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インドに外資系企業の進出ラッシュ、東南アジアでのビジネスも加速

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グローバル化は極めて速い速度で進展している。1週間の新聞では、インドの人材確保が過熱、中国工場の撤退の難しさ、中国内半導体産業の遅れ、IBMのグローバルマインド、日本人IT起業家のアジア拠点化、アピックヤマダのウェーハレベルパッケージング(WLP)装置のアジア売り込み、タツタ電線のマレーシア工場開設、など世界のニュースが目立った。

最近、インドに外資系企業が押し寄せている。サムスン電子がインドの新卒に1500万円の年俸を提示するというニュースが7月9日の日本経済新聞に掲載された。優秀な人材を輩出してきたインド工科大学に、グーグル、マイクロソフト、フェイスブックなど世界的な企業が優秀な学生を求め日参しているという。IBMやアクセンチュアは全世界の社員の3割に当たる人員をインドに配置しており、自動車のボッシュも1万人を超す要員をインドに抱えている。GEではバンガロールに4000人超が働いており、低価格心電計を開発製品化している。シスコシステムはインドを第2の本社と呼ぶという。日本企業では東芝がR&D部門を設立、ソニーもインドを活用してIT技術のガラパゴス化を防ぐとしている。

中国は、2000年ごろから半導体事業の国産化に力を入れてきたが、国産化比率は12年時点でまだ36.1%だ、と10日の日経産業新聞は伝えた。この数字には外資による中国生産を含み、生産額でのトップメーカーは、韓国SKハイニックスの中国子会社、2位は大連市にあるインテルの子会社、第3位が中国のファウンドリSMICだという。4位以下はSMICの1/3以下の金額と小さい。ファウンドリの生産額を半導体の生産額として含めない統計があるため(ダブルカウントになることを避けるため)、実際の国産化比率は12年時点で17.5%という計算もある。

チャイナリスクに関して、現地に進出した企業が撤退する時の難しさについて、16日の日経が伝えている。この問題には許認可を握る地方政府と、ストライキを起こす従業員という二つがからむ。地方政府は雇用や税収確保のため、企業の拠点縮小や撤退には否定的だ。2009年2月にパナソニックでは北京の電子部品工場で人員削減を巡り労使が対立、同年5月北京のブラウン管工場で生産縮小を巡りストライキ、2011年12月には日立製作所で米社に売却予定の深圳の工場で雇用不安からストライキ、12年1月スズキ自動車では景徳鎮の合弁工場でストライキ、など事業縮小のもめごとが多発していた。日本の都合で事を急ぎ従業員とのコミュニケーションを省略すると必ず失敗する、と上海の弁護士事務所にいる中国人パートナーはアドバイスする。中国は共産主義国家であることを忘れてはならない。設立・撤退はすべて政府の意向で決まる。これもチャイナリスクである。

11日の日刊工業新聞は、IBMの電機・電子業界担当統括者のポール・ブローディ氏とのインタビュー記事を載せ、20年前の米国のエレクトロニクス産業が今の日本の状況と似ていると示唆した。米国は家電から撤退し、デジタル化へ進んだ。今の日本は、IoT(Internet of Things)のような得意分野に特化すべきだとアドバイスしている。同氏は、製造業に革命を起こす技術として、3Dプリンタとロボティクス、オープンソースエレクトロニクスの三つを上げ、このうち3Dプリンタは標準化が意味をなさなくなるとした。日本企業はモノづくりを熟知しておりロボティクスにも強い。製造新時代で日本企業は主導権を握れるはずだ、と激励する。

11日の日経産業は、スマートフォン向けのアプリ開発会社シナモンの日本人女性CEOがシンガポールに本社を設立、ベトナムに開発拠点を置くことを決め、猛スピードで企業を立ち上げている様子を伝えた。2006年、在学中に国からの助成金でITベンチャーを起業、成功後、大手SNSのミクシィへ売却、その資金を元に新たなITベンチャーを次の成長市場である東南アジアの中心シンガポールに設立したという訳だ。

アピックヤマダのWLP装置は300mm対応でありながら、正方形のウェーハで樹脂封止する機械だと12日の日経地方版は伝えている。液状樹脂を流し込むとしているため、トランスファモールドではなくコンプレッションモールド技術(参考資料1)であろうと想像される。台湾や韓国へ売り込むとしている。

タツタ電線は銅のボンディングワイヤーの生産工場をマレーシアに設立した、と9日の日経産業が報じた。マレーシアやシンガポール、台湾ではボンディングワイヤーは金から銅へ移行しており銅が主流になりつつある。国内工場と合わせ銅ワイヤーの生産量は現在の2〜3倍に増えるという。

参考資料
1. 弱いLow-k材料や細い金ワイヤーを守る低応力の新モールド技術 (2008/07/14)

(2013/07/16)

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