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各社の決算報告、半導体が好調、東芝の構造改革も正式発表

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先週は各社から2015年7〜9月期の決算報告が相次ぐ中、東芝が半導体事業の構造改革計画を正式発表した。これまで新聞で報じられていた内容とほぼ同じである。各社の決算では、ソニー、シャープ共、民生は調子よくないが、半導体が好調に推移している。その恩恵を受けシリコンウェーハの信越化学工業、製造装置の東京エレクトロンなどが好業績だった。

まず東芝は、システムLSIとディスクリートの事業について、大分工場にメスを入れる。300mmウェーハラインに関係する資産をソニーに譲渡すると共に、200mmと150mmラインにおいて大分工場と岩手東芝エレクトロニクスを統合することを決めた。CMOSイメージセンサを生産していた300mmラインでは、東芝とその関係会社の従業員約1100名をソニーグループに転籍させる。2014年度におけるCMOSイメージセンサ事業の売り上げは300億円程度だった。CMOSセンサ以外のシステムLSI事業として、車載用を含むアナログICやモータドライバを含み、これらは200mmおよび150mmで生産している。大分と岩芝との統合新会社はアナログ半導体を中心とし、ファウンドリ需要も取り込むとしている(参考資料12)。

さらに加賀東芝エレクトロニクスで量産を見込んでいた白色LED事業を終息する。これに伴う費用は200億円を見込んでいる。ディスクリート事業ではパワー半導体や小信号トランジスタに集中させる。白色LEDは、米国のベンチャーBridgelux社のGaN-on-Si技術をライセンス購入し、量産化を進めていたが、量産立ち上がりがずっと遅れてきていた。最近、このBridgeluxを中国ファンドの紫光集団が買収提案をしており、東芝の立場は微妙であった。もし、買収してしまうと、中国ファンドは東芝の量産ラインを見学することは間違いなく、生産技術が中国に漏れる恐れはあった。

各社の決算報告では、例えばソニーの7〜9月期の連結決算では、売上額が1兆8927億円、営業利益は880億円という結果であった。前年同期が1兆9015億円に対して856億円の赤字であったから、売り上げを減らしながらもリストラを行うことで営業利益を何とか確保した格好だ。この内、事業部門ではスマートフォンや携帯電話のモバイルコミュニケーションと映画事業は、それぞれ売上額の7.4%分、12.2%分という大幅な赤字。これに対して好調な事業は、営業利益順に、金融の412億円(売上額2107億円)、半導体を含むデバイス327億円(同2581億円)、イメージングプロダクツ&ソリューション259億円(同1860億円)、ゲーム&ネットワークサービス239億円(同3607億円)、その他は200億円未満、となっている。エレクトロニクス本業のモノづくりでは半導体の営業利益が最も大きい。デバイスの売り上げでは、半導体がその内の1786億円を占め、残りのバッテリ事業は減収となっている。半導体の内イメージセンサが1409億円を占めており、売り上げのけん引役となっている。

シャープの決算報告では上半期の決算を中心に述べられている。全社連結決算では、前年同期比3.6%減の1兆2796億円の売り上げ、営業損益251億円の赤字になった。前年同期では292億円の黒字だったから、利益が543億円減少したことになる。この中で、民生のデジタル情報家電が1673億円と前年同期比21%の減収で、営業損益は150億円の赤字、液晶のディスプレイデバイスは3911億円と同15.1%の減収で、264億円の赤字である。これに対して、モバイル用カメラや監視カメラをはじめとする半導体センサなどの電子デバイスは、62.4%増の2432億円の売上額で、営業利益は80億円の黒字に転換した。

半導体をけん引するスマホでは、アンドロイドが不調、iPhoneが好調という傾向が鮮明で、アンドロイド端末を生産している韓国Samsungの営業利益は、10月30日の日本経済新聞によると、7兆3900億ウォンであった。この内スマホ事業は、7〜9月期2兆4000億ウォンと前年同期37%増やしたが、半導体部門の営業利益は同62%増の3兆6600億ウォンとなった。やはり半導体が全社の営業利益をけん引している。SamsungはiPhone 6Sのアプリケーションプロセッサのファウンドリを手掛ることができたために、半導体の利益が増えた。Samsungの日本法人サムスン電子ジャパンはスマホ事業の不調により約100名を削減すると同日の日経は伝えている。

半導体事業の好調さを裏付けるかのように、シリコン半導体結晶の信越化学工業の4〜9月の売上額は前年同期比7%増の6458億円、営業利益は同13%増の1098億円と好調で、シリコンウェーハのフル生産が続いていると、28日の日経は報じている。東京エレクトロンの同期の連結決算は売上額が前年同期比16%増の3409億円、純利益は同2.1倍の413億円だった。

製造業のオートメーションを支えるセンサ事業が得意なキーエンスの4〜9月期の連結売上額は前年同期比19%増の1875億円、純利益は同20%増の670億円となっている。FA向けのセンサは自動車や半導体など工場の自動化や、今後のIndustry 4.0に欠かせない。

参考資料
1. 当社システムLSI事業及びディスクリート半導体事業の構造改革について 東芝IRニュース (2015/10/28)
2. ソニーおよび東芝による半導体製造設備等の一部譲渡に関する意向確認書の締結について 東芝IRニュース (2015/10/28)

(2015/11/02)

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