熊本地震第2弾、BCPに積極的なルネサスを評価、TELも続く
熊本地震における早期の産業復興は、個人の収入を確保し、経済を活性化し、地元社会の活力を伸ばす上で欠かせない。熊本に工場のあるルネサスと東京エレクトロンの連日のニュースリリースは、地震による生産活動の状況をオープンにしており、25日の日本経済新聞では、その姿勢に対して事業継続推進機構のポジティブなコメントを掲載している。
25日の日経は、「情報の受け手となるのは取引先や顧客。彼らが求めているのは『取引を続けられるのか』や『製品はいつごろから供給されるのか』といった疑問に答えられる情報だ」として、「半導体大手のルネサスエレクトロニクスはそうしたニーズに応えようとしていた」という事業継続推進機構のコメントを載せている。ルネサスは東日本大震災を経験し、BCP(事業継続計画)の策定を進め、さらに顧客第一の先を行き、顧客の欲しいものを提案するといったソリューションプロバイダの道を歩んでいる。東日本大震災の経験を同社執行役員常務の大村隆司氏は「この時ほど、顧客の支援のありがたさ、それに応えなければならないサプライヤのミッションを痛感した時はなかった」とセミコンポータルとのインタビューで述べている。
最新の4月20日のニュースリリースによれば、熊本の川尻工場の生産再開を22日から一部工程において始めるとしている。この間、16日からクリーンルーム内の再調査を行い検証してきた。この熊本地震では、震度7という巨大な前震と、同じ規模の本震が1日おいてやってきた。ルネサスはそれでも同社の「BCPに従い、(今後の)余震や資材調達などの状況に大きな変化がないことを前提として、他工程の生産を段階的に開始し、早期の震災前の生産能力へ復帰させることを目指します」と述べている。
同時に、「4月16日の本震により、一部の製造委託先において被害の拡大が確認されました。現在、サプライヤ様、協力会社さまと協力して復旧作業を急いでいますが、代替生産の検討も開始し、サプライチェーン全体の早期普及を目指します」、とサプライチェーンについても協力していく旨を述べている。
製造装置大手の東京エレクトロンも被害状況を逐一レポートしている点でルネサスに引けをとらない。最新の4月20日午後5時現在のニュースリリースでは、熊本の合志地区にある「合志事業所につきまして、専門家による点検を実施した結果、建屋および生産設備への大きな被害はありませんでした。なお、水道、電気、ガスなどのインフラにつきましては、一部確認中であるものの、明日以降の社員出社、操業再開に向けて支障はない見込みです」と述べている。そして、生産設備などの状況を踏まえ、25日から段階的に生産再開が可能と見込んでいるという。4月の状況が見えないため、2016年3月期の決算発表において、2017年3月期の連結業績予想については公表を延期するとしている。
三菱電機も熊本の合志地区にパワー半導体の工場を持つが、4月21日に第2報としてニュースリリースでその状況について発信している。パワーデバイス製作所では、クリーンルームにおいて4月25日からの週の半ばの復旧完了を目指して必要な修復作業を行っており、生産設備に関しても立ち上げ調整作業を開始した、と述べている。一部の工程については代替生産も実施しているという。結論として、5月9日に一部生産再開を目指すとしている。
三菱電機の子会社であるメルコ・ディスプレイ・テクノロジーは熊本県の泗水地区にあるが、クリーンルームの修復作業を行っており、生産設備は致命的な影響は見出されていないとしている。引き続き詳細を確認しているという。
以上の企業の状況公開に対して、ソニーは熊本工場の状況について1週間前のニュースリリースから更新していない。ただ、2015年度の決算発表を4月28日に予定しているが、その際2016年度の見通しについては公表を5月に延期すると発表している。
熊本震災以外のニュースでは、Intelは2016年第1四半期の業績が増収増益だったのにもかかわらず、2017年半ばまでに全社員の11%に当たる1万2000名のリストラを発表した。増収とはいえ、売り上げの6割を占めるパソコン事業向けCPUからの脱却を狙ったもの。IntelはIoT、組み込みシステム、モバイル事業へとシフトしており、脱PCは利益の出ているうちに手を打とうとしている。
大地震の影に隠れてしまったが、ルネサスの新社長が決まった。正式には6月の株主総会を経て代表取締役社長兼CEOになるのは、呉文精氏。同氏は、長い間、日本興業銀行に在籍、その後GEキャピタル・ジャパン3年、GEフリートサービスを5年経て、カルソニクカンセイ5年間社長兼CEOを務めた。その後日本電産の副社長を2年経た後、ルネサスに入社した。つまり、ずっと財務畑を歩き、クルマ用部品メーカーを5年経ただけでルネサスのトップになる。クルマの専門家というよりも財務の専門家といえるだろう。懸案となっている産業革新機構の持ち株売却戦略に期待するのではないだろうか。