セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

半導体ユーザー社長の年頭挨拶

|

明けましておめでとうございます。今年もセミコンポータルのご愛読をよろしくお願いします。
年が明け、社長の年頭挨拶が発表されている。日本IBM、日立製作所、KDDIなど半導体メーカーではないが、半導体を使うユーザー企業やOEMトップの挨拶なので、いくつか紹介する。

日本IBMのポール与那嶺代表取締役社長は、ウーバライゼーション(Uberization)という言葉を用いて、既存市場のプレイヤーを脅かすIT系新規勢力が登場しやすい環境について述べている。ウーバライゼーションとは、既存のタクシー業界に参入してきたウーバー(Uber)社から作られた造語である。ウーバー社はIT系アプリのソフトベンダーにすぎないのであるが、スマートフォンにインストールされたアプリを通してクルマ(タクシー)を呼ぶことができる。米国ではすでに広く利用されており、料金はタクシーと同様、距離と時間と車種に応じて、決まっているが、タクシーよりも安いクルマが多い。利用者は、アプリを使い、クルマに来てほしい場所をスマホ画面の地図にピンを立てるだけ。利用者とドライバーはそれぞれアプリを通して登録しておく。

ウーバーはアプリケーションソフト企業なのにもかかわらず、時価総額は全ての米レンタカー会社の時価総額合計よりも大きいという。まだ株式上場していないため、株価は確定ではないが、投資家の期待がいかに大きいかを物語っている。

IBMはウーバライゼーションに対して、顧客に新しい価値を提供し支援するため、コブニティブ・ビジネスを提案している。コグニティブ・コンピュータは、インターネットを通じて日々生み出される膨大なデータを理解し、学習し、目的とする推論を行うシステムである。いわばIoTシステムのクラウド側でビッグデータの理解と、顧客の望む目的を実現する。このために「ワトソン」をフル活用し、昨年発表したさまざまな企業との提携を今年は実践していくとしている。ソフトバンクや日本郵政グループ、Apple、Twitter、Facebook、Weather Companyといった大手と提携した。

日立製作所の東原敏昭執行役社長兼COOは、2016年を2015中期経営計画の総仕上げの年と位置付けている。世界中の都市化への対応や高効率エネルギーのポートフォリオなどを実現する日立の社会イノベーション事業に世界中が大きな期待を持っているという。顧客と同じ視点で課題やビジョンを共有し、ソリューションを作り上げる「協創」型ビジネスモデルを加速していくと述べている。それを通じて、顧客のQuality of Lifeの向上に貢献するとしている。

通信オペレータの一つKDDIの田中孝司代表取締役社長は、モバイル通信産業が大きく変わっている現状を捉え、それに対する会社と個人の変化を期待している。モバイル市場は同質化とMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体サービス事業者)の拡大が進み、スマホの鈍化が続いている。通信各社は、新たな収益源を求めて、上位レイヤー、O2O(Online to offline)ビジネス、ポイントの活用、他業種との連携など競合相手が通信オペレータだけではない時代に入ったと認識している。

このような市場環境に対して、これまでのような通信会社KDDIから、国内外を問わず事業領域の垣根を超えてあらゆるビジネスチャンスにチャレンジしていく、と述べている。このために、自ら変革していく強い「思い」、個人個人の成長、スピードアップという三つの点を社員に期待している。

半導体ユーザーのこういった新しい変革を、半導体メーカーも手をこまねいていられない。ユーザーに価値をもたらすソリューションを半導体メーカーがこれらのユーザーあるいはOEMに対して提供することで、成長を図る必要があろう。

(2016/01/05)

月別アーカイブ