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AI、量子アニーリング技術の開発が活発に

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6月24日の日本経済新聞に、「AI人材70万人 世界争奪、自動運転・顔認証で不足深刻、日本勢、米中に後れ」という見出しが載った。AIは今や、株式の高速取引、創薬開発、コールセンターをはじめ、さまざまな研究者がデータ解析に利用し始めている。一方、超並列処理が可能な量子コンピュータや、最適化問題を一瞬で解ける量子アニーリングなど新しいコンピューティング技術が登場し始めている。こんなニュースが多い週だった。

AI人材の不足は2年ほど前に海外取材で聞いた。日経によると、100万人の要求に対して現在は30万人しかいないという。AIを使った実例はすでに表れている。ただし、AIは、第1次の1960年代、2次の80年代半ば、そして今の第3次ブームになっているものの、AIの定義が今一つ明確ではなく、苦々しく思っている情報処理関係者も多い。また人間の計算能力よりも優れた計算ができるマシンを人工知能と呼んでいたこともあった。東京大学の松尾豊准教授は、最新のAIブームはディープラーニング以降の技術を指す、という。

IBMは機械学習のマシンをAIと呼ばずコグニティブコンピューティングと呼んでいた。クイズに出やすい問題をコンピュータに学習させることで、クイズ番組のチャンピオンに勝ったという有名な話も最近のブームのきっかけの一つだ。Googleの検索エンジンAlphaGoが囲碁の名人に勝ったという逸話も同様。NvidiaはMicrosoftが機械学習で音声認識の認識率が95%近くになったことがきっかけだと述べている。いずれも機械学習ないしディープラーニングからAIが始まっている。

ただし、AIは仕事を奪う、AIが人間にとって代わる、といったネガティブなキャンペーン(明確な事実ではない)は正しくはない。人間の仕事を補完するものがAIである、という認識でIBMはAIをArtificial Intelligence(人工知能)ではなく、Augmented Intelligence(補完知能)がふさわしいとしている。

22日の日経産業新聞は、Google(正確には買収した英DeepMind)が2次元画像から3次元画像を認識する新しい画像認識技術GQN(Google Query Network)を開発したと伝えた。これは、例えば人間が初めて入る部屋に置かれたテーブルが3本足しかなければ、4本目がどこかに隠れていると想像するように、これまで学習したことを想起して2次元の画像から3次元画像を想起するような認識技術らしい(参考資料1)。これまでの画像認識は、画像に描かれた動物や植物の名前を分類する学習が多かった。この学習には何千枚、何万枚の絵や写真を見せて覚えさせていた。時間も手間も大変かかる学習作業だった。これに対して、GQNでは、何枚かの画像から奥行き情報など選択すべき動物や植物の周りの情報だけを学習することで、学習の負荷を減らそうというもの。

18日の日経産業は富士通の田中達也社長とのインタビュー記事を載せ、同社がスーパーコンピュータ、ディープラーニングを使ったAIのマシンである「Zinrai(ジンライ)」、さらに量子アニーリングに似た動作をCMOS半導体上で行うデジタルアニーラの三つを軸にコンピューティング技術を展開していることを語っている。それぞれ、高速のベクトル演算、認識技術、最適化問題のソリューション、という強みがある。

20日の日刊工業新聞は、情報処理機構が量子アニーリングに似た動作をCMOS半導体上で実現するアニーリングマシンプロジェクトを今秋立ち上げる、と伝えた。参加するのは富士通と日立製作所。日立もCMOSアニーリングマシンを富士通とは別に開発しており、その応用を含めた開発人材を育て、企業や事業化を支援するとしている。量子アニーリングは巡回セールスマン問題のような最適化問題を解くことが得意で、AIとは全く違う。また量子コンピューティングは超並列処理が得意な問題を解くのに向く。AIは学習したものが得意であり、それぞれ得意不得意がある。いずれも従来のフォンノイマン型コンピュータでは解くのに時間がかかる問題を短時間で解くことができる。

21日の日経は、NTTの量子ニューラルネットワークという新型コンピュータの利用状況を報じている。これは光ファイバループ内を2000個の光パルスを千回程度回し、光パルス群が最も安定する位相の組合わせをとるという(参考資料2)。このニュースリリースを読む限り、アニーリング手法と似た最適化問題に特化している。この発表は、量子コンピュータとは別物だという研究者の厳しい意見にさらされたが、やはり何が量子なのか、量子力学の何の性質を利用したものなのか、よくわからない。

米国のIEEEでは新型コンピューティング技術としてRebooting Computing Initiativeといったグループが生まれ、ポストフォンノイマン型コンピューティングの研究を始めたが、学会活動は活発ではないようだ。

参考資料
1. Neural scene representation and rendering、DeepMindホームページ 
2. ニュースリリース「量子ニューラルネットワークをクラウドで体験〜量子を用いた新しい計算機が使えます

(2018/06/25)

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