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工場新設や増強のラッシュ

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研究拠点や工場を作る動きが活発だ。華為技術が日本に工場を立て、大陽日酸は中国に工場、村田製作所は横浜に研究開発拠点を、それぞれ作るというニュースがあった。先週はAIの展示会が開かれAI関連のニュースも多かった。東芝メモリの売却はメドが立たない。

通信機器大手中国の華為(ファーウェイ)技術が初めて日本に工場を新設し、通信設備などを生産すると6月29日の日本経済新聞が報じた。外資はかつて日本に工場を積極的に設立していたが、21世紀になってからはむしろ撤退する方向だった。外資の中でも中国企業が日本に工場を新設することは珍しい。千葉県船橋市にあるDMG森精機の工場跡地と、建屋を転用するという。生産設備を導入し早ければ年内にも稼働させるとしている。

華為はスマートフォンや携帯電話でも世界市場で存在感を示しているが、実は通信機器の方がすごい。第1位のスウェーデンのEricssonに迫る勢いの地位におり、その下にNokia Networks、中国ZTE、Cisco Systemsなどがいる。通信機器では国内はNECや富士通、沖電気、日立製作所が強かったが、NTTの分割やグローバル化により非常に弱まった。今や日本国内市場でもEricssonや華為、Nokiaなどの通信機器がNTTドコモやソフトバンク、KDDIなどの通信オペレータ納められている。華為は日本に研究拠点はあったが、工場はなかった。これは日本の人件費が中国と比べそれほど高くなくなったことにも起因する。

大陽日酸は逆に中国に工場を作る。ただし、従来通りの世界の工場としての中国ではなさそうだ。30日の日刊工業新聞によると、中国の加え韓国の半導体メーカーにも納入すべきジボランの合成やフルオロメタンの精製などの設備を新設する。30〜40億円を投じて江蘇省に工場を新設し、韓国の牙山市の工場を増強する。つまり顧客が中国・韓国にいるから新工場を建設する。

中国工場である揚州大陽日酸半導体気体は2019年1月をめどに稼働する。半導体向けガスの生産拠点は日本と米国、韓国に続き4カ国目。敷地面積は2万8000平方メートルで工場建屋や倉庫などの延べ床面積は7000平方メートル。中国ではDRAM工場の稼働開始を進めており、NANDフラッシュの工場もいずれ稼働する。その時を読んで工場建設に踏み切ったとみてよい。

京都に本社を持つ村田製作所は、横浜みなとみらい21地区に研究開発拠点を設立すると発表した。ムラタは通信機器や自動車、エネルギー、ヘルスケア・メディカルなどの応用分野やIoT事業に注力しており、横浜は日産自動車のお膝元であり、外資系企業の多い新横浜にも近い。この拠点にグローバル人材を配置するとしている。設立予定地はみなとみらい21地区の47街区、敷地面積は7415平方メートル。従業員数は1000人を超えるとしている。

AI関連ニュースは、ソニーがこれまで開発してきたAIのプログラムを生成するための開発ツール「ニューラルネットワークライブラリーズ」を無償公開すると28日の日経産業新聞が報じた。これは、ディープラーニングを行う場合に学習や評価データを集めてニューラルネットワークのモデルを作る訳だが、そのモデル生成や学習させる場合のソフトウエアを効率的に作ることができる。

また、AIベンチャーのアベジャは、画像や動画、振動、稼働状況などのデータをディープラーニングで分析するサービスを7月から開始すると7月3日の日経が報じた。また6月30日の日刊工業はインドのInfosysがAI向けプラットフォームを販売すると報じた。共にAI用の学習ソフトを開発するためのツールだが、Infosysのツールはさらに人間の業務をITシステムに置き換える基盤と、予測基盤も持ちサービスも提供する。SCREENホールディングスの子会社のSCREENアドバンストシステムソリューションズは、AIを使った社内イントラ向けの検索システムを開発した。

東芝メモリの売却問題はWestern Digitalとの訴状合戦に変わり泥沼化の様相を見せている。問題が長引けばSamsungがリードを広げていく。それを意識して、東芝、WD共に96層の最先端NANDフラッシュを開発したというニュースを流した。先頭を走るSamsungに待ったをかける格好だが、NANDフラッシュの高層化は量産が最も重要であり、開発ニュースはさほど意味を持たない。さらに東芝は、四日市工場に1800億円を投資すると発表した。新製造棟への投資についてWD子会社のサンディスクと協議中だが参加しない場合は単独で導入すると表明し、WDをけん制しているとみられる。

(2017/07/03)

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