Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

ジャパンディスプレイの東証上場、売却益700億円

3月19日、ソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶事業が統合したジャパンディスプレイ(資本金968億円)は、東京証券取引所第1部に上場した。資本の86%を出資した産業革新機構は保有株式の半数近くを売り出した。先週はウェアラブル端末のニュースも多かった。

産業革新機構は、上場、株式売却によって、1600億円強を回収、売却益は700億円となった、と20日の日経産業新聞は報じている。上場した19日から現在の24日11時時点での株価は、750円前後を推移している。ただし、発行株式価格は、1株当たり900円と設定していた(参考資料1)。このため、想定よりも回収額は少なかったことになる。

19日の日本経済新聞は、ジャパンディスプレイが1000億円を投じてスマートフォン向け液晶パネルの工場を新設する方針を決めた、と報じた。1000億円もの投資というリスクを投資家が敬遠したのだろうか。今の所、四半期ベースでの財務(P/L)状況を見ると(参考資料2)、2013年の6月、9月、12月の売上額は2桁成長している。営業利益率は徐々に上向き、12月の業績では5.1%と創業以来、最高レベルに達している。ただし、ハイテク企業の営業利益率は海外では30〜40%がざらである。ジャパンディスプレイの1000億円の投資に対する記事に対応して同社は19日に「本日、一部の報道で当社の工場新設の方針について言及されていますが、報道された内容は当社から発表したものではなく、事実ではありません。」というニュースリリースを発表している。

18日の日経産業は、日本のファブレスベンチャーであるメガチップス社の進藤晶弘会長のインタビュー記事を載せている。進藤氏は、ベンチャー企業はバブル経済のピーク時期でさえ、「(金融)支援や理解も得られず、オフィスの賃貸、株式の払い込みのための銀行口座開設などが拒否された」と述べている。バブル前は営業的には受注額を増やせたが、バブル崩壊後はキャンセルが相次ぎ、苦しい時期を乗り切った。経営理念をしっかり社員と作り共有して初めて、企業としての価値観を持つことの重要性を感じたと述べている。最初から官製の企業と、純粋のベンチャー企業との対比は、日本でベンチャーを育てるうえでの参考になる。

3月20日は、ウェアラブル端末に関する記事が多かった。日経は、グーグルのウェアラブル端末向けのOS、「アンドロイドウェア(Android Wear)」を発表したと報じた。製品化で一番乗りと見られる韓国LG電子の「Gウォッチ」は早ければ4月にも発売されるという。日経産業は、サムスン電子が腕時計型端末「ギア2」に向けたアプリケーションソフトの開発キットの配布を始めたと述べている。こちらは新OSのタイゼンに対応するという。

17日からサンフランシスコで始まったゲーム開発者会議(GDC)で、ソニーが顔に装着するゴーグル型端末の試作品を披露した、と20日の日経産業は伝えている。アマゾンやグーグルは、ゲームソフト開発者向けの支援ツールを発表し、顧客の分析や広告の提供、ゲームデータのクラウドでの保存・参照などの機能について述べたようだ。

ハードウエアに強い国内企業では、ウェアラブル端末やスマホ向けに、小型・薄型化のための部品内蔵基板の品ぞろえをTDKと太陽誘電が強化している、と24日の日刊工業新聞が報じた。TDKはヘルスケアに使うウェアラブル端末に、半導体チップを基板に埋め込んだ無線モジュールを開発した。太陽誘電は、CMOSイメージセンサを基板に内蔵したモジュールの量産を始めた。半導体チップをプリント回路基板に埋め込む技術は、反りによる応力の問題がかつて指摘されていたが、2年ほど前に解決したと聞いている。部品内蔵基板技術は量産レベルに来たと考えてよいだろう。

参考資料
1. 発行価格及び売出価格、国内外の募集株式数及び売出株式数並びに オーバーアロットメントによる売出しの売出株式数決定のお知らせ (2014/03/10)
2. 財務ハイライト−ジャパンディスプレイのホームページより

(2014/03/24)
ご意見・ご感想