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IoTシステムで外資との提携相次ぐ

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IoT(Internet of Things)システムは、センサ端末(IoT端末)からゲートウェイ、クラウド、データセンター、ビッグデータ解析、改良点の提示サービス、という一連のシステムを構成する。1社で全てを賄うことは不可能に近い。IoTは手段であり目的ではない。顧客のサービスや生産性などを向上させることが目的。このための提携が先週、相次いだ。

ルネサスエレクトロニクスは、米国の最大手通信オペレータのVerizon Communicationsと提携する、と11月8日の日本経済新聞が報じた。Verizonの持つモバイル通信ネットワークを使い、IoTサービスを手掛ける顧客に対して、半導体チップと制御用ソフトウエアをパッケージで提供する。家電メーカーなどの顧客企業は、ルネサスに依頼することで効率よく開発を進めることができるという。ルネサスは、11月9日10時時点でまだこのリリースを正式に流していないため、この記事だけではルネサスの役割が今一つはっきりしない。つまり、顧客はOEMなのか、サービス業なのか、あるいは農業従事者なのか、はっきりしていない。

東芝は、エレベータや業務用エアコンなど東芝製のビル設備を対象に米GE(General Electric)と提携して試験プロジェクトを始めると、5日の日経産業新聞が報じた。GEが提唱しているIndustrial Internetでは、IoT端末を大きな設備に多数設置し、そこからのデータを収集・管理・解析する。IoTによって不具合箇所をいち早く見つけ故障する前にそこの部品を交換して不具合を取り除くことで、設備の稼働率や生産性を高めるものである。データを収集・管理・解析するためのソフトウエアツールPredixをGEは開発しているが、今回、東芝はこのソフトの活用を検討するとしている。

Intelは従来、ゲートウェイよりも上のレイヤーのIoTシステムを狙うと言っていたが、どうやらIoT端末もターゲットに入ってきた。2014年にはAtomプロセッサよりも消費電力の低いEdisonと名付けたマイコンを出してきており、2015年1月にはさらに小型のCurieマイコンを出してきた。どちらもBluetoothとWi-Fi機能を積んでおり、端末狙いだといえる。しかも二つともIntelが小型・低消費電力・遅い動作速度というIoT端末の特長を持つQuark System on a Chipと呼ぶアーキテクチャをベースにしている。

Curieは、6軸加速度センサとDSPを使ったセンサハブなどを集積している。加速度センサは、走る、泳ぐ、自転車に乗るなどの動きをウエアラブルで検知する。センサハブはさまざまなセンサからのデータを集め、外部のネットワークへ送り出す。Information Weekによると(参考資料1)、Intelは、Quark SE System on a Chipを2016年内にリリースするとしており、ウエアラブル端末向けのこれらのチップを拡充していることから、IoT端末狙いは明らかであろう。

Intelは、クラウドサービスソフトウエアで定評のあるドイツSAP社と提携を結んだ。SAPはデータ収集・転送・解析ツールIntel IoT Platformを、SAP社のHANA Cloud Platformで使えるように組み込む。そうすると、HANAはさまざまなIoT端末からのデータを受け取り、解析できるようになる。

NECは、コラボせず、独自に実験する道を選んだ。無線通信機器や放送機器などを製造する子会社のNECネットワークプロダクツの工場で、IoTを活用して生産性を上げる実証実験を始めたとNECは発表した。複数の工場での各生産ラインにおける不良率や稼働状況、作業員の作業内容、使用電力量、設備の修理内容や状態、治具の使用内容などについての情報を収集・解析する。リアルタイムにデータの見える化を図り、生産効率を従来比30%上げていく。製造するプリント回路基板の側面の画像を「物体指紋」とすることで、バーコードやRFIDタグの要らないトレーサビリティを実現する。作業員の作業内容ではカメラ映像を元に、不良発生リスクをリアルタイムに検出するため、ディープラーニングを採り入れたデータ解析ソフトウエア「NEC Advanced Analytics – RAPID機械学習」を使うとしている。


参考資料
1. Intel Primes The Internet of Things Pump、Information Week (2015/11/04)

(2015/11/09)

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