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サムスンvs台湾の競争、シャープ救済、450mmファウンドリでも表面化

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ウィークエンドの14日、「サムスンにおびえる台湾勢−半導体・液晶業界窮地に」と題する記事が日本経済新聞で紹介され、シャープを巡る出資はサムスンvs 鴻海精密という図式が見えてきた。先週は日刊工業新聞から欧州における450mmウェーハの動きが紹介され、東京エレクトロン会長の東哲郎氏の社長復帰も発表された。

サムスンvs台湾勢の記事は、台湾の主要週刊誌「今周刊」に掲載された記事を紹介したものだが、サムスンが2006〜2007年ごろ台湾に幹部を多数派遣してIT産業を徹底的に研究し、「滅亡計画」を立てたのだとしている。こういったセンセーショナルな書き方はジャーナリズムの世界ではどこでも行われており、珍しくはない。ただし、この日経の取り上げ方はどこまで今周刊の記事でどこまで日経の記事なのか、よくわからない面がある。

サムスンは筆者が1990年に韓国取材を始めた時から、台湾メーカーに対して敵対心をむき出しにしていた。当時は、台湾のプリント回路基板が安すぎると不満を述べていた。パソコンでは台湾勢に出し抜かれたこともあり、サムスンはテレビや携帯電話で巻き返しの機会を狙っていた。今、スマートフォンでは圧倒的に強い企業に躍り出た。

シャープは、財務状況が悪化し、鴻海と交渉を始めたものの、株価が大きく値下がりしたため交渉が暗礁に乗り上げてしまった。この様子を見たサムスンは、絶好のチャンスとばかりにシャープとの出資交渉に臨み、104億円をポンと出した。ところが、鴻海は670億円を出す用意があり、サムスンはその1/6しか出さない。さらにサムスンは1株=290円という市場よりも安い価格で買いながら、鴻海に対しては値下がりする前の1株=550円という線を譲らない。そして、14日の日経によると、「サムスンはシャープとの出資契約で『鴻海からの出資条件は見直さない』という文言を盛り込ませた」という。シャープはなぜここまでサムスンの言いなりになったのか全く理解できない。どう考えてもサムスンとの交渉は完全敗北とも言えるくらい圧倒的に不利な条件である。サムスンがシャープの技術を要求しないことをシャープが評価したという声を聞くが、これでは将来の財務基盤が心もとない。

サムスンの破竹の勢いは止まらない。スマートフォンで世界一になった勢いをそのままに、半導体ではメモリビジネスからファウンドリビジネスへと急速に舵を切っている。ところがファウンドリビジネスではアップルからのアプリケーションプロセッサの注文を打ち切られるかもしれないというリスキーな状況の中で(世界の半導体業界関係者はアップルがTSMCかインテルに移すことは確実と見ている)、ファウンドリへの投資を続けている。しかも2年前にはTSMCから技術者をごっそり引き抜いたと言われている。一方で、シリコンバレーでは、サムスンはスマホビジネスにもう疲弊しているという声も聞かれる。サムスンの背後を中国の華為技術とZTEがひたひたと追いかけてきているからだ。

そのような中、3月15日の日経1面において、450mmウェーハに対する日本のニコンと東京エレクトロンなど装置メーカーの動きが報じられたかと思うと、先週は日刊工業から欧州における450mmプロジェクトの話が掲載された。ここではIMECやASML、LETIなどが協力してプロジェクトを始めるが、米国のプロジェクトとも連携すると述べられている。ただし、予算規模はわずか124万ユーロ(1億6000万円)と小さい。

いずれも米国で主導しているG450Cプロジェクトの話にはほとんど触れられていない。450mmプロジェクトを推進する半導体メーカーはインテルとサムスン、TSMCの3社しかいない。このプロジェクトでもサムスンと台湾のTSMCがライバルとなっていく。サムスンがファウンドリビジネスへ急速にシフトしているからだ。さらにインテルもファウンドリビジネスに加わる。文字通り、三つ巴のファウンドリの戦いが始まる。

今後はグローバルファウンドリーズが450mmチームに加わる可能性はある。一方、製造装置側では、インテルやTSMCに装置を納めている日立国際電気や日立ハイテクノロジーズなどが積極的に450mmウェーハを推進しているが、東京エレクトロンは今一歩積極的ではないと業界関係者は言う。ところが、記事には東京エレクトロンという名が頻繁に出てきている。

折しも、東京エレクトロンの東会長が社長も兼務するという人事が発表された。450mmプロジェクトに関する2紙の記事と今回の人事とが一つの線でつながっているかどうか、今のところ、明確な線はまだ見えていない。

(2013/04/15)

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