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青色LEDはこれからのスマート照明を切り拓く

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先週は、ノーベル物理学賞を受賞したテーマの青色LED(発光ダイオード)に関する話でもちきりだった。これは3名の日本人、赤崎勇名城大学教授と天野浩名古屋大学教授、中村修二カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授が受賞したため、新聞紙上を賑わした。

中村修二氏は米国国籍も取得しているため、日本人なのか、という疑問や、日本人ではなく米国人だという主張なども、ソーシャルメディアを駆け巡った。中村氏は、青色LEDを発明した時に在籍していた日亜化学工業からいただいた、エンジニアとしての発明の報酬が少なすぎるということで会社を訴えたことで、マスコミに知られていた。この3人の中でも最も有名なLED研究者だ。

赤崎勇氏は、名古屋大学教授時代の1989年にpn接合GaN結晶による青色LEDを光らせた。当時の青色LEDは、II-VI族化合物半導体のZeSe系か、III-V族のGaN半導体か、ほぼ2派に分かれて開発が進んでいた。原理的に4価のSiやSiCは共有結合を示し、イオン結合の成分はないが、III-VやII-VII族半導体ではイオン結合が伴う。それもIII-V族よりもII-VI族の方がイオン性は強い。すなわちII族・VI族元素のイオンが入りやすい。これは、所望のドナーやアクセプタ以外の不要な不純物が入りやすいことに他ならない。つまり、II-VI族はIII-V族よりもイオン性コンタミに弱い。きれいな結晶は、III-V族のGaNで先に得られた。この後、II-VI族半導体の研究は急速にしぼんでいく。

これまでのノーベル物理学賞受賞テーマで実用的と思われた、エサキダイオードやバイポーラトランジスタは、やがてすたれて行った。江崎玲於奈氏の発明によるエサキダイオードは、pn接合の不純物濃度を上げ、トンネル効果を観測できるほど、薄い空乏層を作ることで負性抵抗領域を設け、発振デバイスとして実用化された。しかし、所詮は2端子素子。使いやすい3端子のトランジスタにとって代られた。バイポーラトランジスタでさえも、半導体の初期の時代には大いに活躍したが、やがてCMOSデバイスに置き換えられた。消費電力が大きいという点で集積度向上には向かなかったからだ。

では、青色LEDの実用化の未来はどうか。青色そのものにインパクトがある訳ではない。黄色の蛍光塗料の光と混合させて白色光を出すため、この白色光が照明として使えることに最大のメリットがある。約0.3mm角の青色LEDチップ上に黄色の蛍光塗料を塗った白色LEDが出す光は、従来のフィラメントによる白熱ランプや放電による蛍光灯よりも消費電力が低い。現在まではこのメリットが大きく、24時間点灯するコンビニなどではLEDランプの単価が高くても電力コストが安いため2年程度で元を取れた。さらにデバイスを安く作る名人の台湾企業が、日亜化学や豊田合成のチップを購入してパッケージしたLEDランプは、安価で普及を加速した。

これまでのLEDランプは、従来の白熱灯や蛍光灯を置き換えただけの低消費電力応用しかない。LED照明の時代はむしろこれからだ。今後のLEDランプは、照度センサや人感センサなどのセンサと、調光回路、LEDドライバ回路、マイコンなどを組み合わせて「スマート照明(Smart Lighting)」に大量に使われることになる。そのインパクトについて、セミコンポータルのブログで伝えた(参考資料1)。もはや有機EL照明は、主流になりえない可能性も高い。低コスト化のメドがいまだに立っていないためだ。

参考資料
1. 青色LED発明者たち、ノーベル賞受賞おめでとう (2014/10/08)

(2014/10/14)

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