セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

半導体の企業買収相次ぐ

|

8月20日、ドイツのInfineon Technologiesが米国のパワー半導体大手International Rectifierを買収すると発表、23日には村田製作所が、SOS/SOIを使ったRF半導体の米国Perigrine Semiconductorを買収すると発表した。半導体メーカーの2件の買収が相次いだ。Perigrineについて2010年にセミコンポータルで報道している(参考資料1)。

図1 パワー半導体の市場シェア 出典:IHSおよびInfineon Technologies

図1 パワー半導体の市場シェア 出典:IHSおよびInfineon Technologies


InfineonはIRを1株当たり40ドル、総額30億ドルで買収するという契約を締結したと20日に発表。Infineonは、エネルギー効率、モビリティ、セキュリテイの三つを標語に掲げるIDM(垂直統合の半導体メーカー)。ここでモビリティとは主に自動車用半導体を指している。エネルギー効率を改善する切り札として、パワー半導体が極めて重要となる。パワー半導体の300mmのシリコンウェーハのラインを持つ企業はInfineonだけ。IHSの調査によると、現在の市場シェアはInfineonが11.8%でトップ。ここにIR社を統合すると、計算上は17.2%のダントツになる(図1)。

一方のIR社は、低耐圧のパワー半導体が得意な米国の古い半導体メーカー。社名のRectifierは整流器という意味であり、文字通りパワー半導体の老舗である。HEXFETと呼ぶ、縦型のパワーMOSFETを開発、現在のパワーMOSFETの源流を創出した。40V〜150Vといった低電圧のMOSFETや600VのIGBTなどの製品がある。

両社ともパワー半導体が得意な企業であるが、Infineonは高電圧のパワー、IRは低電圧のパワーという違いがある。このため、今回の買収提案に対して、相補的な関係という言葉を使っている(図2)。シリコンのパワーMOSFETやIGBTだけではなく、化合物半導体に関しても同様な違いがある。GaNパワーMOSFETは、600Vまでの耐圧をカバーするのに対して、SiCパワーMOSFETは1200Vまで可能だ。InfineonがSiCのJFET技術を持ち、IRはGaN-on-Si技術を持つ。GaNはSiウェーハ上で作製できるというメリットがあるため、LEDを含め、GaN-on-Si技術は、東芝(Bridgelux社を買収)やTransphormなどの企業が製品化している。


図2 InfineonとIRのそれぞれの強み 出典:Infineon Technologies

図2 InfineonとIRのそれぞれの強み 出典:Infineon Technologies


InfineonがIRを買収できた暁には、低電圧から高電圧まで幅広い製品ポートフォリオを持ち、SiCもGaNも両方を持つ、世界シェアトップのパワー半導体企業になる。

もう一つ大きな買収劇である、村田製作所によるPerigrineの買収における金額は4億7000万ドル。Perigrineは、SOSおよびSOIのCMOS技術でRF特性を改善する半導体を製造するメーカー。スマートフォン向けの高周波トランシーバスイッチやパワーアンプなどを設計・製造している。バルクCMOSとは違い、絶縁体上のSi技術は、リニアリティに優れており混変調歪が少ないという特長がある。

高周波モジュール製品を製造しているムラタは、以前からPerigrine社のSOIフロントエンドチップを使っていた(参考資料2)。今回の買収により、RF半導体のプロセス開発から半導体設計、回路設計、モジュール設計まで一貫した開発体制が確立する、とムラタのニュースリリースは述べている。

買収の発表により、Perigrineの株価は、ここ3ヵ月6~7ドルあたりを低迷していたが、22日には12.5ドルへと急上昇した。

参考資料
1. 新生CMOS on SapphireのRFチップで携帯電話市場のGaAsを置き換えていく(2010/06/30)
2. 米国Perigrine Semiconductor Corpの買収手続き開始の合意について(2014/08/23)

(2014/08/25)

月別アーカイブ