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ポストスマホを探りつつ、スマホの成長も続く

AppleとSamsungのスマートフォンの売り上げがこの第1四半期に減少し、2016年全体でもその出荷台数が減少するという見通しを5月10日の日本経済新聞が報じている。世界のスマホ市場全体の伸び率だけで見ると飽和傾向に見えるが、出荷台数が減るという見通しはまだない。IoT時代でもスマホはモニターとして欠かせないからだ。IoTへの動きも活発だ。

10日の日経は、Appleの出荷台数が2015年に2億3000万台だったのに対して、2016年には2億台強と昨年よりも下回ると見ている。また、Samsungは2015年の出荷台数3億2000万台には達しない見通しだという。両社の市場シェアは2015年の47%から34%に低下すると見ている。ただしこの2社のシェア低下は、スマホ全体の市場が縮む訳ではない。他のスマホメーカーが出荷台数をもっと増やすためだ。やはり7〜8%で成長するとしている。台数にすると1億台の増加ということになる。シェアを拡大してくるのは中国勢であり、華為技術はじめ中国勢は15%増と増やしてくる見込みだ。

パソコン生産からモバイル生産へとシフトしてきた台湾の主要IT企業19社の合計売上額が6カ月連続前年割れという状況が続いている、と12日の日経が報じた。このため台湾のIT産業は、ウェアラブルやVR(仮想現実)、IoT、カーエレクトロニクスなどへと手を広げている。

中国メーカーのスマホが成長すると見て、日本の部品メーカーは中国に拠点を築く計画を立てている。その一つであるジャパンディスプレイ(JDI)は、広東省深センに設計開発拠点を開設、地場のスマホメーカーへの距離を縮める。さらに、村田製作所、アルプス電気、京セラなども中国勢への営業活動を強化する、と10日の日経は伝えている。

スマホの伸びが鈍化するといって成長が止まる訳ではない。これまでの何%成長という等比級数的な伸びから、数千万台〜1億台増加という等差級数的な伸びに変わるだけである。AppleはiPhone 8と見られる将来のiPhoneに有機ELを使うと見られ、JDIは有機ELの生産に500億円を投資する、と12日の日経は報じた。有機ELの特長は何といってもフレキシブルに曲げられること。フレキシブルプリント回路基板などに回路とディスプレイを形成し、プリンテッドエレクトロニクスとして曲げられるスマホが登場する可能性は十分ある。

味の素がシリコンバレーに情報収集の拠点を設けたというニュースが10日の日経産業新聞に掲載されたが、これはフレキシブル基板へのICへ部品を埋め込める技術を、Appleをはじめとするフレキシブルプリンテッドエレクトロニクスに関心を持つ企業を狙って、市場を調査するためとみてよいだろう。味の素が開発したフレキシブルなビルドアップ基板を使い、多層配線を実現することが可能になる。

フレキシブルエレクトロニクスの本命はウェアラブルだが、商品レベルのウェアラブルデバイスはまだフレキシブルではない。小型・薄型のクレジットカードに実装するICチップを大日本印刷が開発し、また6cm×4cm×1cm(厚さ)という小型のウェアラブル端末を認知症の高齢者に向けIDYが開発、8月には発売する。こういったニュースも登場した。

大日本印刷が開発したこのICチップでは、IoTのセキュリティを高めており、機器の認証・確認をするほか、暗号化も施しており、インターネットクラウドでの環境を守る。通信端末を作るアットマークテクノと、携帯電話回線を卸売りするコネクシオとコラボして、このICチップを搭載したIoT端末を作る計画だ。

通信機器メーカーのIDY(本社東京)が開発したウェアラブル端末は、Bluetooth LEとGPS(global Positioning System)の二つの通信プロトコルを使う。高齢者が介護施設などにいるときはBluetooth LEを使い、施設の外に出た時にはGPSが追跡する。このことで消費電力の大きなGPSを使いながらも端末の消費電力を減らす。

ウェアラブルやIoT端末を利用するIoTビジネスに日立製作所は、2018年度までの3年間に3000億円を投じる、と11日の日経が報じた。IoT端末からのデータを収集・解析するソフトやAIなどに投資する。予防保全や生産管理用ソフトやサービスも提供する計画になっている。さらに日立は世界中に広がる日立のエンジニアのリソースを利用する組織、「日立インサイトグループ」を立ち上げた。同時に、IoT関連のソフトやサービスで構成するプラットフォーム「ルマーダ」も立ち上げ、IoTを利用する医療機関や鉄道・電力会社などの顧客にIoTサービスを提供する。

半導体パッケージをフリップチップで実装するための金の低温形成技術を田中貴金属工業が開発した。IoT端末をはじめ小型・薄型化を狙い、ワイヤボンディングを使わず直接金端子と接続する。金95%を溶剤5%に溶かし、200℃に加熱すると端子同士を接続できるという。ハンダの溶融温度よりも低く、しかも基板に加重はかからない。

(2016/05/16)
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