セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

世界のトレンドに自社の半導体製品を結び付けることが成長へのカギ

|

新年あけましておめでとうございます。
2013年11月の世界半導体製品の販売額は、前年比6.8%増の272億4000万ドルとなり、11月としては過去最高を記録した。これは、新年早々、米SIAがリリースしたもので、日本経済新聞も1月5日に報じている。過去最高ということは、いまだに成長しているという意味でもある。

新年を迎え、日経と日刊工業新聞に掲載された半導体関連の記事を拾ってみると、日経が過去と工場リストラの話に集中し、日刊工業は「日本電機の底力」シリーズや経済特区特集を企画した。日経で唯一明るい話題は、東芝が韓国のSK Hynixと共同でMRAMを開発するという記事だが、共同開発するという2年半前のニュースの後を追った話題にすぎない。

半導体産業を未来の技術と関連付けたニュースはめったに出てこない。半導体=製造工場、といった図式ではもはやない。折しも、昨年暮れに米国のFPGAメーカー大手Alteraは、CEOのメッセージをプレスリリースとして流した。同社の社長兼CEOおよび会長のジョン・デイナ氏は、2014年に新市場を活性化させる三つのトレンドとして、ビッグデータとIoT(Internet of Things)、自動運転車を採り上げている。

この中で、三つの流れともAlteraの主力製品であるFPGAとは直接関係しない。しかし、これらのトレンドからAlteraの持つFPGAは何ができるか、という発想でこれらのトレンドと共に成長する市場を探している。例えば、IoTではMEMSやワイヤレスセンサといった部品レベルに目が行きがちだが、Alteraの主力製品のFPGAはこういった部品とは全く違う。IoTシステムの中で、高機能なセンサハブやインターネットへつなぐためのゲートウエイ、さらにローカルなリアルタイムコンピューティングを採り上げ、いずれもいろいろなメディアとプロトコルが混在するマルチレイヤーネットワークにFPGAが使われうることを明確に示している。ここが、FPGAにとって成長市場となる。

こういった考え方は、多くの半導体メーカーにとっても共通である。具体的には世界的なトレンドとそれに欠かせないシステム、さらにはサブシステムに降ろしていくことによって、新しい半導体の市場を見つけることができる。東芝ならNANDフラッシュをIoTのどこに使うべきか、自動運転車システムのどこに使うべきかを探し、ルネサスならマイコンをIoTやビッグデータシステムのどこに使うべきかを見出すことが成長につながる。富士通セミコンダクターやロームなどの半導体メーカーも自社の強い製品と成長市場との関連を見つけることで世界のトレンドに乗ることができる。

逆にこれまでのように半導体側の視点で考えると、シリコンの次は化合物半導体、量子デバイス、などと研究フェーズへとはまり込んで周りが見えなくなってしまう。量子コンピュータや電子1個で動くトランジスタをどうやって室温動作させることができるのか、ボルツマンの熱分布や格子振動を抑えることができるのか、自然の摂理に逆らってエントロピーを下げるための仕組みを考えるといった基礎物理学は必要ではあるが、実用化の芽が現れるのは10年以上先の話であろう。

半導体産業のビジネスを考える場合は、やはり世界的な大きなトレンドの中にどうやってわが社は入るべきかを考えることがまず先だろう。半導体製品を使う電子システム、さらにはその応用となる機械や機器は今や、ハードウエアだけではない。ソフトウエアも使ってフレキシブルでアジャイルなシステムを実現している。その頭脳となるのがシステムLSIであり、SoC(システムオンチップ)である。これらのチップ実現のカギは、コラボと「人」である。設備ではない。人に投資できるか、がこれからの半導体企業に求められる。

(2014/01/06)

月別アーカイブ