東芝の半導体新会社は完全独立が望ましい
東芝経営陣の迷走が続く記事が多い。14日に予定していた四半期の決算報告を1カ月先伸ばしすることを発表したかと思うと、同日の夕方、監査法人を通さない東芝の数字として4~12月期の連結最終損益が4999億円の赤字になったと発表した。また、2016年12月時点で、1912億円の債務超過になったことを明らかにした。
債務超過は、自己資本がマイナスになること。このままではほぼ倒産である。ルネサスは革新機構によって資本注入されたとき、自己資本比率は十数%あった。東芝は、利益の出ている半導体事業を売却することで、自己資本の穴埋めに費やす。当初は20%程度を切り売りすると言われていたが、15日に開いた銀行向けの説明会で、半導体新会社の過半の株式売却を容認し出資提案を改めて募る、と16日の日本経済新聞は報じた。
17日の日本経済新聞は、役員だけではなく、社員の給与カットを2017年度も続ける方針だと伝えた。労働組合も受け入れる公算が強いと報じているが、倒産するかしないかという危機的状況なのだから拒否はありえない。
東芝半導体部門の時価総額は1兆5000億円〜2兆円になるという証券アナリストのコメントを17日の日経は載せている。そもそも東芝本体の赤字や損失を埋めるために半導体を切り離すわけであり、このような消極的なその場しのぎの策に、価値の高い半導体事業がこの先も巻き込まれてよいものだろうか。東芝本体の未来が全く見えない。東芝経営陣はそれでも自己資本さえ補えば倒産は回避できるのではと期待をしているが、その場しのぎの切り売り対応策とみられても仕方がない。それならいっそのこと、半導体を全面的に切り離し、独立に経営してもらう方が半導体事業にとって成長できる余地がある。
日本企業に対して外国の大企業は、半導体部門を完全独立で切り出してきている。Philipsから独立した、半導体デバイスのNXP SemiconductorやリソグラフィのASML、LED照明のOSRAMなどの事業部門は、今や親会社を超える規模になったものの、もう子会社ではない。親会社の株式がゼロだからである。彼らは複数のファンドや銀行などから資金を調達し、自分らの強みと弱みをよく研究し、強みを生かす経営でやってきた。旧Siemensから独立したInfineon Technologiesも親会社の株式はもはやない。Motorolaから独立したON SemiconductorやFreescale Semiconductor(今はNXP)なども独立した時に親会社の株式は10%未満だった。Hewlett-Packard、そしてAgilent Technologiesから独立したAvagoも親会社の株式はなかった。
こういった海外において親会社から独立、あるいは切り離された半導体専門会社は、自ら複数のファンドから資金を調達し、さらに株式上場により一般市場からも資本を集めた。これまで日本の半導体メーカーで親会社の資本を少ない割合にして、完全独立で運営させたところはほとんどいない。坂本幸雄氏がCEOを担った時のエルピーダメモリしかいないだろう。とはいえ、資金を調達する仕事こそ、CEOがやるべき仕事である。
では誰に東芝株を売るか。16日には、みずほ銀行など主力銀行が3月末までに融資を続けることを決めたと日経は報じた。銀行にとっては、東芝本体に出すよりも新半導体会社に出す方が有効なお金の使い方ができる。というのは、東芝本体にしても、これまで通りのその場しのぎの切り売り資金調達なら、未来が見えないどころか、会社更生法を適用する可能性もある。そうなると銀行はこれまで投資金を返せ、と迫ることになる。新半導体会社だと、少なくともNANDフラッシュは5~6年は間違いなく成長を続けるだろうから、投資効果は出てくるはずだ。