額しているが、これに中国半導体工場への出荷の停止が政府の圧力で来る可能性も高い。

さらにトランプ政権は、米国の半導体産業にとって有利になるようにUSTRによる二国間交渉を日本、EU、英国と始めることを宣言している(参考資料1)。早ければ2019年1月14日に始まるとしている。

5日に日経に報じられた日本の貿易収支報告では、2017年におけるハイテク製品の輸出額は10年前と比べ、テレビなどの映像機器が59%減、コンピュータ・周辺機器は55%減、集積回路はまだましの20%減の266億ドルに下がったが、半導体製造装置は、10年前より76%増の227億ドル(約2.5兆円)と増加した。日本の貿易黒字額が2.9兆円しかない現状を見ると、日本の半導体製造装置はまさに「虎の子」の超重要製品だ。日本政府が米国の圧力に屈しないことを望む。

米国企業の経営幹部とのインタビュー記事では、Micronが2018年に3次元化への移行を進めた結果、年率で45%伸びたが、今後は積層数を増やすだけなので、これほど急増しないが、長期的には成長すると見ている。MicronはDRAM、NANDフラッシュ、3D-Xointメモリの3つを揃えており、この3つを組み合わせたソリューションを提供できる企業であることを訴求している。

Armは、2年前ソフトバンクの傘下に入り、短期利益を追求しなくてもよくなったため、長期的な成長が見込めるIoTを推進できることを述べている。ArmのIPコアに加え、データ解析のトレジャーデータ社の買収、組み込みIoTのmbedプラットフォームといった、半導体向きのIoTシステムを構成できるようになった。セキュリティに対しても、ソフトバンクが出資したサイバーリーズン社との連携も可能になり、従来のTrustZoneというセキュリティウォールだけではない、セキュリティ確保への道も可能になっている。ソリューションビジネスへの体制が固まれば再上場することは間違いない。

IDTのCEOはルネサスに買収されたことを好意的に述べているが、ルネサスが強い自動車ビジネスで、無線充電技術をクルマ向けに拡大したいと述べている。ただIDTにとっては買収してもらいたかったという意思が当初からあったため、ルネサスに対して肯定的なコメントが多い。

参考資料
1. U.S. Announces Trade Talks with Japan, the EU, and UK; Action Will Benefit Semiconductor Industry (2018/10/19)

(2018/11/05)

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