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グローバルな共同開発体制が活発に

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Googleが台湾のスマートフォンメーカーHTCを買収し、台湾の鴻海精密工業は米国ウィスコンシン州から液晶工場設立の出資を受ける。村田製作所は米医療システム向けソフトウエアベンチャーを買収、日立製作所は米カリフォルニア州にIoTのデータ解析を強化するHitachi Vantara社を設立、ドイツやオーストリアのOEMクルマメーカーのティア2サプライヤが名古屋などに拠点を設ける。グローバルな共同開発が活発になっている。

Googleは台湾のHTCのスマートフォン事業の一部を11億ドルで買収すると、9月22日の日本経済新聞が報じた。現在スマホ部門のエンジニア4000人のうちの半数がGoogleに移籍するという。HTCはAndroidを搭載したスマホを最初に製品化した企業。最近は中国勢に押され世界シェアを0.9%に落としていたが、Googleブランドのスマホ「ピクセル」をHTCが請負生産しており、GoogleとHTCは密な関係が続いていた。GoogleはかつてMotorola Mobilityを買収したものの、失敗し手放したという苦い経験を持つ。HTCはDolby技術をスマホに採用するなどオーディオに優れ、Googleは最近AIスピーカーGoogle Homeを販売するなど、新しいデジタルオーディオに力を入れている。

世界最大のEMS(電子機器製造請負)メーカーである鴻海精密が米国のウィスコンシン州に計画している液晶パネル工場の建設に、総投資額100億ドルのうちの30億ドルを地元政府から引き出した、と22日の日経が報じた。鴻海は、トランプ大統領の米国での雇用促進にうまく乗りながら、州政府からも30億ドル(3300億円)を引き出すという、したたかさを発揮している。ウィスコンシン州は鉛鉱業でかつて栄えたローテク地帯であり、トランプ大統領の支持者が多い州だ。150社ものサプライヤの誘致につながるという「殺し文句」が勝った格好だ。

村田製作所は、医療機器に使うソフトウエア開発の米国のベンチャーVios Medialを買収すると9月22日、発表した。ムラタは電子部品の成長分野として、10年以上前からクルマに狙いを定め、カーエレクトロニクス分野を確立してきた。次の成長分野として医療機器に目を付けた。2012年に設立した、Vios Medicalは、患者の遠隔モニタリング、データ処理、モニタリングインフラ管理などを含め、ヘルスインフォマティックスのアルゴリズムを開発するほか、ソフトウエアベースのモニタリングデバイスも手掛ける。デバイスやソフトウエアアルゴリズムに関して米国のFDA(日本の厚労省に相当)の認可をすでに取得しているため、米国の病院という市場を狙える。ムラタの持つセンサと組み合わせた医療機器システムを開発できるようになる。

日立製作所は、米国にIoTシステムを強化する新会社Hitachi Vantara社を米カリフォルニア州サンタクララに設立したと発表した。元々ストレージ部門だった、Hitachi Data Systems社と、その子会社でビッグデータ解析ソフトウエアの解析を行ってきたPentaho社を統合させたもの。日立は、自社の持つITとOT(Operating Technology;いわばモノ作りの現場)を組み合わせたデジタルソリューションの展開を加速する、と抽象的な表現をプレスリリース上でしているが、その狙いは、日立が持つIoTのプラットフォームであるLumanda上でデータ解析ソフトを動かし、IoTビジネスの価値であるデータビジネスを握る狙いとみられる。

自動車産業でもグローバル化がやってきている。これまでの自動車産業は、OEM自動車メーカーを頂点として、直接のサプライヤであるティア1、そのサプライヤに部品や材料を収めるティア2、さらに製造に必要な資材・部材を提供するティア3、などと多くのサプライヤで構成され、しかも国や地域ごとに成り立っていた。この構造が大きく変わり、トヨタ系のティア1サプライヤだったデンソーがBMWなどのドイツ車に食い込む一方で、エンジンを試験するオーストリアのAVL社が11月に名古屋市に拠点を設け、ドイツのソフトウエア開発ベンダーのFEV社は18年以降に日本に技術拠点を設けると23日の日経が報じた。

もはや自社を強くするためのグローバル化は世界各地で相互に行われており、日本にこだわることの意味は薄れてきている。

(2017/09/25)

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