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IoTシステムの実現に向けた動きが続出

いよいよ、IoTシステムのビジネストピックスが続々登場してきた。日立製作所がIoTを製造現場で活用するためのシステム開発に乗り出し、東京エレクトロンデバイスは工業用IoTの中核となるワイヤレスセンサネットワークのゲートウェイ機器の開発、ロームはIoTのセンサ部品を使う企業との協業を探るマッチング会を開催する。IoTからのデータを受け取り加工するデータセンター向けのトピックスもある。

いずれも、IoTネットワークシステムをこれから構築するという話だが、生産効率向上を目指した具体的なシステム仕様についてのトピックスが続出した。日立が目指すのは自社の秦野工場で、サーバーやストレージ製品の生産ラインの効率化を図るためのシステム。これは3月13日の日本経済新聞が報じた記事。生産ラインの各工程にセンサを設置、作業が円滑に進むように監視し、問題があれば即座にロボットや機械の作業を自動的に切り替え、さまざまな製品を効率よく生産できるようにするとしている。さらに、ラインの稼働状況と連動して、無人搬送車が部品の倉庫から自動的に部品を取り出し各工程に届ける。もちろん、搬送車、倉庫にもセンサを取り付けておく。

IoT端末からリアルタイムで続々集まるデータがビッグデータとなり、ビッグデータ解析技術を使って、需要を予測し部品を発注したり工場の稼働率を最適化したりする。これらによって生産性を25%高めるとしている。今後、産業機器の他の工場や、他社の製造業にもシステムを提供していくという。

東京エレクトロンデバイスは、IoTシステムの一つ、ワイヤレスセンサネットワークのゲートウェイとなる製品「Dust-Gateway」を開発、工業用のIoTシステムを利用する製造業や。インフラ監視、データセンターなどの顧客に向ける。ゲートウェイは、さまざまなIoT端末からのデータを収集し、インターネットに上げるという役割を持つ。各IoT端末が直接インターネットにつながると、消費電力が増大するだけではなく通信トラフィックが膨大になるため、センサネットワークでは、メッシュトポロジ構成を採る。これは、センサからセンサへとデータを送り最後にゲートウェイを通してインターネットに上げる方式。

Dust-GatewayはLinear Technologyが買収したDust Networksが開発したシステムを利用するゲートウェイ製品。初年度は100台、次年度は300台の販売を目指す。

ロームがIoTを利用する医療やヘルスケア分野に向けて、中小企業基盤整備機構と共催で、中小企業20〜30社とのマッチング会合を3月17日に開催する、というニュースを10日の日経産業新聞と13日の日刊工業新聞が報じた。ロームは、北米のMEMSセンサメーカーKionixを買収し、加速度センサなどの慣性センサ技術を手に入れた。しかし、IoTではMEMSセンサだけでは対応できない。このため、ロームは、IoTシステムに加え、「近赤外線の検出に向いたCIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン)イメージセンサの医療分野への応用」と「脳波センサの応用」のテーマを対象とする。試作品の開発や、センサデータの意味を解釈するアルゴリズム、カメラモジュールの開発などを見込んでいる。ロームは、自社に光学システム設計技術を持っていないため、他の企業とのコラボを探る。

IoTシステムは、端末だけではない。ゲートウェイを通して集めたビッグデータを解析したり保存したりするためのサーバーやストレージシステムも重要な機器となる。Intelはサーバー向けのマイクロプロセッサ「Xeon D」をリリースした。これは14nm FinFETプロセスで製造されたクアッドコアまたはオクトコアのチップである。キャッシュメモリを1次、2次、3次まで集積している。それぞれコア当たり、1次キャッシュではデータメモリ32KB、命令キャッシュ32KB、2次、3次のデータキャッシュはそれぞれ256KB、1.5MBとなっている。

また日立製作所は、通信データトラフィックの解消のため、400Gbpsと高速の通信技術を開発した。最先端の現場では100Gbpsシステムがようやく設置されたばかり。今回の400Gbpsシステムは、光通信にデジタル変調を持ち込んで、光の振幅と位相を16個の状態で表す16QAMを利用、1度に4ビット同時に送ることができる。構造が簡単な光検出器を用い、遅延検波方式でリアルタイム動作を確認したとニュースリリースで述べている。

(2015/03/16)
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