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2017年の製造装置、2000年のITバブルを突破、史上最高の6兆円

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半導体製造装置の世界市場が6兆円を突破した、とSEMIが4月9日に発表した。2017年の世界販売額は前年比37%増の566億ドル(約6兆円)と2000年バブルの時の販売額をようやく超え、過去最高額になった。半導体デバイスの2017年販売額はこれまでのスマホやIoTとは全く違いメモリバブルを享受したものであるが、それはいまだに続いている。

SEMIが発表した製造装置売上額において、地域別で最高を示したのはメモリバブルを最も大きく享受できた韓国で、前年比2.3倍の179億5000万ドルと全体の31.7%を占めた。中国はメモリに大きく投資しており、中国での販売額は同27%増の82億3000万ドルと大きい。SEMIは、2017年12月のSEMICON Japanで2017年の売上額を556億ドルとみていたため、上方修正する形となった。この時に2018年の製造装置売上額も7.5%増の601億ドルとみているが、いまのところDRAMの平均単価は高値安定・わずかに上昇傾向、という状態であるから、メモリバブルはまだ続いているといえそうだ。ただし、NANDフラッシュは設備投資による増産効果が表れており、順当に値下がりしてきている。DRAMには設備投資が効いていないため、生産量がまだ不十分で単価の値上がりが続いている。

メモリ以外はTSMCの売上額がこれまで世界半導体市場の指標の一つだった。2017年におけるTSMCの売上額は前年比9.1%の321億ドルにとどまっている。TSMCはDRAM値上げの負の影響を受け、スマホやパソコンが値上がりして販売台数が減ったり止まったりしていた。この結果、市場をけん引していたスマホのアプリケーションプロセッサの生産量が伸びなかった。ただしTSMCを救ったのがビットコインなどの仮想通貨をマイニングするためのSoC需要だった。

仮想通貨用マイニングシステム開発のTRIPLE-1社(東京都中央区日本橋小網町)がこれまでのマイニングマシンと比べて処理速度を4倍に高速化できる、7nmプロセスを使ったSoCを開発した、と4月11日の日刊工業新聞が報じた。ビットコインでは、世界中の全取引量を台帳に記述する作業が必要で、各取引所の取引量を拾って台帳につけるための作業をした人にビットコインを与えることになっている。ビットコインの供給量は上限が決められているが、まだ供給できるほど残っているためいち早く計算すればビットコインが得られる。台帳から取引量を探し、転記するための演算に高速のコンピュータが必要で、専用のSoCを持つことがカギとなるため、最先端のプロセスで超高速コンピュータを実現しようとしている。TRIPLE-1社はシステム開発とチップ開発を同時に受け持っており、ファブレス半導体メーカーでもある。

DRAM価格がまだ落ちずに維持され、Samsung、SK Hynix、Micronの3社で90%以上のシェアを占める独占状態になっており、2018年もメモリがけん引する半導体市場は今年も2桁成長へと早くも上方修正されるようになっている。このため新潟県にあるGWJ(Global Wafers Japan)は、3年間で80億円を投資すると、12日の日経新潟地方版が報じた。月産20万枚から1割増産するとしている。また19年までに5億円を投じ、SOIウェーハを従来の月産3000枚から1万枚弱に引き上げる計画だ。同社の2017年の売上額は前年比17%増の420億円だった。20年までには2017年比で1割以上増産すると報じている。

メモリバブルが続く中、AIやロボット、IoTなども順当な成長が期待されている。例えば、東北大学では、集束イオンビームSEM(FIB-SEM)の分解能を上げるためにディープラーニングを使ったと13日の日刊工業新聞が報じた。高分解能の画像をディープラーニングで学習させ、粗い画像から高分解能の画像を作ることに成功したという。観察時間が1/10に減ったとしている。

ロボットを使った例では東京エレクトロンが宮城工場のエッチング装置生産拠点の中の物流棟にロボットを導入すると、10日の日刊工業が報じた。装置の生産に必要な部品を棚から取り出す作業にロボットを使い、生産現場への移動には自動搬送車を使うとしている。産業用ロボット大手の安川電機は、100億円を投じて研究開発拠点を北九州市の本社近くに設置すると10日に日刊工業が報じた。この「安川テクノロジーセンタ」は本社横の土地を三菱ケミカルグループから賃借する。3階建て延べ床面積2万6000m2を計画。ワンフロアに500人程度働けるオフィスとして、現在はロボット、モータ関連、システム制御の3事業に分かれている開発担当者の交流を進めるとしている。

(2018/04/16)

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