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半導体産業の好調は続く

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2014年の世界の半導体産業は7.9%成長したと米市場調査会社ガートナーが発表した。1月13日、14日、それぞれ日経産業新聞と日刊工業新聞が報じたものだが、他の調査会社の数字9%成長よりはやや低い。ガートナーの発表した数字は、半導体市場が3398億ドルとしており、メモリがけん引したと伝えている。昨年の好調はまだ続いている。

TSMCが発表した、2014年通期の半導体受託生産売り上げは前年比3割増の7628億台湾ドル(2兆8300億円)、純利益が2639億台湾ドル(約9800億円)となった。利益率は3割を超えた。TSMCは、微細化を牽引するスマートフォンのアプリケーションプロセッサとハイエンドのFPGAという製品を受託生産しており、その28nm品の量産と20nm品の量産開始で稼いだ。

ただし、その次の16/14nm FinFETプロセスは量産化が難しく、TSMCは20nmプロセス開発を進める一方、他社は20nmをスキップして、次の16/14nmFinFETプロセス開発に全力を挙げている。Samsungが16nm FinFET製品で先行していると言われ、Appleの次のプロセッサA9の受託製造を受注したといううわさがある。Samsungは14nm品の量産を2014年第4四半期にスタートしたといううわさもある。TSMCは競合相手よりシェアで下回るというモーリス・チャン会長のコメントを日本経済新聞が載せている。16/14nm FinFETプロセス製品ではSamsungがリードしているようだ。

TSMCの2015年における設備投資額は115〜120億ドルと過去最大にするという。2014年は95億ドルであったため、2〜3割の積み増しになる。巻き返しを狙っているのかもしれない。

スマホの値下げが中国で行われているとしても、中国で現在急成長しているスマホメーカー小米のスマホは、決して安かろう、悪かろうではない。プロセッサにはQualcommやMediaTekのチップを使い、部品コストは決して安くない。しかも「小米の製品は品質が高く、故障しないから売れている。しかも安い」と述べたのは筆者の知り合いの台湾の記者だ。小米は販売店を持たず、インターネットだけで販売しているため、販売管理費ゼロとうビジネスモデルだから安いのである。スマホは、安かろう。悪かろうでは消費者にすぐ飽きられる。安いだけのスマホは中国国内でさえ、今後は期待されていない。プロセッサは当分、価格を維持するだろう。

TSMCに牽引される製造装置・材料産業も活発化している。レジストメーカーのJSRは、2014年4〜12月期の連結営業売り上げは260億円と微増になった模様だと16日の日経は伝えている。半導体や液晶ディスプレイが好調で、採算が悪化した石油化学系事業を補った結果だとしている。アドバンテストも回復、2014年4〜12月期の連結営業損益は90億円程度の黒字だと、17日の日経が伝えている。国内工場や研究所を前期に統廃合し固定費を圧縮した効果もあるとしている。LTEサービスが始まった中国市場でスマホの需要が高まり、DRAMやプロセッサ向けのテスターが好調だという。同期の売り上げは、前年同期比5割増の1170億円前後になったようだとする。

スマホ以外のけん引力となるのがクルマ、すなわちカーエレクトロニクスである。先週は、東京ビッグサイトでその展示会が開かれ、半導体デバイスとしてAlteraのFPGAがAudiに搭載されたことを16日の日経産業新聞が伝えた。FPGAは最初、試作評価のブレッドボード代わりに使われ、ハードウエアロジックの回路検証の役割が主だった。しかし、開発ツールが進展し、プログラムするロジックをメモリに格納するという使い方が浸透したおかげで、量産にも使えることがはっきりした。月産数十万個の規模なら、FPGAとメモリを揃えさえすれば、システム起動時にメモリからFPGAへブーストするだけで動作に入ることができる。1個ずつプログラムする必要は全くない。だから、ASICを起こすよりもFPGAだけで量産にも使えるのである。

製造業の国内回帰が始まった中で、リコーが閉鎖していた工場を環境事業の拠点に再活用するというニュースが14日の日経で報じられた。静岡県御殿場市にある同工場はかつて複写機を生産していたが、価格競争のあおりで2013年に停止していた。建屋や設備を改修し「環境事業開発センター」として稼働させる。16年度までに30億円を投資、蓄熱素材製品や、無人搬送車、複写機の回収や再利用などを行う。17年度までに1000人体制にするという。

(2015/01/19)

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