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東芝、営業黒字化、ルネサスは営業黒字続く

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お盆休みが始まった先週、東芝とルネサスエレクトロニクスの第1四半期(2016年度4〜6月期)決算報告があった。東芝のストレージ&デバイスソリューション社は、売上額3716億円、営業利益が241億円と、営業利益率が6.5%と黒字を確保した。ルネサスは売上額1520億円、営業利益186億円、営業利益率12.2%であった。

東芝全体の売上額は1兆2074億円、営業利益は201億円で、営業利益率が1.7%と少なく、ようやく利益を出しているという感じだ。今期に家庭電器事業を中国の美的集団に売却したことによる売却益839億円(税引き前)を含む非継続事業からの利益を計上したことにより、当期純利益が798億円となった。

セグメント別では、半導体ビジネスを担うストレージ&デバイスソリューション部門の営業利益率6.5%がトップで、リテール&プリンティングソリューションが1.4%、インフラシステムソリューションが0.9%だが、エネルギーシステムソリューションとインダストリアルICTソリューション、その他は赤字という構造だ。東芝の黒字は半導体に頼っている現状から見ると、半導体部門を切り離すことはありえなくなっている。

ストレージ&デバイスソリューション部門の内訳では、メモリ部門(NANDフラッシュ)の売上額は前年同期比4%減の1911億円、その営業利益は173億円で、営業利益率は9.1%と健闘している。HDD部門は1033億円の売り上げに対して営業利益は47億円で4.5%の営業利益率である。その他のデバイス部門は、事業撤退の影響で売上額は13%減の772億円だが、営業利益は21億円と何とか黒字に転換したが、営業利益率は2.7%と低い。東芝の半導体をけん引する製品がやはりNANDフラッシュであることに変わりはない。

東芝の発表を受けて、15日の東京株式市場では、株価が前週末比9%高の297.3円まで急伸し、3週間ぶりの高値を付けたと16日の日本経済新聞が報じた。これまでに実施してきた構造改革の結果が得られたということで市場に好感を持たれたといえる。

ルネサスの売り上げは、前年同期比では15.2%減と大きく減少したが、これは熊本地震の震災による影響で130億円の生産減となったことが大きい。生産停止による機会損失が大きく、さらに工場の破壊による修理・修繕、さらには熊本にある川尻工場や後工程の協力工場が震災の影響を受けたという。為替による影響は、50億円減になると見込んでいる。また、営業利益に対する影響もある。震災による利益への影響は70億円減、為替による利益への影響が40億円弱だとしている。震災の影響は第2四半期も続き、第3四半期にはその影響はほとんどなくなるだろうと見ている。

ルネサスはこれまで、2013年度から2015年度まで3年連続営業黒字を続けてきたが、2016年度も第1四半期、黒字スタートを切った。第2四半期も震災の影響と円高が続き、さらに自動車向け半導体が少し下がる見通しで、営業利益率は5%に落ちると見ている。

ルネサスは、これまでリストラを継続してきたが、このほどそれを見直すことについても今回の決算発表で言及した。後工程を受け持つRSPT(ルネサスセミコンダクタパッケージ&テストソリューション)の熊本錦工場は、2015年7月時点で1年後をメドに譲渡または集約する方向で検討するとしていたが、この方針を撤回した。当面、錦工場は継続し、雇用は維持していく。稼働率の数字は明らかにしないが、継続的に高い稼働率で推移していると柴田英利CFO(最高財務責任者)は述べている。

決算報告以外のニュースでは、IoTやAI(人工知能)で国を超えて提携するトピックが出てきている。12日の日経産業新聞によると、大日本印刷がオランダのGemaltoとIoTのセキュリティ分野で提携を発表した。トヨタ自動車は、シリコンバレーにトヨタ・リサーチ・インスティチュート(TRI)を設立し、Stanford大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)と共同研究を進めてきたが、このほどMichigan大学ともAIで連携すると、12日の日経が報じた。Michigan大学はGeneral MotorsやFordの本社に近く、自動車技術を得意としてきた。また、ドイツのERPソフトウエアメーカーのSAPはAppleやSiemensとも提携し、IoTやAIビジネスを推進している、と16日の日経が伝えた。

(2016/08/16)

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