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大学発ベンチャーの起業支援が活発に

大学発ベンチャーへ出資するファンドが誕生、大学の起業部からベンチャー企業が現れた。ベンチャーに投資する大企業も出てきている。また、量子コンピュータの開発が日本でも活発になっている。そして5nmプロセスにTSMCが2.6兆円投資する。

東京大学は、技術移転のためのベンチャーキャピタル(VC)である東京大学エッジキャピタル(UTEC)を2004年に設立しているが、UTECはこれまで約80社に投資し、うち9社が株式上場、10社がM&Aを果たすようになった。2018年1月に新たなファンド「UTEC4号投資事業有限責任組合」を設立した。このファンドでは、155億円の出資約束規模の資金を集め、さらに今後、250億円程度を目途に出資約束規模を拡充していく予定だという。

このニュースを1月24日に報じた日本経済新聞によると、新ファンドでは、自動運転や人工知能、ヘルスケアなどの分野で優れた技術を持ち世界展開を目指す企業を発掘する、としている。米国のVCやシンガポール国立大学などと連携し、投資先の海外進出を支援するという。

九州大学には、学生の部活動の一環として、「起業部」が2017年6月にできたが、このほど第1号のベンチャー企業として「メドメイン」(福岡市)を設立した。起業部は、九州大学公認の部活動で、起業したい学生が集まり、起業するための活動を行う。専任教員が顧問として指導にあたるほか、国内外の一流の起業家やベンチャーキャピタリストともネットワークを結び、起業支援を行うという。23日の日経産業新聞は、メドメインは、九大医学部4年生の飯塚統氏が社長を務め、人工知能のディープラーニング(深層学習)を活用し、病理検査で使う画像診断支援ソフトの実用化を進めるとしている。患者の細胞を採取しその顕微鏡写真から病名を診断するためにAIを利用する。AIが画像を学習し、診断を下せるようにするためのソフトウエアをメドメインが開発中のようだ。

九大起業部は、設立と同時に、一般社団法人「QU Ventures」も設立、九州大学起業部の支援を通して、学生ベンチャーの創出、大学発ベンチャーにおける経営人材の養成を行うとしている。今回生まれたメドメインは、個人投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける方針だという。

また、24日の日経産業新聞は、工業ロボットやオートメーションの大手、安川電機が九州大学発のスタートアップ、ピコセラ(東京・千代田、古川浩社長)にこのほど出資し、通信システムの管理制御技術を持つピコセラを通じ、IoTを研究する、と報じた。ピコセラは無線通信に強いベンチャーで、かつて、地域のスモールセルの実用化を目指していた。日経産業によると、工場内のネットワークを無線にするためのコラボレーションのようだ。

22日の日経は、NECが量子コンピュータの基礎回路を2018年度中に開発し、23年度にも実用化する、と報じた。NECが開発するのは、量子アニーリング技術だという。これは「巡回セールスマン問題」のような最適化問題を解くための技術。量子アニーリングは最適化問題を解く上で陥りやすい、エネルギーポテンシャルの「局所最適」から、エネルギーを与えて、「全体最適」に落とすためのアルゴリズムである。

また富士通は関連技術に3年間で500億円を投じると伝えている。同社は2017年のCEATECで、量子アニーリングを実行するための1024量子ビットのCMOS LSIの試作を発表していた(参考資料1)。「富士通は、研究が盛んなカナダ・トロント大学に人員を派遣するなど基礎研究を進める。量子コンピュータ向けソフトを手掛けるカナダの1Qビットと資本提携し利用企業を開拓する」と22日の日経は報じている。

投資案件では、TSMCが7000億台湾元(約2.6兆円)することを、台南の新工場の起工式で表明した、と27日の日経が伝えた。「式典は「南部科学工業園区」(台南地区)の建設予定地で開催。42ヘクタールの土地に5nm品の工場3棟などを建設する。投資額約7000億台湾元には技術開発や試験生産の費用も含まれる。同じ敷地内にさらに微細化した3nm品の工場3棟も建設予定で、5nm品とは別に200億米ドル(約2兆2000億円)超を投じる方針だ」と報じた。今や7nm、5nmへと開発を進める企業は、TSMCとSamsungのファウンドリだけになりそうだ。

参考資料
1. AIをもっと身近に−CEATEC 2017 (2) (2017/10/12)

(2018/01/29)
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