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日本電子電機のスマホ苦戦状況が半導体にも影響

先週は日本にとってのグッドニュースは少なかった。4月3日に米SIA(半導体工業会)が発表した2月の世界半導体売上額は、前年同月比1.4%増の232億5000万ドルとプラス成長したが、日本の売上額が15.7%マイナスの28億5000万ドルと大きく減少した。他に、アップルが中国における対応に苦慮した報道もあった。

SIAによると、日本以外ではアジア太平洋地域が6.7%増の132億5000万ドル、米国は1.6%増の44億8000万ドル、欧州が1.5%減の26億8000万ドル、という結果だった。日本の一人沈みが顕著になっている。もし世界の半導体販売額から日本の分を除くと仮定すると、世界は4.3%増となり、日本がむしろ世界の足を引っ張っている格好となっている。半導体市場として成長分野であるはずのスマートフォンが国内でしか販売されていないことが影響していると思われる。

4月4日の日本経済新聞によると、日本の電子電機産業の貿易黒字が2012年はわずか5500億円弱となった。これはピークだった1991年の9兆2000億円から8兆6000億円も減り1/16以下にすぎない。日経によれば、黒字急減の理由はスマホの輸入拡大だという。12年における携帯電話機の輸入額は1兆1192億円に達する一方で輸出額はわずか24億円だった。iPhoneを生産する中国からの輸入額が全体の8割を占め11年比で57%増加し、サムスンのGallaxy S3の輸入台数は累計で100万台を超えたとしている。その一方で、日本企業の携帯電話の半数近くがアジアで生産されていることからも輸入額が増加した。

サムスンの1〜3月期の連結業績予測は、売上額が15%増の52兆ウォン、営業利益が8兆7000億ウォンを好調だった(1ウォンは0.85円)。部門別の数字は明らかにしていないが、スマホがけん引役だと日経は見ている。

スマホが電子電機産業を当分けん引することは間違いない。パナソニックは、スマホの電源周りに使うキャパシタを増産し、2015年に2011年比1.5倍の1000億円を目指す、と4月2日の日経が伝えた。電解液を使わないポリマーを電解物質にするという特長があると新聞では述べられているが、これはおそらく固体電解質として導電性ポリマーを利用したコンデンサOS-CONのことだろう。佐賀三洋工業で量産すると新聞が報じているが、かつてこの工場でOS-CONを生産している様子を見学したことがあり、OS-CONに間違いないだろう。

スマホの将来性に関して、視線で入力操作するというUI(ユーザインタフェース)技術も開発されている。NTTドコモは赤外線LEDとセンサを利用して目の動きを捉えるUI技術を開発したと、4日の日経産業新聞が報じた。指とほぼ同じ動作ができるとしている。サムスンも同様の技術を使いながら、今月下旬に発売するGallaxy S4に搭載するという。サムスンの方が実用化は早い。

また、中国では外国企業に対して「反外国企業キャンペーン」を張ることが日常的に行われているが、最近ではアップルがやり玉に挙げられた(3日の日経)。これは、iPhoneの製品保証に関して、米国や日本では不具合があれば販売店で新品と交換してくれるが、中国では部品交換だけであり、差別されている、というもの。iPhone 5の価格は中国では5288元と米国価格の約1.3倍と高い。これも批判された。これに対して、アップルのティム・クックCEOが謝罪声明を発表した。これまでもグーグルやフォルクスワーゲン、ヒューレット・パッカードなどがメディアによるキャンペーンで批判にさらされたことがある。

6日の日経は、アップルが電子書籍アプリ「経典書城」を削除すると発表したと報じている。著者がチベット問題の専門家であり、中国政府に遠慮した措置ではないかとみられている。

中国は政治的には統制されているが、経済的には開放策をとっており、複雑な要素が多い。先週のニュースでは他に、京セラがセラミックパッケージを設計する「中国デザインセンター」を上海に開設した、と日刊工業新聞が3日報じた。また、中国企業のTCLやZTEが高価格ブランド品のテレビやスマホを発売したと2日の日経産業が伝えた。従来の製品よりも3割高い液晶テレビや、現地では高価な4万5000円のスマホを売り出した。TCLの液晶テレビは厚さ12.5mmと薄く、LEDバックライトを利用する。ZTEのスマホは5インチの大型画面でクアッドコアCPUを使っているとしている。中国市場は低価格な製品だけではない。

(2013/04/08)
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