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パナソニック、製造部門を分離、ファウンドリとして競争力強化を狙う

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先週は、工場の売却を巡るニュースが半導体業界を駆け巡った。パナソニックの半導体事業の再構築が正式に発表された。半導体事業は、「パナソニック株式会社オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社セミコンダクター事業部」として長岡京市で継続するが、魚津、砺波、新井の各工場は、イスラエルのファウンドリTowerJazzとの合弁会社となる。

パナソニックの半導体事業はもともとキャプティブマーケット(社内市場)狙いだった。外販よりも内製するための事業部門であった。この伝統が完全に壊されずに来たことで、テレビ事業の赤字と共にテレビ用の半導体も大きなダメージをこうむった。外販にも力を入れ始めていたものの、キャプティブからの脱却が難しかったのであろうと見られる。

セミコンダクター事業部は、旧松下電子工業の本社があった、長岡京市を拠点としている。北陸3工場は、2014年4月1日に新合弁会社に移管される予定だ。資本金は7.5億円。新会社は、TowerJazz(タワージャズ)が51%、パナソニックが49%出資する合弁会社となり、8インチと12インチのラインを使いファウンドリビジネスとパナソニックからの生産請負を行う。

パナソニックの魚津工場は、300mmウェーハで45nmプロセスの量産を始めた工場としてかつて最先端を誇っていた。TowerJazzの最先端工場は90nm程度であるから、TowerJazzは、今回45nmプロセス工場を手に入れたことになる。TowerJazzは、イスラエルと米国カリフォルニア州ニューポートビーチ(ロサンゼルスの郊外)、日本の兵庫県西脇市に拠点を持つが、いずれの工場も新規に建てたものではなく全て各地の企業から手に入れた。イスラエルでは旧National Semiconductor、ニューポートビーチは旧Rockwell、西脇はMicronからそれぞれ、購入した。今回はパナソニックとの合弁になる。

パナソニックにしても、工場をファウンドリとして活かせばビジネスチャンスは広がる上に、セミコンダクター事業部はファブレスとして機能できるはず。そうすれば、パナソニック方式は、これまでない試みになるかもしれない。世界のトレンドはファウンドリとファブレスが分離する方向にあり、どちらも年成長率はメモリを除くIDM(垂直統合半導体メーカー)よりも高い。工場をファウンドリ、設計をファブレスとして、独自LSIを世界に売り込んでいくための仕掛けだと評価できる。

パナソニックの発表資料「半導体事業の競争力強化について」には、「これまで、AV市場(テレビやビデオ)主体から車載・産業市場へのシフトや、当社の強みである低消費電力、画像処理、化合物技術を活かした商品・ソリューション展開を図るなど、事業構造転換を含む様々な施策を推進してきました」とある。この通りにファブレス部門がソリューションビジネスへ転換を進めるなら、期待は持てる。

ただし、ファウンドリビジネスでは、設計工程を100%理解できるFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)が不可欠であり、ファブレスメーカーやシステムメーカーのエンジニアとのインターフェースに努めなければならない。もちろん、設計ツールを揃えることは言うまでもない。日本市場には、半導体の設計法は知らないが半導体を作りたい企業が多いはず。特にSoCやシステムLSIは電子システム(セット)のキモとなるからだ。

TowerJazzにとっては、これまで手付かずだった微細化プロセスにもポートフォリオを広げられるようになり、アナログやRFなどに特化する場合でも、やはり微細なプロセスで他社に差を付けることができる。TSMCとは異なる道を行くTowerJazzと組むことができたパナソニック半導体の今後は楽しみだ。

(2013/12/24)

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