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IoTとSiC/GaNパワー半導体の時代到来へ

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新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
年が改まってから、日本経済新聞や日経産業新聞、日刊工業新聞からニュースを見ていると、IoT(Internet of Things)に関する記事が目につき、日刊工業はパワー半導体を大きく採り上げている。2020年に500億台というIoTの台数予測はさておき、IoTは工業用途で地歩を固めていくだろう。

1月1日の日刊工業新聞は、「IoT時代、本格幕開け」というテーマで、ロボット、ウェアラブル端末、建機という例を解説している。全て、直接的あるいは間接的にインターネットに接続し、遠隔操作あるいはデータ蓄積・応答という動作を行うものである。建機あるいはロボットなどはM2M(Machine to machine:通信モジュール)を搭載し、インターネットにデータを直接上げる。身体に取り付けるウェアラブル端末は電池寿命を伸ばすため、スマートフォンを通してデータをインターネットに上げる。いずれも幅広い分野に使われるようになる。

IoTは、基本的にセンサ、アナログ回路、マイコン、送受信回路からなる。微細化技術は直接使わない。むしろ、どのようなデータをどのように検出しインターネットにどのようにして上げるのかが重要で、ハードウエアというよりもソフトウエアがカギを握る。日経は1月1日の特集で、IoTに使うセンサが20年に1兆個(トリリオン)になるという調査会社の予測をタイトルに使った。5日の日経産業新聞は、IoT用半導体として、Aviacomm社のフィルタ制御可能な広帯域RFチップを採り上げた。300MHzから3GHzまでの各国・各地域で使われる、さまざまな周波数にプログラムで対応できる。

日刊工業は、新しいパワー半導体、SiCやGaNなどのMOSFET、HEMTデバイスを1日採り上げている。「”日の丸”、最後の砦死守へ」、という見出しだが、企業はもはや日の丸にこだわる必要はない。各企業が世界で勝つための方策、戦略を考えればよいのである。日本企業が世界で勝てる体質を作り、売り上げ・利益を成長させていけば、結果的に税金として国益にかなうからだ。

SiCパワーMOSFETは小田急電鉄に納入され、電車のモータの回転数を自由自在に変えられるインバータに使われる。MOSFETはIGBTよりも高速のスイッチングができるため、エネルギーをためるコイルやコンデンサを小さくできる。SiCデバイスは、電流がウェーハに垂直方向に流れる縦型に対して、GaNのHEMTは水平方向に流れる横型であるため、耐圧が異なる。600V以下ならGaN、1200V以上ならSiCというすみわけが出来つつある。また、結晶成長からデバイス作製までのトランジスタレベルでは日本は強いが、回路技術では特に強い訳ではない。むしろ、回路技術で海外と組めば、性能・機能の高い製品を早く市場に出せるようになる。

SiCに関することではないが、パワー半導体でリードする三菱電機は、組立と検査の後工程を2016年度から中国に移管する、と12月30日の日刊工業は伝えた。モータ制御のインバータでは、3相モータを使うことが多いため、最低でも6個ずつ使う。このため、トランジスタチップを6個と各トランジスタの逆向きに接続するダイオード6個を一つのモジュールにパッケージングすることが多い。こういったパワーモジュールも後工程でハンドリングするが、モジュールも中国に移管するかどうかは新聞情報でははっきりしていない。

SiCパワー半導体はまず電車から入ったが、この市場はSiCパワー半導体の実用化というよりも試運転という意味合いが強い。むしろ、パワー半導体の最大の市場になりそうなのが自動車向けである。電気自動車、燃料電池車いずれもモータで車輪を駆動する。このためインバータは必須で、ここにSiC MOSFETの大きな市場が将来見込める。電気自動車用では安全性と軽量性との兼ね合いで、おそらく300〜400Vに昇圧することが求められている。耐圧1200Vのデバイスが使われるだろう。

燃料電池車は水素と酸素の燃焼によって発電しモータを回すが、始動時にはLiイオン電池も補助用に使われる。このため、SiCトランジスタが使われる個数は増える。更なるコストダウン技術の開発も欠かせない。

(2015/01/05)

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