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サムスン、3次元縦構造NANDフラッシュの量産開始を発表

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8月6日の日本経済新聞は、1面トップに「東芝、サンディスクと半導体新工場、4000億円投資、最新メモリーで巻き返し」という見出しの記事を掲載、半導体業界を驚かせた。ただ、直後の7日に開催された東芝の経営方針説明会では、このことに関して田中久雄社長は一切話をせず質問も出なかった。

どうやら、一つの工場建設に今年4000億円という訳ではないらしい。何年かかけてトータルで4000億円、サンディスクと折半、ということかもしれない。6日に東芝はすぐ、「本日、当社の半導体新工場建設に関する一部報道がありましたが、当社から発表したものではありません」というコメントを発表している。東芝、サンディスク共、四日市工場の第5製造棟の第2期分の工事に関しては、2014年夏の竣工をめざし、8月から工場を建設していく旨を7月2日のプレスリリースに発表している。

東芝のプレスリリース(参考資料1)によると、NANDフラッシュの次世代プロセス品や3次元構造品の生産スペースを確保するため、第5製造棟の第2期分として建設を決めた。1期分は2011年7月からすでに稼働している。今回の2期分は、スマートフォンやタブレット、エンタープライズサーバ向けSSDなどを中心に需要が増加傾向にあること、中長期的にも市場拡大が見込まれることから、決定したとしている。

同じ6日には、韓国のサムスンが3次元の縦構造のNANDフラッシュを量産開始したと発表した。7日に日経もこれを報じたが、サムスンが発表したプレスリリース(参考資料2)とほぼ同じ内容だ。メモリ容量は128Gビットで、そのセルには従来のフローティングゲートに代わり、MNOS構造のCTF(Charge Trap Flash)技術を使っている。セルを縦方向に24個重ねる方式で、深いトレンチによってチップ表面から24段目のセルまで接続する。今回のチップのデザインノードは28nm以上の寸法のようだ。20nmノードのプレーナ型のNANDと比べ、容量を2倍にできるとしている。将来は1Tビットを目指す。

東芝が開催した経営方針説明会にも簡単に触れておこう。これは、中期計画の説明会であり、田中社長は2015年度に7兆円の売り上げを目指すとしている。今年の3月に終了した12年度では、5兆8003億円に低下しており、これを底としてV字回復を目標にしている。ただし、これまでのピークだった2007年度の7兆4043億円にはまだ到達しない。売上アップのカギを握る戦略が海外売り上げの増加。現在55%の海外売上比率を15年度までに65%まで高めると述べた。また、事業の柱として、エネルギーなどのインフラ、半導体を主力とする電子部品、そして医療を加えた。

ここ直近の経済状況は良い方向に向かっている。日経新聞社は2013年度の研究開発活動の調査を行った結果を8日の日経紙面で発表している。これによると、研究開発費は12年度と比べ、主要261社全体で5.4%増の11兆3800億円になった。その内、24%に当たる63社が2桁伸ばす計画だという。研究開発費のトップはトヨタ自動車の9000億円で、前年比11.4%増になる。2位のホンダは12.4%増の6300億円となり、自動車メーカーの研究開発投資が大きい。電機・ITでは、日立製作所が6.3%増の3630億円、東芝は12.7%増の3450億円と増やした一方で、家電のパナソニックは2.4%減の4900億円、ソニーは2.8%減の4600億円となった。投資する研究テーマは省エネ技術、新エネルギー技術が多いという。

半導体関係企業の2013年度第1四半期(4〜6月)の決算報告が先週も続いていた。後工程のテープフィルムを製造するリンテックが純利益39%増の23億円、検査に使うプローバの東京精密は営業利益が37%増の25億円前後だとしている。

参考資料
1. 四日市工場 第5製造棟の第2期分の建設について (2013/07/02)
2. Samsung Starts Mass Producing Industry's First 3D Vertical NAND Flash (2013/08/06)

(2013/08/12)

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