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日本への投資額がピーク時の7割に減少、グローバル化遠ざかる

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外国企業が日本に法人を設立して工場やオフィスなどの拠点を設けるといった直接投資額が減少している、と8月18日の日本経済新聞が報じた。今年上期(1〜6月)での実績は1兆3903億円にとどまり、2008年上期のピーク時には4.7兆円もあったことに比べ7割減少した。

外国企業から見て日本は魅力がなくなっている。日本に工場を設置しても税制優遇措置は何もない。電力コストは世界一高い。保険を含めた人件費も高い。外国企業にとって、日本で稼いで税金を日本に納めるという構造にはなっていない。安倍政権は、経済特区を設ける方針を発表したが、これまでとは違う、特区後の全国展開を進める方向にぜひ持って行っていただきたい。利権に守られた構造から、企業が自由に参入できる構造へと変えていただきたい。これによって日本は活性化できるからだ。

今年上期の投資レベルは、2000年ITバブル後の10年前の低迷期とほぼ同様。この様子は安倍政権が打ち出した成長戦略がまだ実を結ぶまでに至っていない現状をよく表している。とはいえ、政権発足後最初に打ち出した金融緩和策によって、日本株式が多く買われている。上期の外国企業による日本株買越額は前年同期の16倍にあたる9兆3600億円になった。つまり、金融政策は即効で株高・円安を導き出したことによって、産業的には今有利な状況になった。成長戦略が実を結ぶことを期待したい。

直接投資額が最も多い国は英国だ。GDP比で毎年30〜40%という金額の投資が行われており、国を豊かに導いてきた。日本はGDPが450兆円程度であるから、ピーク時の4.7兆円としても1%程度しかない。英国には英国投資庁(UKTI: UK Trade & Investment)という省庁がある。この組織は、外国企業が英国に投資する場合や、その逆に英国企業が外国に進出する場合のサポートを行う。日本にも駐日英国大使館内にUKTIの組織があり、日本企業の英国進出、あるいは英国企業の日本進出を支援している。いわば国を挙げて企業のグローバル化をサポートしている。

やはりグローバル化は国を成長させるうえで今や欠かせない要素となっている。19日の日経によると、三菱自動車はPHV(プラグインハイブリッド車)アウトランダーPHEVの生産を再開、受注残の多い欧州と日本に集中していく。プラグインハイブリッド車は、電池を主、ガソリンエンジンを従としたクルマ。バッテリの充電もガソリンの給油も可能になっている。三菱は、世界全体で1万8000台の受注残を抱えているとしている。

企業の一部門を外国企業に売却するという話もグローバル化していることかもしれない。富士通は、RFトランシーバIC部門を米国のインテルに売却した。富士通セミコンダクターの米国アリゾナ州の開発拠点でRFトランシーバICを開発していたという。RFトランシーバは携帯電話やスマートフォンだけではなく、これからの成長産業であるM2MやIoT(Internet of Things)、ワイヤレスセンサネットワークなど無線ネットワークの中核技術。ただし、これを手放すことで富士通はハードウエア技術をどんどん捨てていく。16日の日刊工業新聞によると、携帯電話部門ではパワーマネジメントとベースバンドプロセッサを残すとあるが、パワーマネジメントICはアナログ、ベースバンドはSoCであり、アナログはスパンションに売却、SoCはパナソニックと事業統合予定であり、富士通はいったいどこに行くのだろうか。

半導体技術は、成長産業の中核にいることは間違いない。トヨタの子会社であるトヨタテクニカルディベロップメントと、アドバンテスト、大日本印刷などで作る「パワーデバイス・イネーブリング協会」は半導体技術者を養成するための資格試験を2014年に始めると14日の日経産業新聞が報じた。半導体の構造や、メモリなどのデバイスごとの特徴や検査法などを初級レベルで出題するという。半導体ユーザーには、半導体を学ぶことがこれからの成長に欠かせない、との認識がある。トヨタは半導体ユーザーであることは言うまでもない。アドバンテストは半導体メーカーにテスターを納めるサプライヤであるが、テスターを設計製造するのに半導体チップを大量に購入している半導体ユーザーでもある。大日本印刷も同様で、マスクやリードフレームなどを製造していると同時にICT製品を扱う半導体ユーザーでもある。

(2013/08/19)

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