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AIがクルマ、顔認証、金融へと着実に広がってきた

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AI(人工知能)がさまざまな分野に広がりを見せている。クルマ、金融、製薬開発、人認証など、さまざまな分野に応用できることがはっきりしてきた。人工知能の「学習」作業を実現するカギはもちろん半導体チップにある。先週、いくつかの分野に関するAI応用が見えてきた。

クルマでは、ソフトバンクとホンダがクルマにAIを活かして、ドライバーなどの人間とのコミュニケーションを豊かにすることを目的とした共同研究を始めると7月22日の日本経済新聞が報じた。日経によると、「人の感情を読み取るAIを搭載し、カメラやセンサーのデータのほか、運転手との会話から嗜好や喜怒哀楽を学ぶ。車を単なる移動の道具ではなく、AIで感情を持って対話をする家族のような新しい価値づくりをめざすという」。

これまでクルマでのAIの応用では、人やクルマなどの物体認識にAIを適用するという例が多かった。自動運転につながる技術として、クルマが物体を認識して、スピードを落とす、停まる、といった動作につなげ、安全を確保するために使う例が多かった。今回のソフトバンクとホンダの提携は、ドライバーの感情を読み取り、好みの音楽を流すというデモ動画を見せたという。AIでクルマと人間との対話を楽しむことになりそうだ。

トヨタはすでにAIの学習に必要なディープラーニングのアルゴリズム開発に注力する東大発ベンチャーのプリファード・ネットワークス社に出資しており、シリコンバレーにもAIの開発研究所を開設している。

国内の乗用車7社の研究開発費が過去最高の2兆8000億円になる見通しだと、18日の日経が報じた。中でもホンダは、今秋に自動運転に必要な人工知能(AI)研究の拠点を東京都心に設け、外部の研究機関との連携を拡大するという。

NECは、AI関連の製品群を「NEC the WISE」と名付けてブランド展開すると発表した。IBMはすでにワトソンと名付けたAIコンピュータをブランド化しており、富士通も「Zinrai」と名付けたAIを展開し始めた。NECは、AI関連事業で、2016~2020年度に累計2500億円の売り上げを目指すとしている。NECは、顔認証などにAIを使った複合的な監視システムを数年以内に100都市に導入したいという。また、AIを活用したセキュリティの新システムも年度内に発売する。

IBMは日本国内にもデータセンターにAI(IBMはAIと言わず、コグニティブコンピューティングと呼ぶ)用のサーバーを置くとしている。これまでは米国のデータセンター内のサーバーを通して日本語版ワトソンのサービスを行ってきた。米国を経由すると、応答に時間がかかり、スムーズなやり取りができないため、日本の顧客には日本のサーバーで日本語対応していく。IBMはワトソンをすでに製薬会社の新薬開発に実績を持ち、これからは金融をはじめ、さまざまな企業活動に応用するための活動を行っている。

金融の大和証券グループ本社とデジタルガレージは、AI分野の専門ファンドを立ち上げると22日の日経が報じた。両社の折半出資で運営会社をつくり、総投資額100億〜200億円を目指して今秋にも運用を始める。有望な技術を持つベンチャー企業を支援し、将来はノウハウを証券業務などに取り込むとしている。AIを使った株式取引はすでに米国を中心に実績があり、国内でも始まっている。このファンドの投資先は、AIの他、VR、AR、情報セキュリティ、バイオテクノロジーだとしている。

AI利用の有力な応用の一つがIoTシステムにおけるビッグデータ解析だ。今のところ、IoTシステムでは、端末のトピックスが出ているだけに留まっているが、今後はAIの活用が生きる分野であることは間違いない。IoTデバイスとしては、ソフトバンクがイスラエルのAltair、太陽誘電と共同でIoT向けのLTEモジュールを開発したと21日の日刊工業新聞が伝えた。これはLTEネットワークを利用しながらも帯域を狭くしてデータレートを数十kbps程度に下げると共に消費電力の削減を狙ったモジュールである。3GPPが定めた標準規格Release 13に対応する。現在は、このリリース13に加え、NB(Narrow Band)-IoTなどLTEや将来の5Gモバイルネットワーク上でIoTデバイスを通信するための規格争いが激しくなっている。

IoT端末に関してはTDKとQualcommの合弁会社、RF360 Holdings Singaporeが動き出した。21日の日経産業新聞はこの合弁会社を報じている。この合弁会社は、ワイヤレス通信デバイスを作る企業で、TDKのプリント回路基板にICチップを埋め込む実装技術がApple Watchに使われ評判を呼び、Qualcommが接近してきたようだ。TDKはコア技術としてフェライト磁性体部品がある。RF回路のフィルタには欠かせない。QualcommはベースバンドをコアとしRFで差別化するためにTDKの技術を使う。TDKにとってもQualcommと組むことはワイヤレス市場を取りやすくなる。

(2016/07/25)

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