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台湾ProMOSの300mmライン製造装置をGlobalFoundriesが買収

先週、台湾DRAMメーカーで経営再建中の茂徳科技(ProMOS)社が300mmウェーハ半導体工場の内部設備をグローバルファウンドリーズ(GlobalFoundries)に売却した、という小さな記事が3月29日の日本経済新聞に掲載された。こういった国際的な買収に関するニュースは交渉成立するまでは決して表には出ないようにするものだ。

これまでの日本のメディアは買収・合併などの交渉事を特ダネとして扱い、メディア同士で競ってきた。これは交渉の舞台にいる誰かがリークして報じられるものが多い。国内企業同士ならいざ知らず、国をまたがる国際間でのM&Aでは当事者は決して情報を漏らしてはならない。企業のみならず、国そのものさえ信用できないと見なされてしまうからだ。1年前に同じ台湾のTSMCが茂徳を買うのではないかという憶測記事が台湾内ではあったが、立ち消えになっていた。

今回のニュースは、台湾でも報じられている。台中にある茂徳の300mmウェーハプロセス工場に設置されている製造装置1000台以上をグローバルファウンドリーズに売却するというもの。工場そのものを売るのではなく、装置を売ると伝えられている。茂徳は当初、工場そのものの売却を提案したが、価格面で交渉が成立せず、工場のアセットである装置を手始めに個別に売却することを決めたとしている。売却金は債務の弁済に充てる。茂徳は今後、ファブレスとしてやっていくと見られている。

国内では、ルネサスと、富士通セミコンダクターがそれぞれ希望退職者を募ることを28日に発表した。ルネサスは関連会社も含め40歳以上の総合職などを対象に3千数百名を8月までに募集する。9月30日が退職日とする。

富士通セミコンダクターは、国内外のグループに所属する従業員を対象に4月17日〜26日の10日間に渡って募集する。募集人員は国内1600名、海外400名。国内の退職日は6月30日とする。富士通は、ドイツのシーメンスとの合弁で設立した富士通テクノロジーソリューションズ(FTS)も1500名を対象に人員を整理する。加えて、富士通本体でも役員・管理職の報酬を減額し、50歳以上の管理職を対象に早期退職優遇制度を設ける。募集する管理職は300名程度、4月22日〜5月17日間募集し、6月30日を退職日とする。

アップルがパソコン生産の一部を中国から米国内に移したように、生産を国内に回帰させる動きは日本でもある。OKIは「ホームゲートウェイ」に使っているプリント回路基板を中国から、埼玉県の本庄工場に移転する、と29日の日刊工業新聞が報じた。部品調達から基板生産、装置組み立て、出荷まで国内で完結しコスト削減を図っていくという。内製化に向けて基板設計を見直し、部品点数を減らしながら、組立工程の効率を上げることで、中国からの輸送コストはかからないため30%コスト削減したという。リードタイムは3日から1日に短縮する。日本向けに小・中量生産なら国内生産の方がコストは下がる可能性があるとしている。

三菱自動車が電気自動車「i-MiEV」とプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」に使われるリチウムイオン2次電池が発火あるいは溶損したと発表した。「i-MiEV」の検査工程でバッテリパックが過熱、その1時間後に発火したものだとしている。

自動車に使われるリチウムイオン電池は、セルを80〜90個直列に接続して、330V程度まで昇圧する。セルを1個ずつ充電制御するための半導体ICをリニアテクノロジーやマキシムインテグレーテッド、デンソーなどが開発、製品化しているが、これまではセルごとのバラツキに対して満充電になったセルがあると充電を止めていた。充電が最も進んでいないセルが仮に70%程度充電されていれば70%を基準に、それ以上の電荷を捨てて、70%に揃えることで、バッテリのバラつきを整えていた。満充電を判断するのはセンサで温度を検出することが多かった。しかし、放電時での温度管理は精密になされていないか、不十分だったのではないだろうか。だとすれば半導体ICで動作時(放電も充電も)に十分な温度制御をすれば、こういった事故は防げるはずだ。

ボーイング社の787ドリームライナー機体でのバッテリ事故の場合でも、温度管理と制御を十分しながら動作を続けられるような技術を開発し、それを半導体回路で実現すれば、対策の一つになりうる。セルを1個ずつ制御する回路やアルゴリズムが不可欠になる。ここにも半導体ICのビジネスチャンスがある。

(2013/04/01)
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