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東芝メモリの売却を巡って急展開、WDが国際調停へ提訴

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東芝メモリ株式会社の売却を巡って、膠着状態が続いていたが、今朝(5月15日)になって事態が大きく動いた。Western Digitalが東芝のメモリ事業売却差し止めを国際仲裁裁判所に申し立てたのである。これによると、東芝による売却差し止めの仲裁と、分社化の撤回を求めている。

Western Digitalのプレスリリース(参考資料1)は、ロイターが伝え、それをYahooニュースや産経新聞インターネット版が掲載した。ただし、ロイターの日本語訳はプレスリリース全てを報じていない。もう少し、ニュアンスを含め訳してみる。

WDのCEOであるSteve Millgan氏のコメントをこのプレスリリースは掲載している。同氏は「(WDと東芝の)両社の合弁事業は、本質的に緊密なビジネス関係でやってきています。両社が選択しなかった団体との関係を強いるような事態を守るために、SanDiskと東芝は、片方の同意なしで移転を禁止することによって、合弁事業の利益を守ることに合意しました。東芝は合弁事業の利益をスピンオフして、一つの子会社にしようとしており、それをSanDiskの同意を得ずに売ろうとする行為は、明確に禁止されています。この問題を解決するためにやってきた努力は失敗に終わりましたので、次のステップとして法的手段をとることだと思います」。

2017年4月1日に東芝は合弁事業の利益を子会社の東芝メモリに移転した。この合弁事業の利益を第三者へ一般入札(オープンオークション)で売ろうとしている、とプレスリリースは述べている。

このプレスリリースでは触れられていないが、ロイターのニュースでは、合弁契約にある「支配権の変更(change of control)」条項の解釈が両社の対立点だと報じている。ロイターは「契約には合弁相手の同意なしに事業の持ち分を第三者に売却できないが、買収などによって持ち分の所有権の支配権が変わる場合は、同意は不要と明記されている」と述べている。東芝側は事業の子会社自体が買収されれば支配権も移転するので、東芝がWDから同意を取り付ける必要はない、と説明しているという。かつて、SanDiskと東芝の合弁事業のうち、SanDiskの持ち分をWDが買収した時に東芝に同意を求められた経緯はなかったとしている。

これに対して、WDは支配権の変更に同意が要らなくなるのは、あくまでも契約主体である東芝本体が売却される場合であり、今回の子会社売却には適用されない、と指摘しているという。WDの傘下にあるSanDiskの同意なしに東芝が事業を売却するのは契約違反だとしている。

この1週間の間、5月10日の日本経済新聞は、東芝に入札手続きの停止を求めているWD側に対し、東芝側は売却する権利があると主張したと報じた。さらに「15日までに入札に関する妨害行為を停止しなければ、東芝とWDで共同運営する四日市工場からWDの技術者を閉め出すと警告した」と伝えている。

翌11日に日経は、東芝の綱川智社長とWDのMillgan CEOが対立を打開するために協議を継続することで一致したもようだ、と報じた。両社の対立が解消しないまま12日の日経は、19日に予定していた2次入札の期限を先延ばしする検討に入ったと伝えたばかり。米国時間の14日に、今回の国際仲裁裁判所への提訴となった。日本時間15日にWDの技術者が閉め出されたかどうかは確認できていない。

WDが提訴した国際仲裁裁判所ICC (International Chamber of Commerce)International Court of Arbitrationは、パリに本部を置くが、今回の調停は米カリフォルニア州サンフランシスコで行われるという。

参考資料
1. Western Digital’s SanDisk Subsidiaries Initiate Arbitration with Toshiba in International Chamber of Commerce Related to NAND Flash-Memory Joint Ventures (2017/05/14)
2. WD、東芝の半導体事業売却差し止めを国際仲裁裁判所に申し立て (2017/05/15)、ロイター発、Yahoo Japanニュース

(2017/05/15)

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