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ルネサス好調、5四半期連続、営業利益率2桁%達成

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先週、2015年度第3四半期(10〜12月期)におけるルネサスエレクトロニクスの決算発表があった。同社はリストラが一段落し、5四半期連続の2桁%の営業利益率を確保し、経常利益237億円を確保した。半導体製造装置への投資も海外を中心に始まり、荏原製作所は工場を拡張、堀場製作所も中期計画で2000億円を目指す。

ルネサスの第3四半期における売上額は1919億円、営業利益は295億円となり、営業利益率は15.3%となった。売上額は前年同期比14.1%減となったが、これは車載向け売り上げが3.9%減少し、汎用向け売り上げが13.9%減少したことに加え、事業譲渡したSynaptics社の欧州子会社の販売分を前年まで肩代わりしていた分がなくなったためであるとルネサスは説明する。車載向け製品の売り上げが低下したのは、車載情報系製品の売り上げ減少によるという。

車載向けの製品がさほど伸びていないのは、「3.11の東日本大震災後のデザインインの注文が取れなかったことがボディブローのように効いているためだ」と同社取締役執行役員兼CFOの柴田英利氏は言う。しかし「足元のデザインインは好調で、マイコンやシステムLSI(SoC)の受注が取れてきたので、3年後を見てほしい。最近は大きな商談がとれているのでそれらを積み上げていくと、ルネサスの将来を楽観している」と柴田氏は自信を見せている。

ここ数年、ルネサスは顧客メーカー向けの開発者会議DevConを国内外で展開しているが、こういった攻めの姿勢が新規顧客の獲得につながっているようだ。同社自動車事業総責任者で執行役員常務の大村隆司氏は「最近では欧米だけではなく、中国のOEM(クルマメーカー)からもマイコンはルネサスを使えという声があった」と筆者に語っている。ただし、自動車事業は受注して即、売り上げに貢献することはなく、3〜4年かかるのが一般的であるため、結果はこれからだろう。

ルネサスの問題は資本構成。現在69%を出資している産業革新機構が同社の株式の売却を検討しているが、この株式を一般市場に売り出すと、中国をはじめ予期しないファンドからの買収につながる恐れがある。柴田氏は決算会見で「現在のいびつな資本構成を早期に消したい」と述べているが、株主の検討次第でルネサスが大きく変わる恐れがあるため慎重に検討するだろう。

半導体ビジネスは、主に中国経済の軟調によりスマートフォンをはじめ、テレビや民生品が軟調気味になっているが、世界的には一時的な落ち込みの後は必ず伸びている。数年先のビジネスを見込み、半導体製造装置を強化する動きも先週見られた。真空ドライポンプやCMP(Chemical Mechanical Polish)研磨装置の大手である荏原製作所は、九州の熊本工場の増強を決めた。熊本事業所にある既存の工場設備とほぼ同等の規模の新工場を建設するもの。投資額は68億円を予定している。新工場は、CMP装置をはじめ、各種半導体製造装置の生産に対する、柔軟性の高い生産設備となる、と荏原のニュースリリースは述べている。

堀場製作所も2015年度12月期の連結決算で売り上げが過去最高の1708億円、営業利益は193億円(利益率11.3%)と好調だった。特に半導体と自動車が好調で、売上額はそれぞれ前年度比22%増の353億円、16.7%増の642億円となった。特に半導体製造装置向けのマスフローコントローラが絶好調で新製品が奏功し、市場シェアを55%まで伸ばした。もともとマスフローコントローラは堀場の得意な製品だが、2009年のシェア41%から2014年の52%へと伸ばし、今回55%に達した。同社は中期計画も発表し、全社で2000億円の目標を設定した。

最後に、先週のニュースの中で、米国の研究チームが重力波を観測したと発表したことに触れる。重力波という空間を歪める波の存在をアインシュタインが一般相対性理論で予言していたが、予言から100年後に初めて観測した。米国のワシントン州とルイジアナ州という遠く離れた地点でそれぞれLIGOという観測装置を置き、重力波をレーザー光の波の揺らぎとして観測したもの。その測定原理は次のようだ。レーザー光を反射ミラーで90度に分け、それぞれ4km離れた反射板で反射させた戻り光の正弦波と180度ずれた正弦波を重ねると通常は位相を打ち消し合って何も検出されない。しかし空間が歪み位相がずれるとすれば、差分の光が検出される。極めて微小な空間の歪みの波を2カ所で検出、重力波と断定したらしい。重力波の周波数は100Hz程度だという。

こういったノイズに埋もれた信号を検出する場合には、DSPやFPGAでフーリエ変換する信号強調技術が欠かせない。さらに今回のような差動回路を利用する。半導体チップは、こういった分野でも威力を発揮している。

(2016/02/15)

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