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ソニーが正社員の削減にまで言及、合計1万6000人を削減する計画を発表

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先週最大のトピックスはソニーの1万6000人の人員削減計画だろう。これまでのエレクトロニクス企業は正社員の人員削減には触れてこなかった。季節労働者や派遣労働者など日本では切りやすいところから首を切り始めているが、正社員にまで人員削減を計画したのは最近ではこれが初めてといえる。ソニーは8000人の契約社員と8000人の正社員を削減するという計画を発表した。

ハワード・ストリンガー氏がソニーのCEOに就任するという発表をソニーが行った時、私はたまたま米国に出張に来ていた。その時読んだウォールストリートジャーナルなどは、ソニーという日本企業のトップになるのにストリンガー社長はなぜ日本へ行かないのだろうか、日本の本社にいない社長(CEO)がソニーをうまく改革できるはずがない、とさんざん酷評した。ところが日本のメディアは外人が社長になり、日産のゴーン社長と同様の改革を期待していた。

外人社長であれば日本企業を改革できるというのは大きな間違いだ。カルロス・ゴーン氏だから日産は回復できたのであり、同じ外人社長の三菱自動車、ボーダフォンはうまくいかなかった。ソニーとて同じこと。

特に昨今、ソニーの失敗はひとえにモノづくりから始まった会社なのにモノづくりを重視しなくなった所にあると思う。液晶テレビ「ブラビア」は一時、市場シェアのトップに立つほど大いに売れたのになぜテレビ部門が赤字なのか。利益を生めないのか。自らモノづくりを軽視して、利益を生む生産方法、設計方法をとりながら感動させる新しい商品を生む技術開発をトップが最重要視しなかったのではないだろうか。

最近の米国のビッグスリーにしても経営責任を追及せず、連邦政府保証の融資を受けるとは、自らの競争力の強化を捨てていることに他ならない。どんなに大きな赤字を出そうが、自分の報酬・給与だけは何億円になろうといただくという姿勢そのものに誰もが疑問を抱くのは当たり前だろう。

アップル社のスティーブ・ジョブス氏は社長(CEO)になったとき、給料はゼロでいいから、業績に連動したボーナス分だけもらう、という方式をとった。自らの責任を明確にしたわけだ。もちろんアップルはiPodやiPhoneなどで大成功したためジョブス氏には億単位の収入が入った。業績が伸びた時だけボーナスをたっぷりもらうという姿勢は経営者の覚悟をよく表している。業績が低迷するとボーナスは出ないからだ。

同じようにゴーン社長は、日産のリバイバルプランを発表して、実現できなければ1年で社長を辞めると言いきった。日本経済新聞のコラム「私の履歴書」に彼の上司であったシュバイツァー・ルノー会長は、そんなことを言いきって大丈夫かと心配したという逸話が載っている。ゴーン社長は一つの工場を閉鎖したときに他の工場への転勤、希望などを聞いた上で、辞めていった人たちが全従業員10万人のうち7000人いたという。つまり、首を切るつもりで工場を閉鎖したわけではなかった。日産自動車はわずか1年半で2兆円もの借金を返し、復活を遂げた。首を切ることは経費を削減するだけであり、借金を返すことにはならない。もちろん、復活のために日産は政府からお金を借りはしない。ここに競争力の源泉がある。

働く人の首を簡単に切るような会社だと、残された社員は果たして社長についていくだろうか。明日は我が身か、と誰もが疑心暗鬼になり、職探しに奔走する。社員のモラルはガクっと低下する。となると会社の業績は間違いなくさらに低下する。負のスパイラルに陥ってしまう。だから社員の首を簡単に切ってはいけないのである。

大事なことは社員の心を一つにして、正のスパイラル、すなわち相乗効果(エレクトロニクス用語でいえば発振・増幅作用)を起こし、業績を向上させることであり、そのためには経営者が覚悟する必要がある。これが今最も求められていることである。経営者が自らの首を賭けてビジネスを引っ張れば、実は社員はみんな、ついていく。ゴーン氏が行ったことは、社員の心を一つにまとめたことである。

ソニーがモノづくりの原点に戻り、革新的な商品を作るための努力に向かえるような仕組みを経営者が作りなおせば、再び感動できる商品を開発し、利益も生める企業として立ち直れると信じる。ソニーが、ハンディカムのような携帯ビデオ機器、リチウムイオン2次電池、CD-ROM、CCDイメージセンサー、MDディスク、デジタルカメラ、ウォークマンなどの商品を発明した企業であることを私は決して忘れない。

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