家電メーカー2社ともカーエレ市場に進出強化
先週はカーエレクトロニクスへ進出を図る日本のモノづくり企業2社の取り組みが報道された。シャープとパナソニックである。共に日本を代表する家電メーカーであるが、それぞれクルマ市場への進出を進め強化している。
図1 新型ディスプレイ(リンク) 出典:シャープ
液晶ドライバは、画素を駆動するための電圧を送るための半導体トランジスタであり、従来は四角い額縁に沿って設けられていた。このためチップは細長い形状をしていた。この新ディスプレイは「ゲートドライバを表示領域内にある画素内に分散して配置することで額縁を極めて細くするとともに、表示領域にあわせた自由な形状のディスプレイを設計することが可能です」と同社のプレスリリースには述べられている。この技術はIGZO(In-Ga-Zn-Oxide)化合物トランジスタを用いるディスプレイに使われる。
ドライバの役割は、セル内のスイッチングトランジスタに電圧を供給することである。そして複数の画素内のトランジスタを、額縁に沿って配置して行と列のドライバトランジスタで駆動していた。今回のドライバトランジスタが表示領域内にある画素に分散して配置するとは、どういうことか。
スイッチングトランジスタはIGZO技術で製造されるため、画素の開口率が大きく、その分消費電力を下げることができた。今回の技術の詳細はプレスリリースにも新聞記事にも掲載されていないため、ドライバトランジスタを画素に分散するという意味が正確につかめない。いくつかの画素内にW(チャンネル幅)の大きなドライバトランジスタを分散配置すると、その画素は暗くなるはず。それをどう補うのか不明である。いくつかの画素内にWの大きなドライバトランジスタを配置して、多数の他の画素内のスイッチングトランジスタを駆動するのであろう。ディスプレイ形状設計の自由度は高まるが、ドライバ設計の自由度はむしろ制限されるのではないだろうか。
パナソニックは、カーエレクトロニクスと住宅部門を強化する方針をすでに発表しているが、本社直轄の研究開発部門の人員を現在の半分の500人程度に減らし、自動車や住宅などの事業部に移転させると、20日の日経は報じた。最近、パナソニックは、次世代蓄電池の開発を、京都大学や産業技術総合研究所、トヨタ自動車などと共同で行うなど、外部との協力を進めている。21日の日経は、テレビ事業部のある茨木事業所の敷地(面積約12万平方メートル)の6割を大和ハウス工業に売却する方針だと報じた。
パナソニックがICとディスクリート、LEDなどの半導体部門を一つにまとめた、パナソニックセミコンダクターソリューションズ社(参考資料1)が、予定の3月から遅れたものの、6月1日に発足し、20日には新しいホームページを立ち上げた。製品分野ごとの分類と、アプリケーションごとの分類の二つをトップページに掲載し、必要なチップを探しやすいようになっている。
18日の日経産業には、三菱電機のSiC MOSFETの開発のニュースが掲載された。しかし実用化を5年以内としており、すでに実用化されたSiC MOSFET製品との違いは、トレンチ構造を採用したという以外ははっきりしていない。自動車用などのインバータを数分の一に小さくできるSiC MOSFETの最大の問題はコストが高いこと。いかに低コストで製造するか、設計段階から知恵を絞り安く設計・製造するための技術を開発する必要があるが、これについては何も触れられていない。
参考資料
1. パナソニック、半導体事業を完全子会社化 (2014/02/05)