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IoTとAIハードウエアのニュースが続出

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IoT(Internet of Things)は、センサ端末からデータ処理、通信を含むICT全てのシステムだが、データ処理ではAI(Artificial Intelligence)との親和性も良い。AIはやはりハードウエアなしでは成り立たず、IoTもソフトウエアなしでは成り立たない。この1週間もIoTとAIのニュースは続出している。

ソニーとパナソニックがそれぞれAIスピーカー(米国ではDigital Assistantと呼ばれている)を今年の秋から冬にかけて発売すると9月1日の日本経済新聞が報じた。共に、1日から開催されるドイツベルリンでのIFA2017の前に発表された。両社のAIスピーカーは、グーグルのAIソフトウエア「Google Assistant」を搭載し、AI機能を実現している。Google Assistantは、これまでスマートフォン向けにソフトウエアとして搭載されている。

AIスピーカーは特に米国で活発に製品が販売されており、Amazonの「Echo」が最初の製品。AmazonはGoogle Assistantに相当するAlexaというAI機能を開発し、それをスピーカーに搭載してきた。Amazonはその後、続々と新製品を出しているが、日本では販売していない。というのは、このAIスピーカーは英語版であり、日本語の音声認識ができていないからだ。AIスピーカー、あるいはデジタルアシスタントは、音声で入力し家電のオンオフや対応を言葉で返す。このため言語ごとの対応が欠かせない。日本語版のAIスピーカーは今回のソニーとパナソニックが初めてとなる。

ソニーは、Google Assistantとは別に、独自でニューラルネットワークを開発してきた。ディープラーニングのモデルを設計するための「ニューラルネットワークライブラリ」を6月に公開、8月にはニューラルネットワークの設計ツール「ニューラルネットワークコンソール」を公開した。無償公開によって、ソニーのAI開発ツールを使える技術者を増やすことが目的だとしている。

デンソーは先端技術研究所を公開し、やはりAIを使ったシステムを開発していると4日の日刊工業新聞が報じた。車線変更時に他の車両と協調して合流する技術や、人や動物、クルマを色分けしてモニターに認識する技術を紹介したとしている。さらにSiCデバイス、生体認証技術なども公開したと報じた。

IoTではNTTコミュニケーションズ、伊藤忠テクノソリューションズらIT関連6社が、IoT時代のインフラ運用や管理に精通した人材を育成する「高度ITアーキテクト育成協議会」を設立した、と8月29日の日経が報じた。サーバーやネットワーク機器の運用・管理だけではなくソフトウエアサービスに通じたエンジニアを育成する。

ハードウエアメーカー側では、京セラが7種類のセンサを搭載したIoTモジュールを開発、自転車のような移動体に搭載するという。京セラは、これまでSigFoxというIoT専用の通信ネットワークに力を入れてきたが、今回の製品ではSigFoxなどのLPWAを使わずに、LTEの既存基地局の一部をIoT回線として使う、LTE Cat-M1とNB(Narrow Band)-IoTの2種類に対応する。移動体にはCat-M1が向く。

純粋なセンサとして、ルネサスエレクトロニクスが848万画素のCMOSイメージセンサを開発、この市場に参入する。サンプル出荷を始め、この12月には量産化し、2018年の12月には月産7万個体制を計画している。狙いはスマホではなく、4K対応の監視カメラ。マイコンと組み合わせて販売するなどルネサスのメリットを生かす。4K画像を60fpsで高速出力でき、トンネルから外を見るときの大きな明暗差でも鮮明に見える広いダイナミックレンジを持つため、監視カメラから、クルマ用へも、いずれ狙うのに違いない。CMOSセンサートップのソニーはスマホ向けだけでクルマ用にはまだ実績がないため、CMOSセンサのクルマ市場はビジネス機会が大きい。

最後に、東芝がWestern Digitalとの交渉が難航し、また振り出しに戻ろうとしている、というニュースが9月1日の日経に掲載された。「決められない」取締役会では、ビジネス機会からどんどん遠ざかり、せっかくの2兆円という金額が下げられる恐れがある。早期の問題解決は半導体の世界では常識だが、東芝本社の半導体を知らない取締役会ではその常識が通じない。Samsungからは差を広げられ、Micronとの距離は急速に詰められつつある東芝メモリは、最大の被害者かもしれない。

(2017/09/04)

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