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IoTの実証実験、IoT/AI/量子コンピュータへの政府支援開始

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全国的に夏休みとなった先週は、IoTの実証実験、政府のIoTツールの組み合わせ支援・AI(人工知能)チップ支援が始まった。IoTが単なるセンサだけではなくシステムとなることが理解され、IoTとAIなどの技術が一緒に使われる新コンバージェンス時代が見えてきた。

8月18日の日本経済新聞は、NTTドコモがIoTのセンサからシステムまでを使って、養豚コストを海外並みに落とすことで競争力のある養豚経営に役立てる実例を紹介している。豚を観察するためのセンサやカメラ、温度計、送受信機などのシステムを養豚場に設置する。エサ専用のタンクにセンサを取り付け食事量の増減から豚の体調変化を把握する。豚は78kg以上に太ると販売額が落ちてしまうとして、体重や体調を管理することで販売額をキープする。豚の生育に最適な温度や湿度を表示する仕組みも導入し、人による見回りコストを減らす。これにより、日本では養豚コストが1kg当たり420円もかかっており海外よりも2〜3割高かったが、IoTシステム導入によってコストを100円程度下げられるとしている。

NTTドコモの中国支社は広島のサタケと組み、水田をIoTで管理するシステムを導入した、と18日の日刊工業新聞が報じた。サタケは米・麦・トウモロコシを中心とする食品の販売と製造機械の販売を手掛ける企業。実験では水田にIoTセンサを設置、その端末を事務所に設けたIoT基地局との間をIoT専用の通信規格LPWA(Low Power Wide Area)で結び、低消費電力・長距離・低データレートのIoT通信を経て、クラウドへ水田データを送信する。水田管理を効率化し品質を向上させるのが狙いだという。データはクラウドサーバーに蓄積・解析し、パソコンやスマートフォンでデータを見ることができる。

日立製作所は中国のオフィスビルなどのエレベータやエスカレータなどの昇降機をIoTシステムで管理するビジネスに乗り出す、と16日の日経が報じた。2018年度から始める新サービスでは、昇降機の遠隔管理と、入退室管理や消費電力をモニターする。昇降機や出入り口、制御機器にセンサやカメラを設置、パソコンで遠隔管理し、電力削減できるようにする。

パナソニックは、IoT端末への給電をワイヤレスで行う実験を始めた、と17日の日経産業新聞が伝えた。京都大学のマイクロ波応用工学の篠原真毅教授と共同開発したもので、十数m離れたセンサとアンテナとの距離でも計測できる。実験では職員にウェアラブルセンサを装着し人の動きや体温なども計測するという。ワイヤレス給電システムは、半導体工場の搬送システムで実績のあるダイヘンが実用化している。同社は、16年にそれを使った無人搬送機(AGV)を発売している。これは工場の部品搬送などに使われており、荷下ろしのために止まる場所に送電ユニットを置けば、作業を中断することなくAGVの蓄電池に充電できる。

IoTは端末だけではなく、センサからのデータを解析して、顧客にフィードバックするシステムである。データの収集や解析を行うIoT向けソフトウエアプラットフォーム「Predix」(GE製)を日本でNECが販売しているが、そのGEの販売代理店を強化する、と17日の日経が報じた。専門技術者を100名に倍増させ提案力を強化する。NECとGEは16年10月にIoT分野で提携している。

また、日本政府はIoTやAIなどの支援にも乗り出す。IoTシステムでは、センサを内蔵した端末だけではなく、ゲートウェイ、クラウドまでつなぐツール、データの収集・蓄積・管理・解析するためのソフトウエアプラットフォーム(パソコンのOSのようなもの)、さらにユーザーがデータを可視化するためのアプリケーションソフトウエアなども必要になる。これらのデバイスやツールを用途に応じてどのように組み合わせればよいか、その「レシピ」をロボット革命イニシアティブ協議会と経済産業省が22日までに公募すると、21日の日刊工業が伝えた。

また経済産業省はAIチップの開発に来年度予算の概算要求で百数十億円を求めると15日の日経が伝えた。チップ開発の支援拠点を産業技術総合研究所などの独立法人や大学などを想定している。半導体設計・検証ツールだけではなく、AI専用の学習アルゴリズムを創出しやすくするためのツールも必要となるが、それらはライセンス費用がかかるためこれらのコストなどを支援するようだ。

また文部科学省は、AIに向いた並列処理の得意な量子コンピュータを実用化するため2018年度から10年間で300億円を投じる、と17日の日経が伝えた。量子コンピュータは、量子ビットの2のべき乗分を並列処理できるため、パターン認識やスーパーコンピュータの並列処理などに威力を発揮する。AIとは相性が良い。量子コンピュータは絶対零度近くまで冷却する必要があり、冷却電力は極めて大きくなるが、コンピュータそのものの電力も加味して電力を計算すると、実用化できるころにはコスト的に見合う可能性はある。

(2017/08/21)

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