IoTデバイスが設置されビジネスへの着実な展開進む
IoT(Internet of Things)の設置とビジネスに向け、着実な進歩を感じる1週間だった。IoTシステムは、センサからマイコン、トランシーバ、産業機械への設置による予兆保全、データ管理・解析、データのアプリなど幅広い技術が求められるが、先週のニュースの中にそれらが散見する。また、マイクロ波用化合物半導体の生産停止をルネサスが発表したが、その判断を支持するニュースも出ている。
表面実装部品のマウンタ大手のパナソニックがプリント回路基板向けの実装機(マウンタ)にIoTを搭載、マウンタの不具合が発生する予兆を捉え、警告を発するシステムを開発した、と8月4日の日刊工業新聞が報じた。同紙は、「実装機ラインの光学検査装置から電子部品の装着位置データのフィードバックを取得し、実装位置を補正する機能を応用して開発した。部品を装着した位置の違いやズレを検査装置で把握して傾向などを分析。部品供給装置(フィーダ)や吸着ノズルなど実装機の機能に穴詰まりなどの不具合が発生する予兆を検出する」と報じている。ここではIoTシステムの初期段階で、予兆を検出すると警告を発し、その警告を人間が知り、修理・交換などの作業を行う。
三菱総合研究所は、日立製作所、NTTデータを共同で、IoTを利用した水道管の保守点検や浄水場設備の不具合の予兆を検出し、効率的に運用する実証プロジェクトを始めた。経済産業省の2016年度事業を受託したプロジェクトで、調査や事業のまとめを三菱総研が行い、実証実験を日立、NTTデータが担う。
日立はまた、IoTデータを保存するストレージを仮想化するNASモジュールを発売した。一定の大きさに分割して管理するブロックデータと、ファイルとして管理するそのまま利用できる状態で管理するファイルデータを、1台のストレージで管理するための部品である。従来の企業内ストレージは、それぞれのデータをそれぞれのストレージで管理していたが、NANSモジュールを使えば、ストレージを仮想化して1台で管理できるという。
IoTビジネスへのシフトはDRAMビジネスでも始まっている。台湾のDRAMビジネスはもはや瀬戸際に至っていると4日の日本経済新聞が報じた。南亜科技の業績が悪化しており、Micron Technologyとの協業を探るが、DRAMビジネスは大手3社でほぼ賄われている。このためDRAMビジネスからIoT用半導体ビジネスへの転換を図っていくとしている。PC市場はまだ立ち上がらず、8日の日経産業新聞はWindows 10のOSへの無償アップグレードサービスを行ってきたが、わずかに2割強しか転換しなかったと報じている。
IoTの民生市場への応用として、スマートホームがある。ロームは、スマートホーム用の通信規格Wi-SUNの通信モジュールの消費電力を2割削減した製品を発表した。Wi-SUNは東京電力が採用することを決めた規格で、ロームはそのモジュールに力を入れてきたが、スマートホームがまだそれほど大きな市場になっていないようだ。TDKはIoTデバイスのセンサ部分を強化するため、フランスのMEMSメーカー、Tronics Microsystems社を買収すると発表、慣性センサを手に入れる。TDKの持つ磁気センサと組み合わせ、スマホやドローン、ロボット、クルマなどのセンサモジュールのビジネスを充実させる。
ルネサスエレクトロニクスは、化合物半導体事業の内、2年後をめどにマイクロ波半導体の生産を停止すると発表した。マイクロ波半導体は、化合物から安価なシリコンへと移行しており、化合物半導体は苦戦している。ただし、化合物半導体の内、光デバイスはシリコンでは実現できないため、化合物半導体を光用途に絞る。マイクロ波半導体は、スマートフォンやワイヤレス機器に使われているが、安価なシリコンやSiGeでRF半導体を製品化できるようになったため、化合物半導体のマイクロ波用途は縮小している。またスマホの通信トラフィックが高まると、LTEやLTE-Aの高速無線通信だけではなく、光ファイバなども幹線に活用せざるを得ないため、光ファイバを生産している古河電気工業は、2016年4~6月期に前年同期の赤字から23億円の黒字に転換した。北米を中心に伸びたとしている。
マイクロ波技術は化合物半導体では実現できないような高出力化の用途はある。ここではレーダーから医療機器へ応用が広がっている。大出力のマイクロ波発生器として、マグネトロンが使われている。新日本無線は、医療の放射線治療機や非破壊内部検査向けのX線発生用マグネトロンの製品シリーズを開発した。3GHzで最大出力は3.2MWの製品から、9.3GHzで最大出力2MWまでの製品をそれぞれ4種類ずつ、合計8種類をそろえた。