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スマホを中心に無線通信ネットワークも成長

半導体をけん引するスマートフォンのエコシステムが活発に動いているようだ。スマホは単なる端末だけではなく、無線通信ネットワークビジネスへの影響も大きい。スマホ・モバイル関連機器は今後も成長産業をけん引する。TSMCやIntelの設備投資に加え、無線通信インフラ機器メーカー、華為やNokiaが成長に向けて動いている。

TSMCがこの1〜3月期の売上額が前年同期比50%増の2220億台湾元(1台湾元=3.83円)、連結純利益は同65%増の789億台湾元と発表している。4月17日の日本経済新聞が報じた記事だが、iPhone 6の販売が好調で稼働率が高まり、この業績になったと見ている。利益率は3割を超す。次の16nm FinFETプロセスは、7〜9月期に量産を始めるとしている。ただし、この急成長には反動があると見て、2015年の設備投資額は従来計画より1割減らし105〜110億米ドルに下方修正するという。それでも過去最高の投資額だとしている。また、日経は、16nm品の受注が増えたため、予定していた現在の20nm品への投資を減らすと報じている。

これまでPCやサーバーなどを中心のマイクロプロセッサ(MPU)を提供してきたIntelは業績の成長止まりに苦しんでいる。1〜3月期の売上額は前年同期とほぼ同じの127億8100万ドル、純利益は3%増の19億9200万ドルだったと、16日の日経産業新聞が報じた。サーバー部門は好調で19%増の37億ドル、これからの成長分野として力を入れるIoT部門の売上額も同11%増の5億3300万ドルであったが、やはりPCが足を引っ張った。2015年の設備投資額は当初計画の95億〜105億ドルから82〜92億ドルへと13%下方修正した。日経は、既存設備の使いまわしや生産能力の調整で対処すると報じている。なお、3週間前にIntelがAlteraを買収するという報道があったが、買収はご破算になったという報道も先週出ている。

Intelは今回からモバイル機器向け事業もPC部門に統合し、「クライアント・コンピューティング・グループ」とした。その売上額は同8%減の74億ドルとなった。PC売上額の減少を目立たなくするためかもしれないが、出荷数量でその内訳を表現している。ノートPC向けMPUが3%増え、デスクトップPC用は16%減少、タブレット用が45%伸びたとしている。ノートPCの市場はわずかに減少だが、ウルトラブック市場は伸びているため、出荷量はわずかながら増えたのであろう。IntelのIoT事業ではセンサー端末(あるいはIoT端末)向けを扱わない。このMPUはARMの独壇場であるからだ。IntelのIoT事業部は、ゲートウェイから上位のクラウド、データセンターのスイッチ市場などを狙ったもので、例えばIoTの中でもデジタルサイネージ用のCMS(コンテンツマネジメントシステム)ソフトウエアも出荷している。

スマホ用半導体トップのQualcommの株式をヘッジファンドのJana Partnersが20億ドル以上を取得し、発言権を強めていると15日の日経が報じた。その第一弾として、チップ事業と特許事業を分離せよと主張しているとさまざまな米国メディアが報じている。

通信機器では、フィンランドのNokiaがフランスのAlcatel-Lucentを買収提案したと16日の日経が報じた。スマホやタブレットなどのモバイル無線通信ネットワークのトラフィック増大に対処し、通信状況を改善するための通信ネットワーク機器メーカーとして、国内ではNECや富士通、世界市場ではスウェーデンのEricssonや中国の華為(ファーウェイ)技術などが強い。NokiaはAlcatel-Lucentの買収で上位2社と肩を並べる狙い。統合により、時価総額は156億ユーロ(約1兆9700億円)、売上額で3割のシェアを取れる見込み。Lucentは旧AT&Tから分離独立し、ベル研究所を持つ。

上位の華為は、2013年に横浜に研究所を移転したが、その狙いは部品調達。研究所の充実で、日本の優れた部品をスマホや通信機器に取り入れることが容易になる。「米国などで『中国のために、納入した機器で情報の盗み見やサイバーテロを働くのではないか』との疑念が残る」、と17日の日経は報じているが、華為は広東省の企業であり、遠く離れた北京の共産主義政府の影響をあまり受けていない企業ともいえる。もちろん、華為は疑念を完全否定している。また、スマホでは華為は中国市場では5位か6位でメジャーとはいえないが、輸出比率が高く、世界市場では上位に来る。どちらかと言えば、中国政府の肝いりというよりも、西側企業に近い存在のようだ。

(2015/04/20)
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