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ウェアラブル、ヘルスケア・医療機器の端末に活路を見出す

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IoT、ウェアラブル、ヘルスケア、新規ビジネス、このようなキーワードで言い表せる動きが先週出ている。IoTのセキュリティ作りの始まり、ウェアラブル機器は民生用時計型端末と産業用メガネ型端末に2極化へ、ヘルスケア・医療端末の続出、そして新ビジネスモデルを採用、こういった様相を示した1週間だった。

元日経エレクトロニクスの記者でシリコンバレーに住む、フィル・キース記者が9月1日の日経産業新聞にIoTのセキュリティやプライバシーの枠組み作りを提案・寄稿している。同氏はIoTを汎用コンピュータ以外でインターネットにつながる機能を持つモノ、と定義する。IoTで今欠けていることは、セキュリティやプライバシーを守るフレームワーク(枠組み)だとしている。米Microsoftや米Symantec、米Verisignなど米国の有力IT企業が参加している「Online Trust Alliance」が「Internet of Things Trust Framework」の初期版を出したばかりであり、IoTのこういったフレームワーク作成の仕事は始まったばかりだという。

これまで、ウェアラブル端末には眼鏡型や時計型、ブレスレット型などが混在していたが、時計型はヘルスケア端末に、眼鏡型は産業用の点検作業のように両手を自由に使いたい用途で使われそうだ。先週は、時計型でSamsungとソニーから発表があった。Samsungは1.2型の有機ELをディスプレイに採用した「Gear S2」を発表、時計の外枠を回してアプリケーションソフトなどを選択する操作方法を新たに導入したとしている。一方、ソニーの時計型端末「Wena」では、電子マネーの機能や消費カロリーの計測などの機能を設け、特に時計のベルトの腕の内側にあたる部分にFelicaチップやセンサを内蔵する。この時計型端末は、新しいビジネスモデルとして、クラウドファンディング方式で資金を集めてから製造する。具体的には、端末の価格を最初に2種類決め、それらを予約販売するような形で資金を集める。時計部分はシチズン時計から調達、ベルト部分にセンサや回路を形成するようだ。

NTTデータは眼鏡型ディスプレイを使った、情報システムの運用や複写機などの保守点検用システムを発表した。眼鏡部分に装着した小型ディスプレイで操作手順書を見ながら両手を部品交換などに使える。日立製作所は、日立製作所と日立産業制御ソリューションズは、ヘルメットに装着するヘッドマウンドディスプレイ(HMD)を活用した工場やプラント設備の保守点検サービス「ドクタークラウド/巡回・点検支援システム」を9月2日、売り出した。設備の保守員は小型画面で作業手順を確かめながら両手で点検などの作業ができ、保守業務の効率を引き上げられるとする。拡張現実(AR)の技術を採用し、設備や機器に貼り付けたマーカー(目印)を内蔵カメラで読み込むと、対応する作業指示などがディスプレイに自動表示されるという。

医療機器という新規ビジネス目指す企業としてシャープが、2017年をメドに、患者の腸の音を解析し流動食などを投与するタイミングを見極める医療用システムを発売する、と9月2日の日経が報じた。患者の下腹部にセンサを取り付け、無線で計測データを送る。シャープはすでに山梨大学医学部付属病院で新型システムを試験的に導入しており、今後は全国10カ所程度の大学病院でも試し、使い勝手などを改善して実用化するとしている。

パナソニックと富士通セミコンダクターの合弁ファブレス半導体のソシオネクストが、システムLSIを超えて、医療機器を作り、サービスも行うと3日の日経産業が伝えている。この医療機器とは、超音波で筋肉や脂肪の量を測定するスマホ並みの小型機器「ビューフィー」である。ハンディタイプの超音波診断装置のようなもので、筋肉量や脂肪の量を測定し、それをタブレットで見られるようにするだけではなく、クラウドにも上げ、自分の履歴や平均的な人の量との比較もできるようにする。試験導入したスポーツジムでは、特定会員向けのプレミアムサービスとしてトレーナーが会員の筋肉量を測定し運動効果の可視化に役立てているという。機器の提供とクラウドでの情報管理、測定結果の印刷サービスなどを組み合わせて月額数十万円で提供している。

ファブレス半導体の多くは、電子機器やシステムを作る実力はあるが、電子機器はチップユーザーと競合するため、これまで電子機器を販売する企業はほとんどなかった。敢えて、半導体チップの販売にとどめてきた。例えば、ARMはCPUコアビジネスに特化しているが、今でもファブレス半導体にはなるつもりは全くない。Qualcommもスマホを作る実力はあるが、携帯電話部門をかつて京セラに売却した。今回、ファブレスになったソシオネクストが最初から機器も製造するとなると、医療機器メーカーはソシオネクストからチップを買わないだろう。ファブレス半導体が電子機器まで販売する、初めての挑戦になる。吉と出るか凶と出るか。

(2015/09/07)

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