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市場の寡占化で値下がりしないDRAM単価、バブルは続く

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NANDフラッシュが順調に値下がりし、市場を拡大してきているのに対し、DRAMは3社の寡占化が続き、DRAM単価は上げ止まったままの状況が続いている。DRAMメーカーのSK Hynixが発表した4〜6月期の営業利益率は実に53.7%という売上額の過半数を占めた。半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンとテスタのアドバンテストの業績も絶好調。

7月27日の日本経済新聞は、DRAM単価はDDR3の4Gビット品という汎用品の価格が3月以来4ヵ月連続で横ばい、すなわち上げ止まりの状態だと報じた。同紙は、パソコンメーカーのコメント「これだけ長い期間、値上がりが続いたのは異常事態」を引用しており、今の市況を表している。

実際、DRAMという汎用品で値上がりが続き、しかも上げ止まったまま動かない状態はこれまでになかった。メモリは常に習熟曲線に沿って歩留まりが上がり単価は下がり、応用が広がってきた。この結果、生産量も売上額・利益も増え健全な経済成長ができてきた。しかし今回のDRAMの値上がりは生産量を増やさずに単価の値上がりで売り上げ増につながった。しかもわずか3社だけで市場の95%以上を占めるという異常事態だった。

Hynixは3兆5000億ウォン(約3430億円)を投じソウル近郊のDRAM工場に新棟を建設すると発表、28日の日経がそれを報じた。DRAMはHynixの売上額の8割を占める主力製品。残り2割がNANDフラッシュである。ようやくDRAMメーカーが投資することになった。Samsungは昨年投資するはずだったのを今年に延期しており、Micronはまだ発表していない。3社の寡占化に対して中国がDRAMを生産することは寡占化の壁を破る良い機会だと捉えてよい。

先週、東京エレクトロン(TEL)とアドバンテストが発表した2018年4~6月期の決算資料からは、DRAM向けの製造装置売り上げは、2018年1~3月期からようやく増えてきた。2017年4~6月期からNANDフラッシュ用の製造装置の比率が高まり40%を超えてきたが、DRAM用の製造装置の売上額比率は18年1~3月期に28%、この4~6月期に30%となった。TELの売上額におけるロジックに対するメモリ向けの比率は、どんどん高まり、2017年1~3月に5:5だったが、その後はメモリの方が6:4と多くなり、2018年1~3月期は7:3と広がり、4~6月期には8:2とメモリの設備投資額が圧倒的に増えている。分野別ではNANDフラッシュの投資額が最も大きい。64層の量産化が終わり、96層の設備をNANDメーカーが揃え始めている。

アドバンテストは、これまでメモリ向けテスタの比率を下げ、SoCテスタを強化してきていたが、ここ最近は再びメモリテスタの売上比率が上がっている。半導体・部品テストシステム事業の売上額において、メモリテスタとSoCテスタの比率が、2016年4~6月期には10%程度でSoC向けが圧倒的に多かったが、2017年4~6月期にはメモリ比率は39%まで高まり、最近までずっと40%弱まで高めてきている。このメモリバブルの影響を受け、売上額に対する営業利益率は22.3%、と高まった。半年前までは1桁しかなかった。

DRAMが寡占化で生産量があまり動かない状態なのに対して、NANDフラッシュは生産を拡大に動いている。NANDフラッシュの東芝メモリは岩手県にある北上工場で製造棟の起工式を24日に行ったと25日の日経が報じた。1兆円規模の投資を行い、2020年の稼働を目指す。

海外の動きとして、30日の日経産業新聞は、Googleがエッジ向けAIチップを外販すると報じている。チップの名称は「エッジTPU」。Googleはこれまで、ディープラーニング用のフレームワークTensor Flowを公開しており、クラウド向けのラーニングチップをTPU(Tensor Processing Unit)としてきたが、今回の外販は、IoTやロボット、スマホ、クルマなどエッジで推論するためのチップとしての位置づけであろう。ディープラーニングには積和演算が必要だが、ニューラルネットワークのモデルでは積和演算の精度低くてもかまわないため、従来のGPUに代わり専用のAI演算チップが求められている。

またQualcommのNXP Semiconductor買収に対して、中国当局からの認可が下りず、買収は断念することになった。米中貿易戦争のトバッちりを受けた格好になった。

(2018/07/30)

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