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東芝メモリとWestern Digitalの共同製造拠点が完成

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東芝メモリとWestern Digitalは、四日市工場内に3D-NANDフラッシュメモリを製造する第6製造棟と、メモリ開発センターが完成、その竣工式を行ったと共同発表した。9月に入り96層のフラッシュメモリ製品の量産を始めているという。このほか、量子コンピュータを金融が利用し、AIでは利用分野が広がっている。

第6製造棟が着工したのは2017年2月。東芝首脳陣がWDと対立し、メモリ部門は宙に浮いた形ながらも量産体制を粛々と構築してきた。新製造棟には5000億円を投資したという。フラッシュメモリの製造を両社が従来通り行い、SSDやカードなどの形で別々に販売する。フラッシュメモリは、信頼性を上げるためできるだけ同じメモリセルを書き込まないようにしたり、エラー訂正回路を付けたり、不良ビットを冗長ビットで救ったり、するなどさまざまな回路が周辺に必要だ。このため、メモリコントローラは非常に重要なICとなり、このICはそれぞれが競い合っている。

東芝経営陣の足踏みにより、トップのSamsungとの差を大きく広げられ、下位のMicronやSK Hynixからは差を詰められていた。2位、3位の位置を占める東芝メモリとWDは、この新製造棟を駆使することで、トップとの差を詰め、下位との差を広げていく。

メモリ開発センターは、2018年3月から稼働しており、3D-NANDフラッシュを開発するために設立された。3次元のメモリセル層数を増やしたり、1セルを多重分割して複数ビットを記憶させたりする大容量化や、あるいはオールフラッシュストレージに適した高速化システム、クルマ用に使うための高温での書き換えや読み書きなどの耐久性試験、など開発すべき項目は多い。

先週は、金融機関が量子コンピュータを利用する動きについて、20日の日本経済新聞が報じている。新聞では報じられていないが、量子コンピュータには2種類あり、一つはゲート方式と呼ばれ、量子力学の重ね合わせの原理を利用するもの。1と0の状態を、0と1の状態に同時に重ね合わせることができるため、演算すべきビット数をもっと増やすことで並列度を増やし高速演算が可能になる。これは、積和演算を多用するAIと同様に活用できる。もう一つは量子アニーリングと呼ばれる手法だ。これは、並列演算というよりは、解くべき問題が明確で「巡回セールスマン問題」で代表される最適化問題に適している。こちらは学習しなくてもその場で、最適な方法やルートや手順を瞬時に見つけることができる。

三菱UFJ銀行が、国内ベンチャーのMDR社と共同で、暗号技術の解読に対抗する手段として量子コンピュータを研究しているのは、前者のゲート方式のようだ。研究は慶應義塾大学の量子コンピュータ研究拠点で行う。また、この拠点にはみずほフィナンシャルグループも参加しており、先物取引などのデリバティブ(金融派生商品)での適用を探る。デリバティブでは、ブラック-ショールズの式と呼ばれる、時間を含めた偏微分方程式を解くため、積和演算の数値演算手法に適したディープラーニング(AI)でもゲート方式の量子コンピュータでも使える。

野村ホールディングスも東北大学と共同で、量子コンピュータを資産運用に活用する研究に着手したという。東北大学では、量子アニーリング技術を使う2000 Qビットの量子コンピュータD-Wave 2000QをD-Wave Systems社から日本で初めて導入している。

18日の日経は、世界AI大会を中国上海で開催し、Googleやアリババも講演したと報じた。別記事で、ソニーがAI人材の研修サービスを始めると報じている。同社内で2000人のAI人材を育てた経験を生かすとしている。

AIを活用するためのパブリッククラウドの現状について20日の日経が伝えた。パブリッククラウドのトップシェアを握るAWS(Amazon Web Service)は、その日本法人が顧客を支援するための施設「AWSロフト」を10月1日から稼働するとしている。技術者が常駐し、クラウドを活用したサービスやシステム開発の相談に無料で応える。Googleも自社のクラウドを利用してAIで課題を解決するサービスを発表したと報じている。AWSとGoogle、Microsoftがパブリッククラウドのトップ3社であることに変わりはない。

(2018/09/25)

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