新幹線にSiCが搭載される
東海道新幹線のモータ制御用にSiCパワー半導体が使われることが決まった。東海旅客鉄道(JR東海)は、東京−大阪間での走行実験を開始したと6月25日発表した。また、IoTを製造ラインに使うIndustrial InternetやIndustry 4.0などのニュースや記事も増えてきた。
日経産業新聞は、5年後をメドにSiCパワー半導体を組み込んだ新幹線車両を実用化する、と26日に報じた。JR東海は、これまで東芝、日立製作所、富士電機、三菱電機が開発を進めてきた。JR東海の発表と同時に、これら4社もそれぞれ、新幹線向けのSiC主変換装置を開発したと、25日に発表した。ただし、JR東海の発表では「SiC素子」という表現に終始しており、SiCショットキダイオードなのかSiCトランジスタなのかはっきりしていない。
SiC素子には、電流のオンオフスイッチング動作を行うSiCトランジスタと、オンからオフに不要な電流を素早く逃がすためのSiCダイオードがあり、これらを逆並列に1組にして使うことが多い。また、モータを駆動する場合にはスムーズな回転が得られるように120度ごとに制御する3相モータを使うことが多い。このため、SiCトランジスタを3組単位で使い、それらをモジュールとして構成することが多い。
SiC半導体の開発に注力してきた三菱電機は、3.3kV/1500Aの大容量フルSiCパワーモジュールを搭載した主変換装置を開発、東海道新幹線のN700系車両に搭載され、走行試験を開始したと発表した。日立製作所はSiCハイブリッドモジュールを適用した主変換装置を開発、走行試験を始めたと発表。富士電機は3.3kV/1200AのSiCパワー半導体モジュールをJR東海と共同開発し、実用化の目途が立ったと発表。東芝のニュースリリースでは3.3kVの高耐圧SiCデバイスを適用した主変換装置をN700系新幹線車両に搭載し走行試験を開始した、と発表している。富士電機と東芝は、フルSiCかハイブリッドSiC化については触れていない。フルSiCとは、ダイオードもトランジスタもSiCを使うデバイスのことで、SiCハイブリッドとはダイオードにSiCショットキ/トランジスタにSi IGBTを使った変換装置構成を指す。
SiCを新幹線に使うメリットは何といっても変換装置(電圧インバータと周波数コンバータ)の小型軽量化ができるため、車両の機器配置の制約が緩和され、設計の自由度が増すことだ。また、消費電力も削減できる。N700系駆動システムで従来の変換装置と比べると1500kgから1000kgに軽量化するという。ここでは1編成当たりの変換装置は14台と仮定している。
SiCデバイスの電車への応用は、地下鉄銀座線から始まった。その後、小田急線にフルSiCモジュールが採用され、山手線もSiCインバータ電車が走行することが決まっている。
また、先週のニュースでは、IoTがIndustry 4.0やIndustrial Internet、スマートシティなどに及ぼす影響に関する記事も多い。デンソーは2017年をめどに、IoTを採り入れた次世代モノづくりを始めると24日の日刊工業新聞が報じた。生産ラインに設置したセンサ(IoT端末)からデータを収集、クラウドベースで解析し故障の予知などに活用する。日本電産は自社のモータやプレス機と日本IBM[のソフトウエアを組み合わせてモータの異常を予知するシステムを、IBMと共に開発する、と23日の日経が伝えた。
29日の日経産業新聞はIndustry 4.0の解説記事を掲載し、つながる工場、つながる製品などを紹介している。ルネサスエレクトロニクスは、工場内の機械同士をつなげる規格CC-Linkに準拠したICを開発した。10月のサンプル出荷を目指す。