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アベノミクスの成長戦略、半導体産業の敵か味方か

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アベノミクス第3本目の矢に相当する、成長戦略の概要が安倍首相から発表された。2012年度の年間63兆円の設備投資額に対して、今後3年の間に70兆円を目指すことが含まれた。他に、今週、「人とくるまのテクノロジー展」が開かれることでカーエレ技術の半導体の発表が富士通、東芝からあった。半導体材料メーカーも相次いで成長戦略を発表した。

金融緩和、財政出動に続く第3の矢となる、成長戦略が発表された。設備投資は重点の一つで、リースの活用を勧める。設備が値下がりした場合のリース会社の損失を補てんすると18日付けの日本経済新聞で述べている。半導体製造は、設備投資がカギを握る産業となっており、微細化プロセスラインでは1000億単位の設備投資が求められるため、投資への政府のインセンティブは極めて重要である。リース対象の設備には、露光装置が含まれていると20日の日刊工業新聞は述べている。

ただし、リースの活用はこれまでも半導体製造で進められてきたが、「リースは高くつく」という現場の声をよく聞く。設備投資に関する税制優遇策については全く触れられておらず、今後何らかのアナウンスがあると期待されるところだろう。同様に、経済特区に対する積極的な支援策はまだ具体化されていない。

富士通セミコンダクターと東芝からユニークなアイデアのカーエレクトロニクス商品が出てきそうだ。富士通セミコンは17日のセミコンポータルでレポートしたように(参考資料1)、日産自動車の「アラウンドビューモニター機能」(クルマの真上という1点から見た映像)を超えて、クルマの外から360度の視点でクルマの走行状態をモニターできる画像合成技術ICチップを開発した。この技術は、クルマから死角を取り除くという考えで進められており、ドライバーから見えない幼児を知らずにひいてしまうという痛ましい事故を防ぐことができるようになる。

18日の日経は、東芝が道路状況を正確に識別するSoCを開発すると報じた。交差点の信号の色や道路上の縁石や落下物などを識別できるようにする。従来、白線認識やクルマの認識などの画像認識SoCはあったが、この認識機能をさらに正確に高める。特に、雨や雪の日など天候の悪い状態での認識率は低下するため、新しい認識チップが求められるという訳だ。東芝は2014年秋にサンプル出荷、15年以降の量産化を目指す。

半導体パッケージ材料メーカーの住友ベークライトは、ボリュームゾーンとなる製品の生産地である中国において、材料調達や営業の現地化を進め、シェア50%を目指す、と15日の日刊工業が報じた。パッケージに使う半導体用エポキシ封止材は、エポキシだけではなくシリコンとの熱膨張係数を合わせるためのガラス材料をはじめ多くの充填剤を混ぜ合わせる。このため住ベなどはコンパウンド(混合)メーカーとも呼ばれる。封止材だけではなく、コーティング用感光材や接着剤などもボリュームゾンの製品に拡大するとしている。

半導体レジストに強い東京応化工業は、次世代ArFレジストの開発を加速し、2016年に本格量産に持ち込む。これにより世界シェア3割超を目指すと、15日の日経産業新聞が報じた。これは東京応化の中期計画で発表されたもの。売上額を2013年3月期比で1.3倍の990億円、営業利益は同1.9倍の150億円を目指すとする。

最後に、産業のけん引役となるスマートフォンの生産工場の地図が塗り替わるかもしれない。スマホの生産数量で世界トップのサムスン電子が、ベトナム北部にあるバクニン省イエンフォン工業団地にある現地法人であるサムスン電子ベトナム社の携帯・スマホ工場の生産台数を倍増させる、と14日の日経が伝えた。2012年生産数量の2倍に当たる2億4000万台を2013年に生産する。スマホ生産第1位は現在、中国であるが、サムスンベトナムの生産数量は今年の世界規模を9億1800万台とIDCが見積もっていることから2割強に相当する。また、ベトナムにはノキアも工場建設を開始したという。

参考資料
1. 富士通セミコン、360度の視点で映像を合成SoC、クルマ用途狙う (2013/05/17)

(2013/05/20)

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