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IoTのセキュリティをビジネスにする日立やNEC、TDKはInvensense買収?

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IoT時代に入ると、セキュリティの確保はマストになる。日立はIoT向けセキュリティシステムを製品化すると9日の日本経済新聞が報じた。また、電子部品のTDKがMEMSセンサの中堅、Invensenseを買収するというニュースが11日の日経に報じられた。

IoT時代は、すべてのモノがインターネットにつながるようになるため、サイバー攻撃される可能性が高まる。もはや実験的にIoTでつなげてみた、というような段階は過ぎた。IoTデバイス、ゲートウェイまでの通信経路、ゲートウェイからクラウドまでの通信、クラウド内(データ収集・解析・蓄積)、クラウドから顧客のスマホやタブレットなどの端末までの通信など、危険にさらされる機会が多くなる。

工業用IoTシステムを構築する日立は、工場や鉄道、発電所などにある装置を操作する制御システムの安全性を確保する製品を来年発売するという。制御システムが工場内の各種機器と通信するデータを監視し、サイバー攻撃を早期に察知する。通常見られないアクセスなどの不正な動きを検出し遮断する仕組みだという。いわば企業内サーバーを監視する仕組みと同じだ。この製品は制御システムに組み込むソフトウエアとして販売する。GEも制御システムの安全性を監視する機器を販売している。さらにNECは、プラントや水道、ガスの制御システムのセキュリティレベルを診断し、必要な強化策を助言するサービスを始めたとする。

クルマも無線通信でつながるコネクテッドカー時代を本格的に迎え、イスラエルのKaramba Securityはクルマ向けCarwallと、IoT機器向けIoTwallというセキュリティ製品を日本でも販売を開始した。このソフトウエア製品は、IoTのハード・ソフトを変更せずに、サイバー攻撃の防御を自律的に行う。クルマのECUに組み込むソフトであり、誤検知を回避できるとしている。

家電機器に対してもWi-FiやBluetoothなどでインターネットとつながるIoT機器に対しても、サイバー攻撃から守るセキュリティ機器をトレンドマイクロが販売している、と9日の日経が報じている。IoTデバイスは、ウィルス対策ソフトが標準装備されているパソコンと違うため家庭用機器としてはセキュリティが遅れている。このため乗っ取られる機会が増える。

IoTデバイスではセンサとマイコンとトランシーバがマストの部品であるが、TDKは、Invensenseに買収を提案した、と11日の日経が報じた。Invensenseは加速度センサやジャイロセンサなど慣性センサに強く、TDKはフェライトなどの磁性体を得意としてきた企業だけに磁気センサには定評があるが、慣性センサには弱かった。Invensenseの持つ慣性センサを手に入れれば、IoT端末向けセンサのポートフォリオを強くできる。

TDKは得意の磁性体技術を生かして、MRヘッドからGMRヘッド、そしてTMRヘッドへとHDDの記録密度向上に努めてきた。しかし、そのHDDが金融市場ではもはやSSDやフラッシュストレージに置き換わることがはっきりしてきたため、高感度の磁気センサにTMRを使おうという応用開発を進めている。磁気センサはブラシレスモータやロータリエンコーダなどにも使えるため、TMRの応用拡大を狙っている。ここに慣性センサが手に入ることになる。TDKのセンサ技術にMicronasの半導体制御技術を組み込めば、デジタル出力のスマートセンサができる。

7日の日刊工業新聞は、TDKがセンサ事業に700億円を投資すると報じた。2017年以降にガスセンサの企業も買収するとしている。TDKはスイスの車載の磁気検出用ホールセンサとミクストシグナルメーカー、Micronas Semiconductorを傘下に収めており、磁気センサの製品ポートフォリオを幅広く充実させていく。

最後に中国政府系ファンドの動きで、気になっていた動きについて述べる。中国の投資ファンドである福建芯片投資基金(FGC)はドイツの半導体製造装置メーカー、Aixtronを買収することを断念した。Aixtronはドイツを本社とするMOCVDやALDなどのCVD装置メーカーであるが、米国にも現地法人があり、Aixtronを中国のファンドが買収することに米国政府が反対の意を表明していた。Aixtronの売り上げのうち、米国法人の売り上げは20%を占めるにすぎないが、米国法人を除き、ドイツの法人を買収するとみられていた。しかし、半導体製造装置のように軍事技術にも転用できるハイテク精密機械を中国に譲ることに米国のセキュリティに著しく悪影響を及ぼすとして、米国は強い懸念を示していた。

(2016/12/12)

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